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第43話 ルナを泣かせる奴はおしおきだ!
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破壊の跡を追って森を駆け抜ける。
「マキナ、状況整理お願い!」
『鎧を着たバゾンドの正体はザルディス・エレイン侯爵でした。彼は赤き月から力を得ることでバゾンドになった赤眼です。その目的はルナさんを手に入れることと、自分と同じ力を持つタカシさんの抹殺です。』
「俺はバゾンドじゃないんだけど、あいつにしてみりゃそんなの知ったこっちゃないだろうしな!」
『はい。ザルディス・エレインのこれまでの言動からして、自分に匹敵する存在は無条件で排除したいのだと思われます。』
「つまり、どう転んでもやるっきゃないってことだ!」
なんて話をしてたら、ヨロヨロと立ち上がるエレイン侯爵が見えてきた。
どうやら大岩にぶち当たって止まってたみたい。
「グウゥ……おのれ、貴族でない者が私の顔を殴るなど……!」
「そんなん知るかーっ!」
「グハァーッ!?」
走った勢いのままエレイン侯爵の腹にドロップキックをぶちかます。
大岩との間でサンドイッチにしてやってから、その反動で跳躍。
クルクルと空中で回転してからスタッと着地してみた。まさにウルトラC!
「貴族だからって何やっても許されると思うなよ! 搾取される側はたまったもんじゃないんだからな!」
「グヌゥ……貴族の務めとして、秩序を乱す反乱はァ……鎮圧するのみィッ!」
エレイン侯爵が再びハンマーを構えて腰を落とした。
赤い右眼がギュンと輝く。
「死ねィ! 無拍子ッ!」
例の消えるやつ!
だけど前回と違って背中は見せてない!
「……見えた!」
エレイン侯爵の巨躯が眼前に迫った瞬間、こちらも敢えて踏み込んだ。
背中を向けるようにして体当たりをぶちかます!
「ヌゥ……ッ!」
エレイン侯爵が転倒しないように踏ん張りをきかせてきた。
「わわっ!」
逆に俺の方がバランスを崩してしまう。
そうか。向こうの方が移動距離が長かったし、鎧も重いから……!
「隙あり! 打鋼弾!」
ハンマーの振り上げが迫ってきた。
避けられないと悟った俺は両腕をクロスさせて身を守る。
「うわーッ!」
今度は俺が吹っ飛ばされる番だった。
まんまと空高く打ち上げられてしまう。
「ん、でも、あんまり痛くない。赤い炎がダメージを減らしてくれたのか。普通だったら今ので両腕もっていかれてたもんな。あとマキナ……ひょっとしてなんだけど、俺って筋力が上がってても体重は増えてなかったりする?」
『はい。前にもご説明したとおり、ステータスの変動による外見の変更はありません。』
「質量勝負では、俺が不利ってことか」
なんて空中で話してる間に上昇速度が落ちてきた。
そろそろ落下が始まる。
『それより、この状況は非常に危険です。落下する間は【素早さ】による恩恵がないので、いいように攻撃を受けてしまいます。なんとか落下軌道を修正してください。』
「そうだね。きっとあいつも地上で俺を待ち受けて……っていや、それは反則でしょッ!?」
なんかエレイン侯爵がロケット弾みたいに足から魔力を噴射して飛んできてるんですけど!
あいつ、このまま空中で俺のことをブン殴る気だ!
『魔力を放出してください!』
「ッ!」
マキナの指示に従って手から魔力を打ち出す。
その反動で落下軌道がズレたおかげで、上昇してくるエレイン侯爵をなんとか回避できた。
だけどピンチは終わらない。
「あいつ、空中に足場を!」
あろうことかエレイン侯爵は魔力で空中に力場のような足場を作り、それを蹴ることで俺を追ってきた。
『慌てないでください。タカシさんにも同じことができるはずです。』
「そりゃそうかッ!」
エレイン侯爵に手本を見せてもらったおかげで、力場のフィールドを作るのは簡単にできた。
一度蹴ったらすぐ壊れてしまうような弱い力場だけど、おかげで空中で何度でもジャンプができる。
これ、かなり使えるぞ!
「グヌ……!」
エレイン侯爵が追撃を諦めて素直に落下を始めた。もしかしたら、魔力がもうないのかもしれない。
逆にこっちは魔力に余裕があるし、鎧を着てないぶん身軽だから、こういう勝負では俺が有利みたいだ。
『ここがチャンスです、タカシさん。自由落下中に隙ができるのはザルディス・エレインも同じです。』
赤い炎のパワーアップにも慣れてきた。
ここから先は俺とマキナの切り札を見せてやる!
「全ステータスを300まで上昇!」
『了解しました。モード:オール・スリーハンドレッド!』
事前に決めておいたコマンドワードを唱えると、マキナも打ち合わせどおりの返事をくれた。
その瞬間、身も心も全能感に包まれる。
赤い炎も呼応するように激しく燃え上がった。
自分の中にあった不安や恐怖が完全に消え去る。
「これが人間でいられる限界値か」
今まで口にしなかったけど、ずっと疑問に思っていた。
普通の日本人に過ぎない俺がノリノリで戦えるのは、なんでなのかと。
「……なるほどな。確かに危険だ」
結論から言うと【精神力】を100にしたおかげだ。
それでも戦うのが怖かったから、自分を鼓舞するために悪ふざけにも思える言動を繰り返していた。
だけど【精神力】300は、それすら必要ない。
あふれんばかりの自信と知性が活力を与えてくれる。
「さて行くぞ、早口野郎。覚悟しろ」
「マキナ、状況整理お願い!」
『鎧を着たバゾンドの正体はザルディス・エレイン侯爵でした。彼は赤き月から力を得ることでバゾンドになった赤眼です。その目的はルナさんを手に入れることと、自分と同じ力を持つタカシさんの抹殺です。』
「俺はバゾンドじゃないんだけど、あいつにしてみりゃそんなの知ったこっちゃないだろうしな!」
『はい。ザルディス・エレインのこれまでの言動からして、自分に匹敵する存在は無条件で排除したいのだと思われます。』
「つまり、どう転んでもやるっきゃないってことだ!」
なんて話をしてたら、ヨロヨロと立ち上がるエレイン侯爵が見えてきた。
どうやら大岩にぶち当たって止まってたみたい。
「グウゥ……おのれ、貴族でない者が私の顔を殴るなど……!」
「そんなん知るかーっ!」
「グハァーッ!?」
走った勢いのままエレイン侯爵の腹にドロップキックをぶちかます。
大岩との間でサンドイッチにしてやってから、その反動で跳躍。
クルクルと空中で回転してからスタッと着地してみた。まさにウルトラC!
「貴族だからって何やっても許されると思うなよ! 搾取される側はたまったもんじゃないんだからな!」
「グヌゥ……貴族の務めとして、秩序を乱す反乱はァ……鎮圧するのみィッ!」
エレイン侯爵が再びハンマーを構えて腰を落とした。
赤い右眼がギュンと輝く。
「死ねィ! 無拍子ッ!」
例の消えるやつ!
だけど前回と違って背中は見せてない!
「……見えた!」
エレイン侯爵の巨躯が眼前に迫った瞬間、こちらも敢えて踏み込んだ。
背中を向けるようにして体当たりをぶちかます!
「ヌゥ……ッ!」
エレイン侯爵が転倒しないように踏ん張りをきかせてきた。
「わわっ!」
逆に俺の方がバランスを崩してしまう。
そうか。向こうの方が移動距離が長かったし、鎧も重いから……!
「隙あり! 打鋼弾!」
ハンマーの振り上げが迫ってきた。
避けられないと悟った俺は両腕をクロスさせて身を守る。
「うわーッ!」
今度は俺が吹っ飛ばされる番だった。
まんまと空高く打ち上げられてしまう。
「ん、でも、あんまり痛くない。赤い炎がダメージを減らしてくれたのか。普通だったら今ので両腕もっていかれてたもんな。あとマキナ……ひょっとしてなんだけど、俺って筋力が上がってても体重は増えてなかったりする?」
『はい。前にもご説明したとおり、ステータスの変動による外見の変更はありません。』
「質量勝負では、俺が不利ってことか」
なんて空中で話してる間に上昇速度が落ちてきた。
そろそろ落下が始まる。
『それより、この状況は非常に危険です。落下する間は【素早さ】による恩恵がないので、いいように攻撃を受けてしまいます。なんとか落下軌道を修正してください。』
「そうだね。きっとあいつも地上で俺を待ち受けて……っていや、それは反則でしょッ!?」
なんかエレイン侯爵がロケット弾みたいに足から魔力を噴射して飛んできてるんですけど!
あいつ、このまま空中で俺のことをブン殴る気だ!
『魔力を放出してください!』
「ッ!」
マキナの指示に従って手から魔力を打ち出す。
その反動で落下軌道がズレたおかげで、上昇してくるエレイン侯爵をなんとか回避できた。
だけどピンチは終わらない。
「あいつ、空中に足場を!」
あろうことかエレイン侯爵は魔力で空中に力場のような足場を作り、それを蹴ることで俺を追ってきた。
『慌てないでください。タカシさんにも同じことができるはずです。』
「そりゃそうかッ!」
エレイン侯爵に手本を見せてもらったおかげで、力場のフィールドを作るのは簡単にできた。
一度蹴ったらすぐ壊れてしまうような弱い力場だけど、おかげで空中で何度でもジャンプができる。
これ、かなり使えるぞ!
「グヌ……!」
エレイン侯爵が追撃を諦めて素直に落下を始めた。もしかしたら、魔力がもうないのかもしれない。
逆にこっちは魔力に余裕があるし、鎧を着てないぶん身軽だから、こういう勝負では俺が有利みたいだ。
『ここがチャンスです、タカシさん。自由落下中に隙ができるのはザルディス・エレインも同じです。』
赤い炎のパワーアップにも慣れてきた。
ここから先は俺とマキナの切り札を見せてやる!
「全ステータスを300まで上昇!」
『了解しました。モード:オール・スリーハンドレッド!』
事前に決めておいたコマンドワードを唱えると、マキナも打ち合わせどおりの返事をくれた。
その瞬間、身も心も全能感に包まれる。
赤い炎も呼応するように激しく燃え上がった。
自分の中にあった不安や恐怖が完全に消え去る。
「これが人間でいられる限界値か」
今まで口にしなかったけど、ずっと疑問に思っていた。
普通の日本人に過ぎない俺がノリノリで戦えるのは、なんでなのかと。
「……なるほどな。確かに危険だ」
結論から言うと【精神力】を100にしたおかげだ。
それでも戦うのが怖かったから、自分を鼓舞するために悪ふざけにも思える言動を繰り返していた。
だけど【精神力】300は、それすら必要ない。
あふれんばかりの自信と知性が活力を与えてくれる。
「さて行くぞ、早口野郎。覚悟しろ」
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