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<34・魔女>
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幻覚に巻き込んだということは、最終的に廃人になっても死んでも構わなかったと解釈できても仕方ない。光の疑問は至極真っ当なものだっただろう。彼からすれば、完全にるりはを裏切ったつもりもなく、むしろ彼女が魔女に騙されていたなら救いたいくらいの気持ちでいたはずなのだから尚更だ。
優理は固唾をのんで、るりはの答えを待つ。そして。
「実は、あんたがそこにいることそのものは、そんなに怒ってないのよ私」
彼女は予想外のことを口にしたのである。
「道具としてしか己の価値を信じられなかったあんたが、両親が死んでも自分を誰かに使われる玩具としてしか認識できなかったあんたが、初めて私の命令に逆らった。私に愛されたい、本心を確かめたいという人間らしい意思を持った。それは何も悪いことじゃない。愛があるからこそ人は不安に思うし、怯えるし、相手を疑うのも実に真っ当なことなんだから。私は強さと力こそ絶対のものだと信じているけれど……同じだけ、愛も絶対だと思ってるのよ、これでも」
だけどね、とるりはは少しだけ寂しそうな目を見せた。魔女と称されてもおかしくないような、悪女らしからぬ慈しむような眼で。
「でも、それはそれとして。愛があるからこそ嫉妬する、ヤキモチを焼く……それは“彼女”として当然だと思わない?」
「ヤキモチ?」
「ええ、そう。……あんたの人間らしい心を取り戻すのが、私ではなかったという、嫉妬。それからあんたの心に、私以外の人間が深く入り込む嫉妬。ええ、嫉妬よこれは。それは認める。この私に嫉妬させるなんて光……なんて罪な男なの!私はね、あんたの全てを自分のものにしないと気が済まないの。体は手に入れた。愛も手に入れた。でも心のすべてがもし手に入らないならあとは……命しか、ないでしょう?」
「ま、待てるりは!俺はそんなんじゃ」
光は慌てたように声を上げる。自分が、るりは以外を愛することなどないと、必死で主張したいのだろう。
でもその言葉は微妙にずれているのではないか、と優理は思うのだ。人は何も、恋愛でだけ誰かに嫉妬するわけではない。親友が別の友達に取られても嫉妬するし、恋人が男友達とばかり楽しそうにしていても嫉妬するのが人間なのだ。だから、るりはの気持ちもわからないわけではない。ただ少し驚いただけである。恐ろしい噂ばかり、人外じみた話ばかり聴かされてきた少女に、想像以上に年相応の女の子らしい感情があったという事実に。
同時に、確信した。
どれほど歪んでいても、間違いがあっても――るりはも光を愛していることに、変わりはないのだということを。
「待て、サメジマ・ルリハ!」
ポーラが焦ったように声を上げた。
「こいつを庇うつもりじゃないが……こいつがアタシらを伴ってまで此処に来た理由、お前もわかってるんじゃないのか?こいつはお前の本当の気持ちが訊きたかっただけだ。でもって、お前がそこまで魔女を盲信するのが不安だっただけだ。だってお前ら、魔女・ジェシカの顔も見たことないっていうじゃないか。そんな女を心から信じるなんて無理ってなもんだろ。お前が魔女に騙されているかもしれない、魔女は自分達の願いを本当に叶えてくれるかどうかわからない……そう思って、こいつは!」
「そんな心配不要だわ」
「何故そう言い切れる!?」
「だって、ジェシカと私の願いは同じなんだもの」
荒い息を整えながら、るりははそれでも余裕の笑みを崩さずに告げる。
「ずっと……ずっと不満で仕方なかった。強いものこそ正義と言いながら、この世界は強い者ほど肩身が狭い想いをして生きなければならない仕組みになっているんだもの。世界を渡る航海者となれるのは、膨大な魔力を持ち、世界の理を理解した超越者のみ。つまり、文字通り選ばれた存在だけということなの。それなのに、その選ばれた存在は自由に世界を渡って、自分の恵まれた力を自由に振るうことが許されないなんて理不尽だと思わない?何故、持っている力を好きなように使っちゃいけない?……シンデレラの世界に降臨して、硝子の靴を横取りして魔法少女が王子様に愛される。そんな世界を作ることの、何がいけないの?桃太郎の世界で鬼を魔法でぶちのめすことは?異世界に転生して、チート魔法で気に食わない城主や魔王を倒しまくって、イケメンに美少女にと愛されまくることの何がおかしいの?……そんなの全部、その世界の住人の、弱い奴らの勝手な都合でしょ?」
だからね、と彼女は続ける。
「世界を渡っても、渡った世界で恵まれた才能をフルに発揮してチート無双しても叱られない……愚かな警察じみた組織に追われて傷つけられたりしない。それほどまでの力が欲しかった。私そのものが、ルールになれるほどの力が。……あんた達をみんな倒して、魔石に代えて水晶に吸収させれば……一気に伝説を蘇らせるまでの近道になるはずだったのにね」
「……待ってください」
呆然と彼女の言葉を聴き続けていたサミュエルが、ようやくといった様子で口を開く。
「それが、貴女の願いだっていうんですか?それは……それじゃあ、まるで」
そう。彼女の言葉は、願いは。どう見ても、現代日本を生きる、鮫島るりはの言葉ではなかった。
それは、まるで。
「あら、まだ気づいてなかったの?」
真っ白な空間に、黒い染みが湧き出すように色が変わっていく。壁も、天井も、柱も、玉座も全て。代わらないのは、台座に設置された銀色の水晶のみ。
そして部屋が真っ黒に染まると同時に、姿を現したのは――真紅のドレスを身に纏った、一人の少女の姿だ。明るい茶色の髪を靡かせ、うっそりと微笑むその娘の顔は、どう見ても。
「魔女・ジェシカはね……“私”なの。鮫島るりはは、“私”が力を手に入れるために、現代日本に送り込んだ私の一部……私の手駒なのよ」
降臨した転生の魔女・ジェシカは。隣に立つるりはとまったく顔で、にやりと笑みを浮かべて見せたのだった。
***
誰もが思っていたはずだ。魔女ジェシカによって、不良四人は無理やり異世界転生させられた。彼女が車を操って、優理と空一も含めた全員の殺害を目論んだ。その点に関してのみ、るりは達も被害者と言っていいはずだと。
しかしまさか、ジェシカとるりはが同一人物だったなんてどうして思うだろう。
ましてや、るりはを盲信してきた光からすれば混乱するのも同然なのだ。確かに、顔も見えない相手をまったく疑いもしないるりはの態度には違和感を感じていた。しかしまさか、本当に彼女が全ての黒幕だったなんて。
「あんた達は知らないのでしょうけどね。異世界犯罪者を取り仕切る、ラストエデンという組織は……忌々しいけれどかなり強大な力を持つの。特にトップの創造と終焉の魔女・サトヤは恐ろしく強いわ。なんせ万年を生きた魔女。千年生きたか生きてないかの私が、真正面から戦って太刀打ちできる相手じゃなかったの」
魔女ジェシカは、るりはと同じ顔で、るりはと同じトライデントを握って微笑む。
「だから、力が必要だった。多くの異世界を巡って、力を手に入れることが私の目的だった。でも、どの世界に、強い力があるかはそう簡単にわかるものじゃない……なんせ、世界の数は星の数ほどあるんだもの。古代中国に似た世界、青い肌の異星人の世界、水の中で当たり前のように呼吸する魚人たちの世界、終わらない闘争を繰り返す神々の世界に、魔女と魔術師が終わらないゲームを続ける世界まで……。現代日本に私の分身である“るりは”を送ったのは、当初は失敗だと思っていたわ。あの世界には魔法も、強い悪霊も、悪魔も、勇者も、何一つなかったんだもの。……でも、そこで思いがけず、優秀な手駒が手に入った」
「それが、光。あんた達だったというわけ。だから私から本体のジェシカに提案したの。彼等を、異世界転生させてみればどうかって。現代日本で調査を続けていくうちに、わりと近い距離の別世界……つまりこの世界なんだけど。この世界に、伝説のドラゴンの強大な力が眠っているのがわかったからね」
ジェシカの言葉を、るりはが同じ声で引き継ぐ。顔も同じで声も同じ、聴いている側はまさに混乱しそうだった。しかもその相手は、光が唯一無二の主と認め、愛した存在だったのだから尚更に。
自分達は最初から手駒にされるために声をかけられた?いや、それはいい。自分は彼女の道具に喜んで成った存在だ、利用されるのはむしろ歓迎するべきこと。
ただ、彼女はさきほど、光の何もかも手にしたいと、そう言ったのだ。
愛しているのか、それとも道具としてしかみなしていないのか。彼女の本心は、一体どちらにあるというのだろう。
「強い者が、世界を好きなように支配して何がいけない?好きな世界を好きなように壊して何がいけない?私は作るわ、強い者が正しく強くあれる世界を……弱い者に遠慮なんかせずに、自由気ままに生きることが出来る世界を。そのためには、この世界に眠る伝説のドラゴンの力が必要。大量の魔石、あるいは魔石に代わるほどの輝きを持つ人の魂が必要不可欠。……私のところにあんた達が辿りつく頃には、全部集め終わって、ほとんど儀式をするだけの段階まで持っていけてると思ったんだけどね」
かつん、とジェシカがトライデントの底で地面を突く。途端、ふわり、とるりはの体が浮かび上がった。
「思った以上に、あんた達の動きは早かったし、優秀だった。雉本光を倒した上、道案内までさせたのは完全に計算外だったしね。……まあいいわ。計画に変更はない。力をある程度蓄えたら、全ての駒は用済みだもの。私自身の分身も含めてね」
「ま、待て!何をする気だ!」
慌てる光。まさか、るりはを吸収しようというのか。
「るりは!」
名前を呼ぶも、るりははにこにこと笑うばかりで答えない。何も心配はいらない、これは自分の望みだと言うように。
やがて彼女の体が足先から黒い霧に変わっていき、ジェシカの体に吸い込まれ始める。
「心配しなくてもいいのよ。鮫島るりはは、私の分身であり私自身。全て、私の体と魂に戻ってくるだけなのだから。……本当に鮫島るりはを愛していたのね。ただの私の駒でしかない女を」
「あ、ああ……!」
光は思わず膝をつく。自分自身であり同じ、そういうけれどやはり違うのだ。ジェシカは、るりはではない。るりははあんな風に、己の愛を否定するような言い方なんかしない。
るりははもう。自分が愛した少女はもう、完全に。
「さて、最後の仕上げを始めましょうか」
唖然とする光をよそに、魔女は情け容赦なく宣言するのである。
「私があんた達を倒して全てを手に入れるか、あんた達が私を倒して望みを叶えるか!……うふふ、なかなか燃えるラストバトルだと思わない?」
優理は固唾をのんで、るりはの答えを待つ。そして。
「実は、あんたがそこにいることそのものは、そんなに怒ってないのよ私」
彼女は予想外のことを口にしたのである。
「道具としてしか己の価値を信じられなかったあんたが、両親が死んでも自分を誰かに使われる玩具としてしか認識できなかったあんたが、初めて私の命令に逆らった。私に愛されたい、本心を確かめたいという人間らしい意思を持った。それは何も悪いことじゃない。愛があるからこそ人は不安に思うし、怯えるし、相手を疑うのも実に真っ当なことなんだから。私は強さと力こそ絶対のものだと信じているけれど……同じだけ、愛も絶対だと思ってるのよ、これでも」
だけどね、とるりはは少しだけ寂しそうな目を見せた。魔女と称されてもおかしくないような、悪女らしからぬ慈しむような眼で。
「でも、それはそれとして。愛があるからこそ嫉妬する、ヤキモチを焼く……それは“彼女”として当然だと思わない?」
「ヤキモチ?」
「ええ、そう。……あんたの人間らしい心を取り戻すのが、私ではなかったという、嫉妬。それからあんたの心に、私以外の人間が深く入り込む嫉妬。ええ、嫉妬よこれは。それは認める。この私に嫉妬させるなんて光……なんて罪な男なの!私はね、あんたの全てを自分のものにしないと気が済まないの。体は手に入れた。愛も手に入れた。でも心のすべてがもし手に入らないならあとは……命しか、ないでしょう?」
「ま、待てるりは!俺はそんなんじゃ」
光は慌てたように声を上げる。自分が、るりは以外を愛することなどないと、必死で主張したいのだろう。
でもその言葉は微妙にずれているのではないか、と優理は思うのだ。人は何も、恋愛でだけ誰かに嫉妬するわけではない。親友が別の友達に取られても嫉妬するし、恋人が男友達とばかり楽しそうにしていても嫉妬するのが人間なのだ。だから、るりはの気持ちもわからないわけではない。ただ少し驚いただけである。恐ろしい噂ばかり、人外じみた話ばかり聴かされてきた少女に、想像以上に年相応の女の子らしい感情があったという事実に。
同時に、確信した。
どれほど歪んでいても、間違いがあっても――るりはも光を愛していることに、変わりはないのだということを。
「待て、サメジマ・ルリハ!」
ポーラが焦ったように声を上げた。
「こいつを庇うつもりじゃないが……こいつがアタシらを伴ってまで此処に来た理由、お前もわかってるんじゃないのか?こいつはお前の本当の気持ちが訊きたかっただけだ。でもって、お前がそこまで魔女を盲信するのが不安だっただけだ。だってお前ら、魔女・ジェシカの顔も見たことないっていうじゃないか。そんな女を心から信じるなんて無理ってなもんだろ。お前が魔女に騙されているかもしれない、魔女は自分達の願いを本当に叶えてくれるかどうかわからない……そう思って、こいつは!」
「そんな心配不要だわ」
「何故そう言い切れる!?」
「だって、ジェシカと私の願いは同じなんだもの」
荒い息を整えながら、るりははそれでも余裕の笑みを崩さずに告げる。
「ずっと……ずっと不満で仕方なかった。強いものこそ正義と言いながら、この世界は強い者ほど肩身が狭い想いをして生きなければならない仕組みになっているんだもの。世界を渡る航海者となれるのは、膨大な魔力を持ち、世界の理を理解した超越者のみ。つまり、文字通り選ばれた存在だけということなの。それなのに、その選ばれた存在は自由に世界を渡って、自分の恵まれた力を自由に振るうことが許されないなんて理不尽だと思わない?何故、持っている力を好きなように使っちゃいけない?……シンデレラの世界に降臨して、硝子の靴を横取りして魔法少女が王子様に愛される。そんな世界を作ることの、何がいけないの?桃太郎の世界で鬼を魔法でぶちのめすことは?異世界に転生して、チート魔法で気に食わない城主や魔王を倒しまくって、イケメンに美少女にと愛されまくることの何がおかしいの?……そんなの全部、その世界の住人の、弱い奴らの勝手な都合でしょ?」
だからね、と彼女は続ける。
「世界を渡っても、渡った世界で恵まれた才能をフルに発揮してチート無双しても叱られない……愚かな警察じみた組織に追われて傷つけられたりしない。それほどまでの力が欲しかった。私そのものが、ルールになれるほどの力が。……あんた達をみんな倒して、魔石に代えて水晶に吸収させれば……一気に伝説を蘇らせるまでの近道になるはずだったのにね」
「……待ってください」
呆然と彼女の言葉を聴き続けていたサミュエルが、ようやくといった様子で口を開く。
「それが、貴女の願いだっていうんですか?それは……それじゃあ、まるで」
そう。彼女の言葉は、願いは。どう見ても、現代日本を生きる、鮫島るりはの言葉ではなかった。
それは、まるで。
「あら、まだ気づいてなかったの?」
真っ白な空間に、黒い染みが湧き出すように色が変わっていく。壁も、天井も、柱も、玉座も全て。代わらないのは、台座に設置された銀色の水晶のみ。
そして部屋が真っ黒に染まると同時に、姿を現したのは――真紅のドレスを身に纏った、一人の少女の姿だ。明るい茶色の髪を靡かせ、うっそりと微笑むその娘の顔は、どう見ても。
「魔女・ジェシカはね……“私”なの。鮫島るりはは、“私”が力を手に入れるために、現代日本に送り込んだ私の一部……私の手駒なのよ」
降臨した転生の魔女・ジェシカは。隣に立つるりはとまったく顔で、にやりと笑みを浮かべて見せたのだった。
***
誰もが思っていたはずだ。魔女ジェシカによって、不良四人は無理やり異世界転生させられた。彼女が車を操って、優理と空一も含めた全員の殺害を目論んだ。その点に関してのみ、るりは達も被害者と言っていいはずだと。
しかしまさか、ジェシカとるりはが同一人物だったなんてどうして思うだろう。
ましてや、るりはを盲信してきた光からすれば混乱するのも同然なのだ。確かに、顔も見えない相手をまったく疑いもしないるりはの態度には違和感を感じていた。しかしまさか、本当に彼女が全ての黒幕だったなんて。
「あんた達は知らないのでしょうけどね。異世界犯罪者を取り仕切る、ラストエデンという組織は……忌々しいけれどかなり強大な力を持つの。特にトップの創造と終焉の魔女・サトヤは恐ろしく強いわ。なんせ万年を生きた魔女。千年生きたか生きてないかの私が、真正面から戦って太刀打ちできる相手じゃなかったの」
魔女ジェシカは、るりはと同じ顔で、るりはと同じトライデントを握って微笑む。
「だから、力が必要だった。多くの異世界を巡って、力を手に入れることが私の目的だった。でも、どの世界に、強い力があるかはそう簡単にわかるものじゃない……なんせ、世界の数は星の数ほどあるんだもの。古代中国に似た世界、青い肌の異星人の世界、水の中で当たり前のように呼吸する魚人たちの世界、終わらない闘争を繰り返す神々の世界に、魔女と魔術師が終わらないゲームを続ける世界まで……。現代日本に私の分身である“るりは”を送ったのは、当初は失敗だと思っていたわ。あの世界には魔法も、強い悪霊も、悪魔も、勇者も、何一つなかったんだもの。……でも、そこで思いがけず、優秀な手駒が手に入った」
「それが、光。あんた達だったというわけ。だから私から本体のジェシカに提案したの。彼等を、異世界転生させてみればどうかって。現代日本で調査を続けていくうちに、わりと近い距離の別世界……つまりこの世界なんだけど。この世界に、伝説のドラゴンの強大な力が眠っているのがわかったからね」
ジェシカの言葉を、るりはが同じ声で引き継ぐ。顔も同じで声も同じ、聴いている側はまさに混乱しそうだった。しかもその相手は、光が唯一無二の主と認め、愛した存在だったのだから尚更に。
自分達は最初から手駒にされるために声をかけられた?いや、それはいい。自分は彼女の道具に喜んで成った存在だ、利用されるのはむしろ歓迎するべきこと。
ただ、彼女はさきほど、光の何もかも手にしたいと、そう言ったのだ。
愛しているのか、それとも道具としてしかみなしていないのか。彼女の本心は、一体どちらにあるというのだろう。
「強い者が、世界を好きなように支配して何がいけない?好きな世界を好きなように壊して何がいけない?私は作るわ、強い者が正しく強くあれる世界を……弱い者に遠慮なんかせずに、自由気ままに生きることが出来る世界を。そのためには、この世界に眠る伝説のドラゴンの力が必要。大量の魔石、あるいは魔石に代わるほどの輝きを持つ人の魂が必要不可欠。……私のところにあんた達が辿りつく頃には、全部集め終わって、ほとんど儀式をするだけの段階まで持っていけてると思ったんだけどね」
かつん、とジェシカがトライデントの底で地面を突く。途端、ふわり、とるりはの体が浮かび上がった。
「思った以上に、あんた達の動きは早かったし、優秀だった。雉本光を倒した上、道案内までさせたのは完全に計算外だったしね。……まあいいわ。計画に変更はない。力をある程度蓄えたら、全ての駒は用済みだもの。私自身の分身も含めてね」
「ま、待て!何をする気だ!」
慌てる光。まさか、るりはを吸収しようというのか。
「るりは!」
名前を呼ぶも、るりははにこにこと笑うばかりで答えない。何も心配はいらない、これは自分の望みだと言うように。
やがて彼女の体が足先から黒い霧に変わっていき、ジェシカの体に吸い込まれ始める。
「心配しなくてもいいのよ。鮫島るりはは、私の分身であり私自身。全て、私の体と魂に戻ってくるだけなのだから。……本当に鮫島るりはを愛していたのね。ただの私の駒でしかない女を」
「あ、ああ……!」
光は思わず膝をつく。自分自身であり同じ、そういうけれどやはり違うのだ。ジェシカは、るりはではない。るりははあんな風に、己の愛を否定するような言い方なんかしない。
るりははもう。自分が愛した少女はもう、完全に。
「さて、最後の仕上げを始めましょうか」
唖然とする光をよそに、魔女は情け容赦なく宣言するのである。
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