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#377話 施餓鬼会㊵
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轟っ。
建物が揺れた。
雨戸を叩く雨音が凄まじい。
そのドラムを連打するみたいな響きをBGMに、暴風が吹き荒れる音が耳をつんざいた。
さすがに眠ってはいられず、起きることにした。
時刻は深夜1時過ぎ。
夜が更けるにつれ、風雨は烈しくなるばかりだ。
テレビをつけた。
台風情報らしく、天気図を背に、アナウンサーがしゃべっている。
が、外の音が大きすぎて、何も聞こえない。
いつの間に台風が…。
最近ニュースを見ていなかったことを思い出す。
これはうかつだった。
まさか、こんな大きな台風が近づいていただなんて…。
画面をぼんやり眺めていると、突然、蛍光灯がチカチカ瞬いた。
まずい。
腹の底が冷たくなった。
これで電線でも切れて停電になったりしたら…。
心配になって玄関へ出ると、案の定、土間に雨水が入り込んできていた。
建付けの悪い玄関の引き戸がガタガタと震え、その隙間から真黒な水がドクドクと音を立てて流れ込んでくる。
「こ、これは…」
思わずうめくと、
「大丈夫でしょうか」
後ろから声がした。
振り向くと、菜緒だった。
パジャマ代わりの、Tシャツと短パンという軽装だ。
今まで眠っていたのか、眠そうに眼をこすっている。
「いや、大丈夫とはおせじにもいえないな」
私は首を横に振った。
「床上浸水の可能性は十分にある。少しでも高いところに逃げたほうがいい」
あの勢いだと、水が部屋の床の高さまで上がってくるのに30分とかからないだろう。
それまでに、何とか避難しなければ。
「でも、この家、平屋建てですよね」
心細そうに菜緒が言う。
外で稲妻が閃き、続いて雷が鳴ると、びくっと身を震わせて私の腕にしがみついてきた。
「確か、奥の仏間から屋根裏に上がれたはずだ。子供の頃、妹とかくれんぼして遊んだことがある」
「よかった」
「こっちだ」
脱力した菜緒の手首をつかみ、廊下を奥へと急いだ。
雨戸の隙間から雨が降りこんでくるので、長い廊下もすでに水浸しである。
いくつもの部屋の前を抜け、最後の襖を開け放った時だった。
「え」
私は凍りついたように足止めた。
昏い部屋の中に、そこだけ更に闇がわだかまったように、黒い影が佇んでいる。
「だ、誰だ?」
上ずった声で尋ねたその瞬間、稲妻の閃光が雨戸の隙間から部屋の中を照らし出した。
建物が揺れた。
雨戸を叩く雨音が凄まじい。
そのドラムを連打するみたいな響きをBGMに、暴風が吹き荒れる音が耳をつんざいた。
さすがに眠ってはいられず、起きることにした。
時刻は深夜1時過ぎ。
夜が更けるにつれ、風雨は烈しくなるばかりだ。
テレビをつけた。
台風情報らしく、天気図を背に、アナウンサーがしゃべっている。
が、外の音が大きすぎて、何も聞こえない。
いつの間に台風が…。
最近ニュースを見ていなかったことを思い出す。
これはうかつだった。
まさか、こんな大きな台風が近づいていただなんて…。
画面をぼんやり眺めていると、突然、蛍光灯がチカチカ瞬いた。
まずい。
腹の底が冷たくなった。
これで電線でも切れて停電になったりしたら…。
心配になって玄関へ出ると、案の定、土間に雨水が入り込んできていた。
建付けの悪い玄関の引き戸がガタガタと震え、その隙間から真黒な水がドクドクと音を立てて流れ込んでくる。
「こ、これは…」
思わずうめくと、
「大丈夫でしょうか」
後ろから声がした。
振り向くと、菜緒だった。
パジャマ代わりの、Tシャツと短パンという軽装だ。
今まで眠っていたのか、眠そうに眼をこすっている。
「いや、大丈夫とはおせじにもいえないな」
私は首を横に振った。
「床上浸水の可能性は十分にある。少しでも高いところに逃げたほうがいい」
あの勢いだと、水が部屋の床の高さまで上がってくるのに30分とかからないだろう。
それまでに、何とか避難しなければ。
「でも、この家、平屋建てですよね」
心細そうに菜緒が言う。
外で稲妻が閃き、続いて雷が鳴ると、びくっと身を震わせて私の腕にしがみついてきた。
「確か、奥の仏間から屋根裏に上がれたはずだ。子供の頃、妹とかくれんぼして遊んだことがある」
「よかった」
「こっちだ」
脱力した菜緒の手首をつかみ、廊下を奥へと急いだ。
雨戸の隙間から雨が降りこんでくるので、長い廊下もすでに水浸しである。
いくつもの部屋の前を抜け、最後の襖を開け放った時だった。
「え」
私は凍りついたように足止めた。
昏い部屋の中に、そこだけ更に闇がわだかまったように、黒い影が佇んでいる。
「だ、誰だ?」
上ずった声で尋ねたその瞬間、稲妻の閃光が雨戸の隙間から部屋の中を照らし出した。
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