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復讐心

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四人は王宮で身の安全を保障された。

私はベルラードと今は執務室にいる。

「両親の死の原因が先程の話で解ったのか?」

「ええ。全て理解できました。何故急いだのかも‥‥。私を早く追い出したかったことも全て」

「やはり賢いな、ルリアは。我が妃は美しいだけでなく真実を見抜く目も一流だ。なぁ?」

ソファーの背もたれから体を離し振り返ってヘイルズに同意を求めるように聞いている。

「はい、そうですね。殿下をここまで惚れさせる才能も一流です」

「はははっその通りだ。うまいこと言うなヘイルズ!」

ヘイルズは呆れているけれど‥‥

ふぅ‥‥。
解ったからと言って喜んでいる場合じゃないわ。
これを何とかするにはやることが多い。
まずは叔父のリベール国王の無事を確認しなきゃ。

コンコン

「失礼致します。ベルラード殿下、スタンリー様がお見えです」

「おお!戻って来たか!通せ」
「はい、かしこまりました」

スタンリーとは、この国に来たばかりの時に会った方かしら‥‥

「失礼します」

「スタンリー、よく戻った。ご苦労だったな」

「はい。苦労しました」

はははっ、そうか。
と、ベルラードは上機嫌だ。

「ルリア様、お久しぶりでございます。
またお目にかかれて光栄です。
本日もお美しいですね」

すぐに私の元へ来て跪くと指先に口付けをする。

「おい!そうやってすぐに触れるな!王太子妃だぞ」

「本当になられるのですか?やめるなら今ですよ、ルリア様」

銀色の髪は揺れる度にキラキラと光る。

「おい、やめろ!スタンリー余計なことを言うな」

少し口角を上げ、青く澄んだ瞳で見る。
髪は皇妃の髪色と同じで神秘的だ。

「自分の意思でベルラードと共に生きることに決めました」

「そうですか‥。それはとても残念です」

「何が残念だ!相変わらず無礼な奴だな」

「私も一生お側でルリア様をお助け致します」

「⁈どうもありがとう‥‥」

「いえ、ウェルズス家の者なら当然です」

その微笑みは見惚れてしまう程に魅力的だった。

「ルリア、見るな!そいつは女たらしだぞ」

「‥‥」

「あんな男でよろしいのですか?」

思わず苦笑いしてヘイルズを見ると、二人のやり取りに慣れているのか呆れたように天井を見ている。

‥‥きっと二人はとても‥‥仲が良いのよね?



スタンリーを自分の隣に座らせたベルラードは、私にスタンリーがアルンフォルトへ行ってくれていたことを話してくれた。

「スタンリー‥私の為にごめんなさい。
アルンフォルトまで行ってくれたのね。
ありがとう」

「いいえ。お安い御用です」

「それで、叔父のリベール国王はどんな様子だったか教えてくれる?」

「はい。国王陛下は即位後すぐに体調を崩されていたそうで、私に会うことも警戒されていましたが、影が上手くメモを渡してくれたお陰で二人で会う時間を作ってくださいました」

「メモには何と書いたのだ?」

「ルリア王女は無事です、詳細をお話しさせて下さい‥スタンリーをお呼び下さいと‥。すると翌日、陛下に呼ばれ話す機会をいただけました」

「そうですか。叔父が無事であったことが何よりです」

「リベール国王も同じ事を仰っていましたよ。ルリア様が生きていてくれて良かったと」

スタンリーは叔父のリベールと話し合ったことを詳しく教えてくれた。
叔父がライナに毒を盛られ、今も体に痺れが残る体であること、王宮に仕えた者が皆、叔父が倒れている間に追いやられライナ王妃やバンホワイト家に関わる者が使用人になっていること、信用できるのは側近のダニエルだけだということも‥‥

「リベール国王は、何としてでもルリア様を守ってほしいと仰られ、国を無断で出たことはベルラード殿下との婚約の準備の為、両国の許可のもとだとされるそうです。
ですからいつお戻りになっても良いと‥
一日も早く会えるのを待っていると仰っていました」

「そうですか‥分かりました。
叔父は父亡き後、大変だったのですね。
私も真実が解った今、国に戻らねばなりません。アルンフォルトを救うには‥‥
私の血が必要です」

「血⁈どういう意味だ?」

不思議そうに聞き返すベルラードと、内容を察して頷くスタンリー。

「王家の血を継ぐ者が必要だということです。おそらく‥ライナ王妃の子である双子の子は、ベルラード国王の子ではありません」

「何だって!!そんな!!」

ベルラードが大声を出して立ち上がった。

「そんなことがあり得るのか?」

「間違いないと思います。私の知る限り、我が王家から双子が生まれたことはありません。
それに加え、代々直系である子は私と同じ金の髪を受け継いでおります。
民もこの濃い金の髪が王家の象徴であることを知っています。
ですが、王妃の双子は濃い茶色。
先程の四人の話からして、騎士団長になったエリックの子ではないかと思います」

私の話にスタンリーはもう一度頷く。

「リベール国王もずっと疑っていたそうです。ただ相手のことまでは分からないようでしたが、自分の子ではないのではないかと‥‥」

「そんな‥‥信じられない話だ」

ベルラードが驚くのも無理はない。
にわかには信じがたいことだ。

「きっとその事を疑っていた叔父に手を打たれる前に、自分の子を王位に就かせようと急いだのでしょう。父を事故死させ、リベールを国王に即位させ、我が子を王位継承者にし、リベールを殺害する‥‥
といったところでしょうか。
その時に私が王宮に残っていると、王家の象徴を受け継ぐ私との差に声を上げる者もいるかもしれませんから、その為に王宮からも、昔から仕える者と私を追い出したかった‥‥。
それからライナの娘は、私の婚約者を気に入っていましたから、私から奪う目的も同時にあったでしょう」

「何という女だ‥‥」

「恐ろしい悪女ですね」

母を必要以上に目の敵にしていたライナ。
王妃の座を何としても手に入れ、そして王の母となり国を掌握するつもりでいたのね。
絶対にあなたの思い通りにはさせないわ。

父と母を殺された恨み、叔父を苦しめた恨みは私がきっちり返させてもらう。

悲しいけど、優しさだけでは大切なものは守れない。
辛いけどお人好しなだけでは、悪意に打ち勝つことはできないから‥
だから私がそれをのみこむ悪となる。

それしか‥‥ないのでしょう?‥‥






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