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#29 肉欲の疼き⑫
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平日だというのに、あるいは平日だからなのか、午前中の病院には賑わっていた。
待合室のソファにひしめき合う順番待ちの患者とその家族の前を、琴子はあえてカーディガンの前をはだけて歩いた。
薄い生地を押し上げる勃起乳首。
その周りを縁取る色の濃い乳輪。
そこに四方八方から好奇の目が集まってくるようで、琴子は興奮で喉が渇くのを感じている。
きのうおとといと、ここでおこなった淫らな徘徊。
それを見た者が、この中にいるかもしれないのだ。
あるいは、ゆうべ、リハビリ室で身体を触ってきたあの男たちが…。
そんなふうに想像をたくましくするだけで、股の間がぬるぬるしてくるのがわかった。
病院におよそ不似合いな琴子のスタイルを目の当たりにして、不快そうな顔をする患者も多かった。
特に女性たちはおしなべてそうで、あからさまに顔を背ける者もいるほどだった。
が、それも琴子はさほど気にならなかった。
男性患者や男性職員たちの物欲しげな視線のほうが、圧倒的多数だったからだ。
舐めるようなまなざしをタイトミニの尻と太腿に感じながら、エレベーターホールに向かう。
扉が開くと、中から下りて来た若い男が目の前に立つ琴子を見て、驚いたように目を見開いた。
わざと胸を誇示して、箱の中に乗り込んだ。
振り向いて、名残惜しそうに扉が閉まるのを見送る男。
満更でもない気分だった。
40歳の大台を目前にして最近失くしていた自信が、ここへ来ると甦る気がする。
夫には歯牙にもかけられない琴子が、ここでは人気モデルのように多くの男たちの視線を独占しているのだ。
14階まで上がり、12号室を探して通路を歩く。
すれ違う女性の看護師たちが、琴子を見て何か言いたげに眉をひそめた。
かまわず大股に歩き、病室の前に立った。
一般病棟の常で、扉は開いている。
中に入ると、正面が窓で、左右にはカーテンで仕切られた中にベッドがそれぞれ3つあるようだ。
「和夫…? かあさんよ」
小声で呼びかけると、右側の真ん中のカーテンが開いて、包帯だらけの和夫が顏をのぞかせた。
「ああ、かあさん、待ってたよ。早かったね」
「なにかほしいものはない? 一応、飲み物とか、買ってきたけど」
仕切りの中に入り、冷蔵庫に持参したペットボトル類を入れてやる。
かがんだ拍子に突き出た尻を、和夫が穴が開くほど見つめているのが感じられた。
「でも、よかったわね。こんなに早く一般病棟に移ることができて。よくなってきてる証拠じゃない?」
引き寄せたパイプ椅子に腰かけると、琴子は和夫に向かって脚を組んだ。
「まさか、本気で言ってるんじゃないよね?」
ベッドから上体を起こし、機嫌を損ねたように和夫が言った。
「確かに痛みはないさ。でも、この包帯の下がどうなってるか、かあさんは知ってるのかい?」
「そ、それは…」
琴子は返す言葉を失った。
和夫はまだ怒っている。
自分をこんな目に遭わせた母親を許してはいないのだ。
「まあ、いいさ。医者には整形手術を勧められてるけど、俺はまだしばらくこのままがいい。そのほうが、かあさんを苦しめられるからな」
「そ、そんな…」
こんなに尽くしてるのに、まだ尽くし足りないと、この子は言うのだろうか。
「わかったわ」
琴子はやるせない気分で、ため息をついた。
「それで、きょうは、どうしたらいいの…?」
「まず、服を脱いで」
包帯のスリットの中で、和夫の眼が光った。
「…」
椅子から立ち上がり、琴子は無言でカーディガンを脱いだ。
次いで脇のファスナーを下げると、足元にスカートを落とす。
真っ白なレオタードに包まれた琴子の身体を間近に見て、和夫が喉の奥で奇妙な音を立てた。
「かあさん…いいよ、それ。とっても似合ってる」
右手をシーツの下に入れているのは、また性器を弄っているからだろうか。
「これで、いい? もう、気が済んだ?」
和夫の目の前で身体を一周させて、小声で琴子は訊いた。
ここは個室ではないのだ。
他の患者に和夫との会話を聞かれるのは、さすがに恥ずかしかった。
「前のベッドが空いてる。かあさんは、そこに寝て」
正面を指さして、和夫が言った。
振り返ると、なるほどそこだけカーテンが開き、中のベッドが見えている。
「そんなことして、どうするの?」
おそるおそるたずねると、意地悪そうに口元を歪めて、和夫が言った。
「きのう言っただろう? みんなにかあさんを紹介するんだよ。かあさんが、人妻のくせにどんなにいやらしい身体をしてるかってことをさ」
待合室のソファにひしめき合う順番待ちの患者とその家族の前を、琴子はあえてカーディガンの前をはだけて歩いた。
薄い生地を押し上げる勃起乳首。
その周りを縁取る色の濃い乳輪。
そこに四方八方から好奇の目が集まってくるようで、琴子は興奮で喉が渇くのを感じている。
きのうおとといと、ここでおこなった淫らな徘徊。
それを見た者が、この中にいるかもしれないのだ。
あるいは、ゆうべ、リハビリ室で身体を触ってきたあの男たちが…。
そんなふうに想像をたくましくするだけで、股の間がぬるぬるしてくるのがわかった。
病院におよそ不似合いな琴子のスタイルを目の当たりにして、不快そうな顔をする患者も多かった。
特に女性たちはおしなべてそうで、あからさまに顔を背ける者もいるほどだった。
が、それも琴子はさほど気にならなかった。
男性患者や男性職員たちの物欲しげな視線のほうが、圧倒的多数だったからだ。
舐めるようなまなざしをタイトミニの尻と太腿に感じながら、エレベーターホールに向かう。
扉が開くと、中から下りて来た若い男が目の前に立つ琴子を見て、驚いたように目を見開いた。
わざと胸を誇示して、箱の中に乗り込んだ。
振り向いて、名残惜しそうに扉が閉まるのを見送る男。
満更でもない気分だった。
40歳の大台を目前にして最近失くしていた自信が、ここへ来ると甦る気がする。
夫には歯牙にもかけられない琴子が、ここでは人気モデルのように多くの男たちの視線を独占しているのだ。
14階まで上がり、12号室を探して通路を歩く。
すれ違う女性の看護師たちが、琴子を見て何か言いたげに眉をひそめた。
かまわず大股に歩き、病室の前に立った。
一般病棟の常で、扉は開いている。
中に入ると、正面が窓で、左右にはカーテンで仕切られた中にベッドがそれぞれ3つあるようだ。
「和夫…? かあさんよ」
小声で呼びかけると、右側の真ん中のカーテンが開いて、包帯だらけの和夫が顏をのぞかせた。
「ああ、かあさん、待ってたよ。早かったね」
「なにかほしいものはない? 一応、飲み物とか、買ってきたけど」
仕切りの中に入り、冷蔵庫に持参したペットボトル類を入れてやる。
かがんだ拍子に突き出た尻を、和夫が穴が開くほど見つめているのが感じられた。
「でも、よかったわね。こんなに早く一般病棟に移ることができて。よくなってきてる証拠じゃない?」
引き寄せたパイプ椅子に腰かけると、琴子は和夫に向かって脚を組んだ。
「まさか、本気で言ってるんじゃないよね?」
ベッドから上体を起こし、機嫌を損ねたように和夫が言った。
「確かに痛みはないさ。でも、この包帯の下がどうなってるか、かあさんは知ってるのかい?」
「そ、それは…」
琴子は返す言葉を失った。
和夫はまだ怒っている。
自分をこんな目に遭わせた母親を許してはいないのだ。
「まあ、いいさ。医者には整形手術を勧められてるけど、俺はまだしばらくこのままがいい。そのほうが、かあさんを苦しめられるからな」
「そ、そんな…」
こんなに尽くしてるのに、まだ尽くし足りないと、この子は言うのだろうか。
「わかったわ」
琴子はやるせない気分で、ため息をついた。
「それで、きょうは、どうしたらいいの…?」
「まず、服を脱いで」
包帯のスリットの中で、和夫の眼が光った。
「…」
椅子から立ち上がり、琴子は無言でカーディガンを脱いだ。
次いで脇のファスナーを下げると、足元にスカートを落とす。
真っ白なレオタードに包まれた琴子の身体を間近に見て、和夫が喉の奥で奇妙な音を立てた。
「かあさん…いいよ、それ。とっても似合ってる」
右手をシーツの下に入れているのは、また性器を弄っているからだろうか。
「これで、いい? もう、気が済んだ?」
和夫の目の前で身体を一周させて、小声で琴子は訊いた。
ここは個室ではないのだ。
他の患者に和夫との会話を聞かれるのは、さすがに恥ずかしかった。
「前のベッドが空いてる。かあさんは、そこに寝て」
正面を指さして、和夫が言った。
振り返ると、なるほどそこだけカーテンが開き、中のベッドが見えている。
「そんなことして、どうするの?」
おそるおそるたずねると、意地悪そうに口元を歪めて、和夫が言った。
「きのう言っただろう? みんなにかあさんを紹介するんだよ。かあさんが、人妻のくせにどんなにいやらしい身体をしてるかってことをさ」
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