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#30 肉欲の疼き⑬
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「みんな、紹介するよ。俺のかあさん、矢部琴子だ」
和夫の声が響き渡ると同時に、待ちかねたようにあちこちでカーテンが開いた。
一般病棟の病室は、ベッドとベッドの間、そして中央の通路側がカーテンで区切られているだけである。
今、一斉にそのカーテンが開き、ぎらつく眼が琴子を取り囲んだのだ。
琴子の右側のベッドには、鶴のようにやせ衰えた老人が座っている。
左側は、でっぷりと太った禿頭の中年男だ。
通路を挟んで向かって右側には、陰気そうな顔つきの目つきの悪い年齢不詳の男が、左側には和夫と同じくらいの年頃の小柄な少年が座っている。そして、そのふたりに挟まれるようにして、和夫がにやにや笑っていた。
「自己紹介はいいだろう。さあ、かあさん、素敵な身体のお披露目だ。できるだけいやらしいポーズを取って、みんなの目を楽しませてあげるんだ」
「和夫…」
シーツで胸を隠し、琴子は周囲に視線をさ迷わせた。
琴子を取り巻く4人は、皆おのおののベッドの上から身を乗り出し、琴子の一挙手一動を凝視している。
どの顔にも好色そうな表情が浮かび、舐めるように琴子の肢体を見つめているのだ。
「まさか、嫌だなんて言わないよね」
揶揄するような口調で、和夫が続けた。
「一般病棟の相部屋ではさ、同室の患者さんたちと友好関係を築くことが何よりも大切なんだよ。それくらい、かあさんもわかってるだろう? 特に俺の場合、一番の新参者なんだから、あいさつ代わりにみんなの喜ぶことをしてあげないと」
「で、でも…」
興奮で目がくらみそうだった。
が、いくらなんでも、あっさりうなずくわけにはいかなかった。
琴子は、仮にも高校生の息子を持つ一児の母だ。
それでは、ひどく安っぽい女と見られてしまう。
「いい躰ですなあ」
シーツを抱きしめたままの琴子に向かって、七福神の布袋様のような体躯の中年男が、眼鏡を指でずり上げ、感嘆の声を発した。
「琴子さんと言ったかね? とても、和夫君みたいな大きな子どもがいるとは思えんなあ。肌の艶といい、そのまろやかな身体のラインといい、30代前半と言っても立派に通りますよ。なあ、皆さんもそう思うでしょう?」
男の言葉に、ほかの3人が思いのほか深くうなずいた。
「ほら、安田さんもそう言ってくださってるだろ? 安田さんは、ああ見えても、小学校の元校長先生なんだぜ。今も地元で不登校の子供たちのサークルを開いてる、立派な人格者なんだ」
和夫が誇らしげに横から口を出す。
人格者が聞いてあきれる、と思いながらも、悪い気はしなかった。
シーツを抱きしめる琴子の腕の力が緩んだ。
「ポーズだけで、いいのね?」
安田を無視して、和夫に向かい、琴子は念を押した。
「きょうのところは、とりあえずね」
和夫が意味ありげな口調で答えた。
「…どういうこと?」
琴子は眉間に縦じわを寄せた。
馬鹿にしたように、和夫が鼻で笑った。
「明日以降、俺が退院するまで、かあさんにはずっとショーをお願いしなきゃならないってことさ。そのショーの中身がどこまでエスカレートするのか、今はなんとも言えないんでね」
和夫の声が響き渡ると同時に、待ちかねたようにあちこちでカーテンが開いた。
一般病棟の病室は、ベッドとベッドの間、そして中央の通路側がカーテンで区切られているだけである。
今、一斉にそのカーテンが開き、ぎらつく眼が琴子を取り囲んだのだ。
琴子の右側のベッドには、鶴のようにやせ衰えた老人が座っている。
左側は、でっぷりと太った禿頭の中年男だ。
通路を挟んで向かって右側には、陰気そうな顔つきの目つきの悪い年齢不詳の男が、左側には和夫と同じくらいの年頃の小柄な少年が座っている。そして、そのふたりに挟まれるようにして、和夫がにやにや笑っていた。
「自己紹介はいいだろう。さあ、かあさん、素敵な身体のお披露目だ。できるだけいやらしいポーズを取って、みんなの目を楽しませてあげるんだ」
「和夫…」
シーツで胸を隠し、琴子は周囲に視線をさ迷わせた。
琴子を取り巻く4人は、皆おのおののベッドの上から身を乗り出し、琴子の一挙手一動を凝視している。
どの顔にも好色そうな表情が浮かび、舐めるように琴子の肢体を見つめているのだ。
「まさか、嫌だなんて言わないよね」
揶揄するような口調で、和夫が続けた。
「一般病棟の相部屋ではさ、同室の患者さんたちと友好関係を築くことが何よりも大切なんだよ。それくらい、かあさんもわかってるだろう? 特に俺の場合、一番の新参者なんだから、あいさつ代わりにみんなの喜ぶことをしてあげないと」
「で、でも…」
興奮で目がくらみそうだった。
が、いくらなんでも、あっさりうなずくわけにはいかなかった。
琴子は、仮にも高校生の息子を持つ一児の母だ。
それでは、ひどく安っぽい女と見られてしまう。
「いい躰ですなあ」
シーツを抱きしめたままの琴子に向かって、七福神の布袋様のような体躯の中年男が、眼鏡を指でずり上げ、感嘆の声を発した。
「琴子さんと言ったかね? とても、和夫君みたいな大きな子どもがいるとは思えんなあ。肌の艶といい、そのまろやかな身体のラインといい、30代前半と言っても立派に通りますよ。なあ、皆さんもそう思うでしょう?」
男の言葉に、ほかの3人が思いのほか深くうなずいた。
「ほら、安田さんもそう言ってくださってるだろ? 安田さんは、ああ見えても、小学校の元校長先生なんだぜ。今も地元で不登校の子供たちのサークルを開いてる、立派な人格者なんだ」
和夫が誇らしげに横から口を出す。
人格者が聞いてあきれる、と思いながらも、悪い気はしなかった。
シーツを抱きしめる琴子の腕の力が緩んだ。
「ポーズだけで、いいのね?」
安田を無視して、和夫に向かい、琴子は念を押した。
「きょうのところは、とりあえずね」
和夫が意味ありげな口調で答えた。
「…どういうこと?」
琴子は眉間に縦じわを寄せた。
馬鹿にしたように、和夫が鼻で笑った。
「明日以降、俺が退院するまで、かあさんにはずっとショーをお願いしなきゃならないってことさ。そのショーの中身がどこまでエスカレートするのか、今はなんとも言えないんでね」
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