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第270話 白墨人形
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保健室の窓から下を見ると、地面に奇妙なものが見えた。
チョークで描いた人の形である。
テレビの刑事ドラマなんかによく出てくるアレにそっくりだ。
警察の鑑識が残す、ここに死体がありましたよ、というあの印である。
「なんだろう?」
つぶやくと、手鏡片手に化粧の乱れを直していた養護教諭のK子が音も立てずに立ち上がって、そばに来た。
「気がついた? 私が描いたのよ」
意味ありげに薄く笑って、僕の耳元でそうつぶやいた。
さっきまでベッドの上で僕の分身を頬張っていたその口からは、まだ青臭い残り香が色濃く薫っている。
「なんでそんなことを?」
ちょっと嫌な予感がして訊き返す。
「あなた私のこと、親にチクったでしょ」
肩越しに両腕を回しながら、不自然に優しい声でK子が言った。
「だから私、クビになるんだって。生徒をたぶらかした罪ってやつで」
「……」
「最初に誘ってきたのは、あなたのほうなのにね」
「や、やめろ」
うしろから抱きつき、体重をかけてきた。
そのせいで僕の上半身は大きく窓から乗り出してしまう。
「もうわかるよね」
K子が一瞬身をかがめたかと思うと、僕の両足を抱き上げた。
「バツとして、あなたはここから自殺するの。うまくあのマークの通りに落ちるのよ」
「よ、よせ!」
叫んだけど、無駄だった。
次の瞬間、僕は支えをなくして空中にいた。
チョークで描いた人の形である。
テレビの刑事ドラマなんかによく出てくるアレにそっくりだ。
警察の鑑識が残す、ここに死体がありましたよ、というあの印である。
「なんだろう?」
つぶやくと、手鏡片手に化粧の乱れを直していた養護教諭のK子が音も立てずに立ち上がって、そばに来た。
「気がついた? 私が描いたのよ」
意味ありげに薄く笑って、僕の耳元でそうつぶやいた。
さっきまでベッドの上で僕の分身を頬張っていたその口からは、まだ青臭い残り香が色濃く薫っている。
「なんでそんなことを?」
ちょっと嫌な予感がして訊き返す。
「あなた私のこと、親にチクったでしょ」
肩越しに両腕を回しながら、不自然に優しい声でK子が言った。
「だから私、クビになるんだって。生徒をたぶらかした罪ってやつで」
「……」
「最初に誘ってきたのは、あなたのほうなのにね」
「や、やめろ」
うしろから抱きつき、体重をかけてきた。
そのせいで僕の上半身は大きく窓から乗り出してしまう。
「もうわかるよね」
K子が一瞬身をかがめたかと思うと、僕の両足を抱き上げた。
「バツとして、あなたはここから自殺するの。うまくあのマークの通りに落ちるのよ」
「よ、よせ!」
叫んだけど、無駄だった。
次の瞬間、僕は支えをなくして空中にいた。
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