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第136話 立体駐車場の怪
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「カート置いてくるから、ちょっと待っててね」
買い物を車の後部に移し替えると、妻が言った。
休日のショッピングモール。
日曜日のショッピングは、結婚二年目の僕らにとって、楽しい恒例行事である。
午後二時過ぎ。
僕らは昼食と買い物を終え、帰るところだった。
「わかった。気をつけて」
エンジンをかけながら、僕は言った。
休日ということもあり、立体駐車場は混んでいて、ようやくのことで僕が駐車スペースを見つけたのは、屋上階の外れだった。
ここは近くにカート置き場がないので、カートを返すためには一度店内入り口まで戻らなけれエバならないのだ。
FMラジオを聴いていると、しばらくして、後部座席のほうでガチャリと音がした。
「早かったね」
僕と車で出かける時も、そのほうが楽だからという理由で、妻は必ず後部座席に乗る。
バックミラーに人影を確認して、僕は車を出した。
いつもの要領で出口を示す表示に従い、屋上を半周して、階下に降りるスロープにさしかかった時である。
ふいに助手席に置いたスマホが鳴った。
左手で拾い上げて画面を見ると、LINEが来ていた。
妻からだった。
『どうして待っててくれないの?』
「え?」
僕は蒼ざめた。
「どうしてって…」
あわててバックミラーを見る。
黒い影が映っていた。
長い髪の間から覗く、血走った目。
「き、君は、誰・・・?」
やっとのことで口を動かすと、しわがれた声で、影が答えた。
「忘れたの…? やっと見つけたのに…」
「な、なんだって?」
ぞわり。
記憶の彼方で、嫌なものが動いた。
何か、思い出してはいけない何かが、ゆっくりと立ち上がってくるのがわかった。
「許せない…」
バックミラーの中で、悔しそうに赤い口が開きー。
操られるように、足が、勝手に動いた。
ブレーキを踏もうとした右足が、アクセルの上へと滑っていく。
「や、やめろ!」
次の瞬間、突然車が急加速して、僕は屋上フェンスを突き破り、空中に飛び出していた。
買い物を車の後部に移し替えると、妻が言った。
休日のショッピングモール。
日曜日のショッピングは、結婚二年目の僕らにとって、楽しい恒例行事である。
午後二時過ぎ。
僕らは昼食と買い物を終え、帰るところだった。
「わかった。気をつけて」
エンジンをかけながら、僕は言った。
休日ということもあり、立体駐車場は混んでいて、ようやくのことで僕が駐車スペースを見つけたのは、屋上階の外れだった。
ここは近くにカート置き場がないので、カートを返すためには一度店内入り口まで戻らなけれエバならないのだ。
FMラジオを聴いていると、しばらくして、後部座席のほうでガチャリと音がした。
「早かったね」
僕と車で出かける時も、そのほうが楽だからという理由で、妻は必ず後部座席に乗る。
バックミラーに人影を確認して、僕は車を出した。
いつもの要領で出口を示す表示に従い、屋上を半周して、階下に降りるスロープにさしかかった時である。
ふいに助手席に置いたスマホが鳴った。
左手で拾い上げて画面を見ると、LINEが来ていた。
妻からだった。
『どうして待っててくれないの?』
「え?」
僕は蒼ざめた。
「どうしてって…」
あわててバックミラーを見る。
黒い影が映っていた。
長い髪の間から覗く、血走った目。
「き、君は、誰・・・?」
やっとのことで口を動かすと、しわがれた声で、影が答えた。
「忘れたの…? やっと見つけたのに…」
「な、なんだって?」
ぞわり。
記憶の彼方で、嫌なものが動いた。
何か、思い出してはいけない何かが、ゆっくりと立ち上がってくるのがわかった。
「許せない…」
バックミラーの中で、悔しそうに赤い口が開きー。
操られるように、足が、勝手に動いた。
ブレーキを踏もうとした右足が、アクセルの上へと滑っていく。
「や、やめろ!」
次の瞬間、突然車が急加速して、僕は屋上フェンスを突き破り、空中に飛び出していた。
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