おもいでにかわるまで

名波美奈

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第一章

第十二話

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「あのさ、勇利の景色はさ、今、目で見えてるものが全てになってると思うんだ。それって当たり前だけど。そんでこの学校って不思議でさ、女子は大概まず年上、先輩とくっつくんだよね。同い年は子供っぽいってやつ?ふは。だけどさ、俺達卒業までクラス替えもないじゃん?3年とか4年になると、今度は同級生とくっつくんだよね。」

「まあ・・・。」

「だから色々大丈夫だって、元気出せ。」

ぼすっと勇利はお尻を蹴られた。

正木さん・・・。

全く・・・。

俺、正木さんが好きだよ。照れ屋だけど優しくて、いざというときかっこいい。

「正ちゃんはどうなんですか?」

「俺?俺のクラスは女いねーっての!」

「ロリコンだったりして。」

「バッカ俺はフェロモン系のお姉さん専門だって。」

「くだらねえー。」

ははは。と二人は声を揃えて笑った。柔らかい空気に包まれている。

それからそのまま校内を歩いていると、校門の受付で入校手続きをしている人達が見えた。

「お、また中学生達見学来てんじゃん。やっぱまだまだかわええな。」

「貴重な女子ですね。」

「ほらみろよ!あそこにも花嫁候補がいるんだぜ!」

「そりゃ僕はありかもですけど、正木さんは完全に犯罪でしょ。」

「だから俺は年上専門だっての!お、こっち見てるぜ。バイバーイ。」

聖也は、遠くの女子中学生に手を振っている。上っ面は本当にちゃらい。二人は、遠くに見える少女達の顔をはっきり認識はできなかったけれど、スラッとした背の高いスタイルの女の子が印象的で、少しの間見つめてしまっていた。

「真ん中の子かわいくね?背が高いあの子。」

「いや、顔なんて全然見えないですし。ほんと敏感ですね。」

「お前ね、情報を制するものは世界を制するんだぜ?」

「なんすかそれ?意味わかんねー。IT社長ですか?」

目に映る中学生達は本当にピュアでかわいいと思った。もちろん勇利の決意も変わらずに揺るぎないものだ。

不器用でもいい。お茶が作れればそれでいいんだ。よし。今日もクラブ頑張ろう。

今の勇利には十分前向きな台詞だった。
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