伯爵令嬢は身の危険を感じるので家を出ます 〜伯爵家は乗っ取られそうですが、本当に私がいなくて大丈夫ですか?〜

超高校級の小説家

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そんな馬鹿な話はありません。私はマトリカリアにいる時からこの指輪に癒されてきたのです。この指輪の治癒魔法の力は本物のはずです。

「つまり、指輪の力ではなくフリージア自身が治癒魔法で私を救ってくれたということだね?」

「そんな、私は治癒魔法なんて使えません!」

ルピナス様はそう言いますが、私は治癒魔法が使えない為に家を出る羽目になりました。実際にお母様の手ほどきを受けても、お母様が得意としていたエクストラヒールはおろか、ヒールやハイヒールすら全く使えませんでした。

「だが、実際にルピナス様は治癒魔法で全快した。私とサージェント様が証人だ。指輪の効果が魔力の軽減しかないなら、君が治癒魔法を使ったのは間違いない」

「そんなことを言われても、私には全ての治癒魔法の素質が無かったんです。いったい何を使ったというのですか」

なんだか、かなり迂闊なことを言っている気がします。でも自分が治癒魔法を使ったといわれて平静ではいられません。

「それほどの重傷を治す治癒魔法となると、治癒魔法の名家マトリカリアの初代当主が使ったと言われるパーフェクトヒールしか考えられない」

「マトリカリアの当主カトレア・マトリカリア伯爵夫人は先日の魔獣討伐の折に無くなってしまったはずだ。衛生兵団長の後任がすぐに決まらず随分と揉めていたが。次の当主はマトリカリア伯爵から既に衛生兵団で聖女と名高い娘のガーベラだと聞いている」

カラードさんやサージェント様の口からマトリカリアの名前が当たり前のように出てきました。やはりガーベラはマトリカリアの跡取りとなるようです。私は思わず握った手に力が入りました。
でも、それなら私はここでただのフリージアとして気ままに生きていけるはずです。

そんなことを考えていると、ふとルピナス様と目が合いました。彼の目を見ていると私が内包している矛盾を見透かされたような後ろめたい気持ちになります。

「合点がいく話だね。パーフェクトヒールの必要魔力をフリージアが満たしていないから、魔力軽減の指輪を身につけているときだけ治癒魔法が発動していたとしたら」

「一日一回しか治癒魔法を使うことができないのはそのためか。君にも充分に心当たりがあるのではないか」

「そんな……」

つまり、私はずっと使える治癒魔法があったのに、魔力が足りなくて使えなかったということです。
お母様が私に「素晴らしい治癒魔法の素質がある」と言っていたのは慰めではなく、お母様にはわかっていたのですね。

「まさかマトリカリアでもない者から、そのような治癒魔法の使い手が現れるとは。フリージア、いったい其方は何者だ」

サージェント様の言葉が私を現実に引き戻しました。浮かれている場合ではありませんでした。
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