超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

文字の大きさ
136 / 625

第136話 立体駐車場の怪

しおりを挟む
「カート置いてくるから、ちょっと待っててね」
 買い物を車の後部に移し替えると、妻が言った。
 休日のショッピングモール。
 日曜日のショッピングは、結婚二年目の僕らにとって、楽しい恒例行事である。
 午後二時過ぎ。
 僕らは昼食と買い物を終え、帰るところだった。
「わかった。気をつけて」
 エンジンをかけながら、僕は言った。
 休日ということもあり、立体駐車場は混んでいて、ようやくのことで僕が駐車スペースを見つけたのは、屋上階の外れだった。
 ここは近くにカート置き場がないので、カートを返すためには一度店内入り口まで戻らなけれエバならないのだ。
 FMラジオを聴いていると、しばらくして、後部座席のほうでガチャリと音がした。
「早かったね」
 僕と車で出かける時も、そのほうが楽だからという理由で、妻は必ず後部座席に乗る。
 バックミラーに人影を確認して、僕は車を出した。
 いつもの要領で出口を示す表示に従い、屋上を半周して、階下に降りるスロープにさしかかった時である。
 ふいに助手席に置いたスマホが鳴った。
 左手で拾い上げて画面を見ると、LINEが来ていた。
 妻からだった。
『どうして待っててくれないの?』
「え?」
 僕は蒼ざめた。
「どうしてって…」
 あわててバックミラーを見る。
 黒い影が映っていた。
 長い髪の間から覗く、血走った目。
「き、君は、誰・・・?」
 やっとのことで口を動かすと、しわがれた声で、影が答えた。
「忘れたの…? やっと見つけたのに…」
「な、なんだって?」
 ぞわり。
 記憶の彼方で、嫌なものが動いた。
 何か、思い出してはいけない何かが、ゆっくりと立ち上がってくるのがわかった。
「許せない…」
 バックミラーの中で、悔しそうに赤い口が開きー。
 操られるように、足が、勝手に動いた。
 ブレーキを踏もうとした右足が、アクセルの上へと滑っていく。
「や、やめろ!」
 次の瞬間、突然車が急加速して、僕は屋上フェンスを突き破り、空中に飛び出していた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...