13 / 39
13
しおりを挟む
ライラックさんは王族の事情に詳しいみたいです。王都に住んでいたということですが、名のある貴族なのでしょうか。
「ライラックさんは王都にいる時はどんな仕事をしていたんですか?」
「そいつは王都で一番の技術を持っていた薬師だ」
他のところから声がしました。サージェント様が戻ってきたようです。後ろから眼鏡をかけた青年がついて来ていて、その人の声だったようです。
「それなのにアイリスさんを亡くして王都から姿を消してしまったんだ。昼間にハイペリカム侯爵様からライラックを見かけたと聞いて半信半疑だったけど、本当にこんな村にいたとはね」
「昔の話だ。もうやめてくれ」
ライラックさんは心底嫌そうにしています。青年はやれやれという仕草をしながら苦笑いしています。
「僕は王国鑑定師のカラード・フレグラント。柄にもなく狩猟なんかに連れ出されたら、いきなりこんなことになるなんてね。ルピナス様が無事で本当に良かったよ」
カラードさんは飄々とした人でした。本当に信用できるのでしょうか。
「全く無事ではなかったのだがな。私の治療薬では手が付けられない重傷だった」
「フレグラント子爵、この娘の指輪を鑑定して欲しい。この指輪がライラックの特級ポーションすら凌ぐ治癒魔法を発動したのだ」
「それは眉唾ものだね。それで指輪が消失していないんだから、とても信じられないけど」
そう言いながらカラードさんは私の手を取ろうとします。流石に驚いたので、私は手を引っ込めてしまいました。
「失礼、指輪を外さなくて良いようにそのまま鑑定しようと思ったのだけど」
「フリージア、君は平民として生きるのはやはり難しいのではないか」
「も、申し訳ありません」
過剰反応に見えたのでしょうか、ライラックさんに呆れたような声で言われました。でも私も年頃ですし、平民でもこのくらいの反応は許されると思うのですけど。
そう思いながら私がカラードさんに手を差し出すと、ルピナス様が吹き出していました。
「フリージア、不満が顔に出ているよ。君は面白い子だね」
「すぐ終わるから我慢してね」
カラードさんが私の手を取り、もう片方の手を指輪にかざしました。さっきまでと違って真剣な顔で指輪を見ています。次第におでこが当たりそうなほど顔を近づけて見たり、「うーむ」と唸りながら私の手首を掴んで手を表にしたり裏にしたりし始めました。
「ちょっと痛いです……」
「本当に殿下は重傷だったのですか?」
疑うような声でそう言いながらカラードさんは私の手を離してサージェント様の方に向きました。運び込まれた時点では服を着ていたからご存知ないようです。
「確かに手足の骨折と、腹部に強い打撲痕があり酷く内出血していた。放置していたら死ぬところだっただろう」
ライラックさんが横からそう言うと、サージェントさんも肯定するように頷きました。ルピナス様はお腹を摩りながら複雑そうな顔をしています。
「結論から言うと、この指輪は貴重なものです」
「おお、ではやはり!」
「早合点しないでください。この指輪には魔法に必要な魔力を軽減する付与効果しかありません。軽減される量が約半分と非常に効果は高いですが、この世に二つと無いほど貴重なものではありません。」
「ライラックさんは王都にいる時はどんな仕事をしていたんですか?」
「そいつは王都で一番の技術を持っていた薬師だ」
他のところから声がしました。サージェント様が戻ってきたようです。後ろから眼鏡をかけた青年がついて来ていて、その人の声だったようです。
「それなのにアイリスさんを亡くして王都から姿を消してしまったんだ。昼間にハイペリカム侯爵様からライラックを見かけたと聞いて半信半疑だったけど、本当にこんな村にいたとはね」
「昔の話だ。もうやめてくれ」
ライラックさんは心底嫌そうにしています。青年はやれやれという仕草をしながら苦笑いしています。
「僕は王国鑑定師のカラード・フレグラント。柄にもなく狩猟なんかに連れ出されたら、いきなりこんなことになるなんてね。ルピナス様が無事で本当に良かったよ」
カラードさんは飄々とした人でした。本当に信用できるのでしょうか。
「全く無事ではなかったのだがな。私の治療薬では手が付けられない重傷だった」
「フレグラント子爵、この娘の指輪を鑑定して欲しい。この指輪がライラックの特級ポーションすら凌ぐ治癒魔法を発動したのだ」
「それは眉唾ものだね。それで指輪が消失していないんだから、とても信じられないけど」
そう言いながらカラードさんは私の手を取ろうとします。流石に驚いたので、私は手を引っ込めてしまいました。
「失礼、指輪を外さなくて良いようにそのまま鑑定しようと思ったのだけど」
「フリージア、君は平民として生きるのはやはり難しいのではないか」
「も、申し訳ありません」
過剰反応に見えたのでしょうか、ライラックさんに呆れたような声で言われました。でも私も年頃ですし、平民でもこのくらいの反応は許されると思うのですけど。
そう思いながら私がカラードさんに手を差し出すと、ルピナス様が吹き出していました。
「フリージア、不満が顔に出ているよ。君は面白い子だね」
「すぐ終わるから我慢してね」
カラードさんが私の手を取り、もう片方の手を指輪にかざしました。さっきまでと違って真剣な顔で指輪を見ています。次第におでこが当たりそうなほど顔を近づけて見たり、「うーむ」と唸りながら私の手首を掴んで手を表にしたり裏にしたりし始めました。
「ちょっと痛いです……」
「本当に殿下は重傷だったのですか?」
疑うような声でそう言いながらカラードさんは私の手を離してサージェント様の方に向きました。運び込まれた時点では服を着ていたからご存知ないようです。
「確かに手足の骨折と、腹部に強い打撲痕があり酷く内出血していた。放置していたら死ぬところだっただろう」
ライラックさんが横からそう言うと、サージェントさんも肯定するように頷きました。ルピナス様はお腹を摩りながら複雑そうな顔をしています。
「結論から言うと、この指輪は貴重なものです」
「おお、ではやはり!」
「早合点しないでください。この指輪には魔法に必要な魔力を軽減する付与効果しかありません。軽減される量が約半分と非常に効果は高いですが、この世に二つと無いほど貴重なものではありません。」
13
お気に入りに追加
3,670
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。
蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。
しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。
自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。
そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。
一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。
※カクヨムさまにも掲載しています。
誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。
それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。
誰にも信じてもらえず、罵倒される。
そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。
実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。
彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。
故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。
彼はミレイナを快く受け入れてくれた。
こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。
そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。
しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。
むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。
【完結】虐げられてきた侯爵令嬢は、聖女になったら神様にだけは愛されています〜神は気まぐれとご存知ない?それは残念でした〜
葉桜鹿乃
恋愛
アナスタシアは18歳の若さで聖女として顕現した。
聖女・アナスタシアとなる前はアナスタシア・リュークス侯爵令嬢。婚約者は第三王子のヴィル・ド・ノルネイア。
王子と結婚するのだからと厳しい教育と度を超えた躾の中で育ってきた。
アナスタシアはヴィルとの婚約を「聖女になったのだから」という理由で破棄されるが、元々ヴィルはアナスタシアの妹であるヴェロニカと浮気しており、両親もそれを歓迎していた事を知る。
聖女となっても、静謐なはずの神殿で嫌がらせを受ける日々。
どこにいても嫌われる、と思いながら、聖女の責務は重い。逃げ出そうとしても王侯貴族にほとんど監禁される形で、祈りの塔に閉じ込められて神に祈りを捧げ続け……そしたら神が顕現してきた?!
虐げられた聖女の、神様の溺愛とえこひいきによる、国をも傾かせるざまぁからの溺愛物語。
※HOT1位ありがとうございます!(12/4)
※恋愛1位ありがとうございます!(12/5)
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも別名義にて連載開始しました。改稿版として内容に加筆修正しています。
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
聖女の取り巻きな婚約者を放置していたら結婚後に溺愛されました。
しぎ
恋愛
※題名変更しました
旧『おっとり令嬢と浮気令息』
3/2 番外(聖女目線)更新予定
ミア・シュヴェストカは貧乏な子爵家の一人娘である。領地のために金持ちの商人の後妻に入ることになっていたが、突然湧いた婚約話により、侯爵家の嫡男の婚約者になることに。戸惑ったミアだったがすぐに事情を知ることになる。彼は聖女を愛する取り巻きの一人だったのだ。仲睦まじい夫婦になることを諦め白い結婚を目指して学園生活を満喫したミア。学園卒業後、結婚した途端何故か婚約者がミアを溺愛し始めて…!
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!
林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。
マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。
そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。
そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。
どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。
2022.6.22 第一章完結しました。
2022.7.5 第二章完結しました。
第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。
第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。
第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる