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第135話 ループマシン

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 ホラえもんは未来から来た狸型ロボットだ。
 半年前から僕の家に居候していて、そのお礼に時々未来の発明品を貸してくれる。
 きょうもそうだった。
 腕時計みたいな装置を見せながら、信楽焼の狸の置物そっくりのホラえもんが言ったのだ。
「これはループマシン。好きな時に時間をループできるスグレモノなんだよ」
「そんなの、何の役に立つんだよ」
 僕は口を尖らせ、反論した。
「ループものって、アニメや映画でよくあるけど、悲惨な結末で終わるホラーっぽいのばっかりじゃないか」
「それはループの使い方が悪いんだよ」
 ホラえもんがぎょろ目をいやらしく光らせた。
「例えばさ、学校で階段を上る時、ふと顔を上げると、偶然前を行く好きな女の子のパンチラが見えてしまった。こんな時、君ならどう思う? ずっと見ていたい、この時間が永遠に続けばいいと、そうは思わないかい?」
「う、そ、それは…」
 恐るべき難問だった。
 僕の脳裏に、いつもミニスカートをはいてくるハルカちゃんの愛くるしい顔が、一瞬浮かんでは消えた。
 確かにホラえもんのいう通りだ。
 小学校へスマホを持っていくのは禁じられている。
 つまり、盗撮は無理だということだ。
 画像が残せないなら、その瞬間を記憶に留めるしかないのだが、どうせなら、永遠にナマで見ていたい。
「貸してよ、それ」
 内心の葛藤を気取られぬよう、僕はぶっきらぼうに右手を差し出した。
「さっそく明日、やってみる」
「じゃあ、きょうの晩御飯のおかず、僕だけマシマシね」
 にたりと相好を崩し、ホラえもんがうなずいた。

 そして翌日ー。
 朝一番から、僕は階段の下で待ち受けた。
「おはよう! おはよう!」
 みんなに明るく声をかけながら、ほどなくして、ハルカちゃんがやってきた。
 一目見て、どきりとした。
 短い。
 ハルカちゃんのきょうのスカートは、とんでもなくマイクロミニだ。
 普通に歩いているだけでも、パンティが見えそうなのだ。
 間に邪魔が入らぬよう、すぐに背後を取った。
 うほっ。
 目と鼻の先に展開される素晴らしい眺めに、鼻血が出そうになった。
 一歩、二歩。
 ハルカちゃんのあとをつ尾いて上がりながら、
 よし、今だ!
 腰をかがめるのと同時に、左手首にはめたループマシンのスイッチをオンにする。
 このマシンの使い方は簡単だ。
 ループを始めたい時と、終わらせたい時のそれぞれに、竜頭みたいなスイッチを押すだけなのだ。
 次は、スカートの中身をたっぷり堪能した後、もう一度、押せばいい。
 とー。
「ハルカ、気をつけて! 見られてるよ!」
 すぐ近くで誰かが叫んだ。
「え? やだ! きゃあっ!」
 ハルカちゃんが絶叫し、振り向きざま、僕の肩を力いっぱい押してきたから、たまらない。
 体が宙に浮き、
「わわっ!」
 手すりをつかむまでもなく、僕は頭から階段を落下していた。
 そしてー。
 ぐちゃ。
 ゴリッ。
 頭蓋骨が割れ、首が奇妙な角度に曲がる音。
 床にたたきつけられた左手首で、ループマシンがカチリと音を立てるのがわかった。
「こいつ、死んでる!」
 またさっきの声がしたかと思うと…。
 次の瞬間ー。
 すぐさま、ループが始まった。
 僕にとっての、死のループが。 

 
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