淫雨は愛に晴れ渡る

鳫葉あん

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「ひ……あ……あ、ぁ……あ……も、もう……ゆるして、ゆるしてぇっ……」
 追随する騎兵に守られ、街道を進む馬車の中から淫らな声が聞こえてくる。衣服を剥ぎ取られて座席に押し倒され、支配者によって乳首を愛撫される悦びを教え込まれたユージーンのものだった。
「ああっ……おねが、おねがいじまずぅっ……!」
 乳首に与えられる快楽だけで股間を熱くし、涙を流して自分を征服する男に許しを求める。両胸に慎ましく存在していただけの器官は男によって育てられ、ピンと背伸びをするように勃起している。
 男の指先で潰されると胸の奥まで甘い痺れが走り、快感が股間まで伝わっていく。ねじ切らんばかりに摘み上げられても、感じるのは痛みだけではなかった。
 男の顔はユージーンの胸に埋まり、情けない声を聞くと乳首を食んでいた形の良い唇が動きを止めた。
「あ………………あっ?! あっ!! やめでぇっ!!」
 乳首を思いきり噛みつかれ、悲鳴を上げる。足をばたつかせるがのしかかる男の体はびくともしない。
「いっ! ひ、ひぃ、いっ……いたいっ……ゆるじでっ……」
「……痛めつけられても、お前の体は悦んでいるぞ」
 男の言葉通り、素肌を晒すユージーンの下肢では性器が涎をこぼしながらそり勃っている。根本をハンカチできつく縛られ、射精を禁じられていた。
「うぇっ……だっでっ……だってぇ……」
 男の手で快楽を植えつけられた体は解放を求めているが、出口を塞き止められてしまっている。鈴口から潮が吹き出すが、出したいのはそんなものではない。
「何だと言うんだ」
「……だしたい……射精したいです……」
 欲求を口にしたユージーンに男はつまらなそうに鼻を鳴らす。唇が開かれようとしたその時、馬車の外から「陛下」と声が掛かった。
「へいか……」
「もう着いたのか」
 男が言う通り、馬車はいつの間にか歩みを止めている。外からの声もワイアットの城へ到り着いたことを告げた。
「開けろ」
 男の声に従い、馬車の扉が開かれていく。座席に転がるユージーンは半端に脱がされた衣服を纏わりつかせたまま、男の腕に抱え上げられた。
「わっ……」
 軽々と横抱きにされたユージーンは半裸の体を隠そうと縮こまるが、男は気にした様子もなく馬車を出る。
 護衛の目がユージーンを抱く男へ、仕える皇帝へ向けられた。男が腕に抱えるユージーンの姿が視界に入っても、狼狽える者はいない。
 迷いなく足を進め、城内に入っていく男を見つめる眼差しは兵士のものだけではなかった。


 石造りの荘厳な城内を、男は迷いなく進んでいく。ユージーンを抱えていても誰にも咎められることはなく、そもそも誰もが頭を垂れ、男はそれを当然と受け止めている。
 長い回廊を進み、階段をいくつも上り、一際大きな扉の前で男はようやく足を止めた。扉の横には兵士が二人待機しており、男が何か言う前に彼らによって扉が開けられる。
 広い部屋の中央には大きな机があり、その後ろには整頓された本棚がある。窓から見える景色は暗いが、壁に設けられたランプに火が灯されているおかげで部屋の様子はよく見えた。
 男は足の向きを右側へと変える。壁には扉があり、ユージーンを抱えながら器用に開けた。その先には部屋の大半を占める大きさのベッドがあり、一目で寝室なのだとわかった。
「下拵えが先だ」
 ベッドを見て身を竦めたユージーンに、男が言った。からかうようなそれを、ユージーンは理解出来なかった。
 寝室にはさらに扉があり、男はそちらへ向かっていく。繋がっていたのは大きな鏡台と品の良い棚の設けられた小部屋で、やはり奥に続く扉があった。先に入っていろと促されたユージーンは久しぶりに両足で立ち、扉を開く。壁の上方に設けられたランプが、湯の溜められた猫足のバスタブを照らしていた。


「あ……あ……あっ、あ、お……」 
 ユージーンは広いバスタブの中にいた。足を伸ばして湯に浸かる男の上に座らされ、長い指に尻孔をほじくられて喘ぐ。
「やはり疲れを取るには風呂に限る。なぁ、お前も気持ちいいだろう?」
 言いながら、男はユージーンの孔に侵入した指を抜き差しする。狭い肉筒を擦り、奥へ突き入れられて快感を覚え始めたユージーンは「きもちぃぃですっ」と頷いて悦んだ。
「そうか。風呂が好きか」
「ひゃい……すき……あっ……あ、あ……」
 男の右手は孔を掘りいじめ、空いた左手がユージーンの乳首をこねくり回す。首筋に顔を埋めて吸い付かれる。触れられる度に声を上げる素直な体に、男は唇を吊り上げて笑った。
「慎ましかった胸も、今や愛でてくれと叫んでいるぞ」
 指の腹でくにくにと擦る乳首は、男に撫でてもらおうと硬くしこり勃っている。健気なものだと潰してやると、硬度が増していった。
「んんぅ……あっ……あ……あ、あっ……」
 男の胸に体を預け、喘いで悦びを伝えるユージーンに男は主張する自身を擦り付けた。
「今可愛がっている孔の中に、これを入れてやる」
 男が男を抱くのはそういうものだと教えると、喘ぐユージーンが固唾を飲む。しばし声が止み、考えているのがわかった。
「俺は男を抱いたことはないが、尻孔の締まりは女を抱くよりいいらしいな」
 何を考えた所でユージーンに選択権はない。男の行動が全てなのだ。
「男に犯されるのも抜け出せなくなるらしいぞ」
「う……ぁ……っ!」
 浅い抜き差しを続けていた指が、力強く奥へ進む。圧迫感からユージーンが目を見開き、眉を寄せて苦悶の声を上げる。
「うぁ……ぁ、うっ……」
 指の付け根まで飲み込んでも、さらに奥を目指すように押し入ろうとする。これ以上は入らないと、ユージーンは首を振って訴えた。
 男の指がゆっくりと抜かれていく。圧迫からの解放に息を吐き、思わず零れ伝う涙が生ぬるいものに拭われる。視界に映らずとも寄せられた顔と滑った感覚が男の舌だと教えてくれた。
 男に抱き支えられながら風呂から上がったユージーンは肌触りの良いタオルで体を拭われ、裸のまま寝室へ連れ戻される。
 大きなベッドに転がされたユージーンの上へ、男が股がり覆い被さってくる。冷徹な美貌がユージーンを見下ろす。
「あ」
 肉体美と呼ぶに相応しい男とは比べるのも烏滸がましい、ユージーンの貧相な体に男が手を伸ばす。風呂で散々可愛がられ、そそり立つ乳首をねぶられた。
「ああっ」
 先程までの戯れで既に反応し始めていた性器を握り扱かれる。呆気なく射精する様を見て男は「感じやすい奴隷だ」と笑った。
「俺に触れられてそんなに気持ちがいいか」
「…………あ、い。はい……きもちぃ……」
 虚脱感から意識がぼうっとする中、ユージーンは頷いた。男にされることは初めこそ痛みや拒否感があったが、今では性感を引き出す愛撫なのだと、ユージーンの体は理解してしまった。
 口角を上げた男は、ユージーンから体を離していく。目で追うと、ベッドサイドに置かれたチェストから何かを取り出している。掌に収まる小瓶には、透明な液体が入っているようだ。
「うあ」
 ユージーンの足元へ座った男は、投げ出された両足を掴むと膝を折らせた。自然と局部を晒す格好になったユージーンの尻へ、小瓶の中身が垂らされる。
 滑りを帯びた冷たさに震える尻を、男がからかうように撫でた。そのまま滑りを掬い、纏い、ユージーンの尻孔へ擦りつける。
「あっ」
 浴室で行われた短くとも濃密な戯れを思い出し、声を漏らす。間もなくぬぶっ、と指が侵入し、ユージーンの隘路を開いていく。
「ああっ……あ……あ、あ……」
 肉筒を擦り上げられ、唇から嬌声が飛び出す。異物を挿入される違和感は既になく、性感を引き出される悦びに支配されていた。
「指が食い千切られそうだ」
「うぅ、あっ……あっ……あ……」
 男の長い指の付け根まで咥え込み、抜き差しを繰り返される。気持ちがいいと思考が痺れるユージーンの締まりのない顔を見て、男は指を引き抜いた。
「う……?!」
 快感の喪失を惜しむユージーンの尻ははしたなく揺れる。谷間の孔はひくひくと収縮し、満たすものを求めていた。
 男の手は硬く勃ち上がった自身の淫茎に伸び、はしたなく男を誘う孔へあてがう。涎を溢す亀頭を孔へ擦り寄せるとユージーンは「あっ……」と物欲しげな声を上げた。
 そのまま挿入されるのだろうと期待したユージーンだが、肥えた亀頭はすぐに尻から離れてしまう。
「…………あ。なんでぇ……」
 疑問を口にしたユージーンは、視線を男へ向けた。表情のない冷静な瞳がユージーンを見つめ返す。
「入れてほしいか。俺のものを。指より太く長いもので、奥まで突いてやるぞ」
 指で肉筒を擦られるのは気持ちが良かった。それ以上のものと考えると、ユージーンは物欲しげに男を見つめる。どうしたらいいのかと。
「言葉にしろ」
 求めは単純だった。単純だから恥がある。視線をさ迷わせたユージーンは唇を開けたり閉じたりしつつ、声に出す。
「い、入れてください」
「何を」
「……あ、貴方……様の……ち、ち○ぽ……」
「何処に」
「お尻の孔に……」
 尋問のようだと思いつつ言いきったユージーンだが、男は無情にも「違う」と切り捨てた。どうすればいいのかと困り果てるユージーンの耳元へ、男が囁く。
「え……」
「言えたら入れてやる」
 口を開けて呆けたユージーンの頬はみるみる赤くなっていく。目を閉じ、一瞬の羞恥で得られるだろう快楽を思い、口を動かす。
「ゆっ、ユージーンの……処女けつま○こ、にっ……リチャード様のおち○ぽをお恵み下さい…………お腹の奥までリチャード様でいっぱいにして下さい……ユージーンの処女奪って、めちゃくちゃにしてっ……」
 お願いします、と懇願するユージーンの顔は耳の端まで赤く染まる。
「淫乱め」
 罵る声は愉しげだった。
「あ……あ……っ……あ、あ、あ。あ、あっ……」
 リチャードの命令に従った奴隷には、褒美を与えなければならない。
 訪れを待ち望んでいた尻孔に亀頭を押し付け、指よりも太い肉塊がユージーンの中に入り込んでいく。隘路を割り開かれ、体を真っ直ぐ刺し貫かれたような錯覚に陥る。喃語のように「あ」が吐き出ていく。
「あ、あ、あ、あ、あ。あっ……ああっ……」
 太い亀頭に襞を抉り、長い肉茎で胎の奥まで突き入れられるのが気持ちいい。リチャードの腰振りの速度が増し、より力強く――乱暴に犯されても、肉欲に溺れ始めたユージーンは悦びに変換した。
「ひィんっ」
 胎を突かれながら乳首を摘ままれ、嘶きのような声を上げる。ぐにぐにと乳首を摘み潰すリチャードの淫茎にユージーンの肉襞が絡みつき、ぎゅっぎゅっと抱き着くと舌を打つ音が聞こえた。
「ああっ……あ、あんっ……あ……あ……あ~~っ」
「はっ……は、くそっ……」
 性器から白濁を散らし、咥える雄をきつく締め付けながらはしたなく腰を振り、ぱちゅぱちゅ、ぱんぱん、と淫らな音を立ててリチャードが腰を打ち付け、肌を叩く度に舌を突き出して喘ぐ姿は罵りの通り淫乱そのものだった。
 目を剥いて喘ぐだけの顔は滑稽な筈なのに、リチャードの興奮は高まっていく。
「……っ、うっ……出すぞ! ユージーン!」
「あぁんっ出してぇっ……リチャードさまぁ……」
「……ふっ、う……」
 リチャードは呻きながら眉を寄せて目を閉ざし、ユージーンの中へ射精する。あたたかい白濁を胎の奥へ注がれ、ユージーンは未知の感覚に言葉を失っていた。あうあうと唇を震わせるが、胸に募るのは不快感ではなかった。
「きもちぃ」
 ぽつりと声に出し、緩く尻を振る。
 男を尻孔で咥え、胎の奥に種を蒔かれる。今まで生きてきた中で、自分がされるとは思いもしなかった。
「……ん。あっ……リチャード様……」
 吐精し、動きを止めていたリチャードが再び腰を振り始める。奴隷は主人の意思に従うだけだった。
 ユージーンの中で硬さを取り戻し始め、膨れ上がっていく雄をやわやわと締め付ける。腰を動かし始めたら尻を振って悦びを返す。
 たった一日の出来事で、ユージーンは大きく変わってしまっていた。
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