おもいでにかわるまで

名波美奈

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第一章

第十三話

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街にはイルミネーション、空には輝く星、行き交う恋人同士の笑顔。だって今日はクリスマス。

世界中の幸せムードにつられて柄にもなく長谷川明人あきとはロマンチックした。少し速足な明人の足は、待ってて、すぐに行くからね、とでも言いたげにステップでも刻んでいるようだった。

ピンポーンと玄関の呼び鈴が鳴ると、勇利は一度堀田ほったに目配せした。そして堀田は玄関まで来訪者を出迎えに行った。

「おう明人入れよ。もう皆来てるぜ。」

「結構寒かった。早く入れろよ。」

彼女いないもの同士、男だけのクリスマスパーティの始まりであった。そしてその準備をされた部屋では、勇利と他数名集まってゲームの最中だった。

「これ、堀田が用意したの?すげーじゃん。」

「違う母さん。準備だけして親父と出かけた。姉貴は男とデートだし、俺らだけだから騒いでも大丈夫だぜ。」

「姉貴って堀田に似てるの?うける。ねえお姉さんの写真見せてよ。」

勇利が明人と堀田の話に混ざると、明人が少し不思議そうな表情をした。

「勇利も来てたんだ。」

「ん?どういう意味?」

「別に・・・。」

「なあ乾杯しようぜー。世界中の恋人達と、寂しい俺達に、かんぱーい。」

「何キモいこと言ってんだよ、早くケーキ切れよ。」

「人使い荒いし。」

ぐちゃっと適当に切られたケーキを堀田は適当に振る舞ったが、せっかくの鮮やかな色で飾られたケーキの価値は残念ながら堀田により下げられてしまった。

「おっまえもっときれいに切れねーのか!このっ!」

そして結局格闘技の技を掛け合うのが愛すべき男達の集まりなのだろうか。

「早く角刈りのお姉さんの写真見せろよ。」

「勇利ってば角刈りなわけないでしょ。わかった・・・ほらよ。」

「おっまえ・・・こんな綺麗なお姉さんと同じ屋根の下で暮らしやがって。この変態!ハレンチ!お姉さんの友達紹介しろこの野郎!」

明人と勇利はケーキや料理をつつきながら、このやり取りを笑って眺める。

「笑ってないで明人も来い!」

ぐいっと明人がプロレス軍団に引っ張られるとすぐさま勇利が声を掛けた。

「明人待って、危ないからメガネ取りな。」

「サンキュー勇利。頼むわ。」

勇利はメガネを預かりそして驚いた。

「明人・・・お前、顔・・・。」

勇利も視力が良い方ではなく、だから水泳の時は気が付かなかったのだ。そして明人自信も恐らく自分のルックスに気付いていないのであろう。

かなり無頓着だもんな。はは。そこが明人の良い所なんだけどね。

勇利はそんな明人が妙におかしくて微笑んだ。

「勇利止めろよー。」

「わかったわかった、お前らさー、もう16なんだからガキ臭い事やめろって。」

と言いながらもそんなクラスメート達が楽しくて、勇利はまだしばらく闘わせておく事にした。
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