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26話:互いの気持ちを感じるために 1
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ルナールが扉を閉じ、小屋から立ち去るとベートはヴィンスの方を見つけた。
「ヴィンス、身体の具合はどう?」
「ああ。出血も傷も浅いし、血も止まっている」
「でも、その……気を失ってたし、顔色も悪いし」
唇を尖らせ、ぽつぽつと呟くベートに対し、ヴィンスは深くため息を吐いて気まずそうに頬を掻いた。
「気を失っていたのは、こういう外傷については初めてだった事と、お前達の殺し合いを止められた事で張り詰めていた気が緩んだ事が原因だ」
「本当?」
念押しするようにベートは問いかけると、ヴィンスは小さく肩を竦めた後、濡れたように薄緑色の瞳でじっと見つめると、静かに顔を近づけた。
「そんなに顔近づけると……キスしちゃうかもしれない」
「そのつもりで、こうしている」
「ぅ……じゃあ、するからね」
一言告げると、強く目をとじガチガチに緊張しながら、自分の唇をヴィンスのものにをそっと重ねる。無理をさせないようベートが身体を支えようと腰に腕を回すと、自分の緊張を解そうとするように己の耳をふにふにと揉み始めた。
「ぁ……」
暖かく柔らかなヴィンスの指に触れられると、耳がポカポカと暖かくて気持ちが良い。ベートもまたヴィンスの指使いを真似るように耳にそっと触れると、甘く低い声が吹きかけられる。
「ベー……ト」
小さな声で名前を呼ばれると、誘い込むように唇が開かれる。ヴィンスの身体が放つ甘い香りは、ベートの持つ獣性と愛しさの両方を強く刺激させ、噛み付くように口付けた。
「ん、ふ――ぁっ」
舌の縁同士が擦り合わされると、背筋の裏からゾクゾクとした震えが奔る。自分の感じる悦楽を、ヴィンスにもまた感じてほしくて、舌の裏や表面を先端で舐めると、首筋に回されたヴィンスの指が小さく跳ね、そして首の裏に爪が刺さる。
「ん――」
キスを交わし合う事で感じる甘味をもっと味わいたくて、ヴィンスの口内を確かめるようにベートは自らの舌を動かし続けていると、微かに漏らした声が、ベートの舌を震わせた。
「ヴィンス、苦しかった?」
唇を離して問いかけると、ヴィンスは首を横に振った。少し頬を上気させたヴィンスの様子は、以前ワインを飲んだ時のようにフラフラとして頼りない。けれど何かを言いたそうに、時折じっと己の顔を見つめている。
「ヴィンス、どうしたの?」
ベートが問いかけると、ヴィンスは躊躇いながら口を開いた。
「その……ベート」
「うん、何?」
ヴィンスの呼びかけに、ベートはじっと瞳を見つめてヴィンスの言葉を待っていた。直向にこちらを見つめる金色の瞳に対し、ヴィンスは縋るようにこちらに視線を向けながら押し黙っていたが、覚悟を決めたようにベートの方へと顔を向けた。
「お前に……抱いて……欲しい」
「こう?」
ヴィンスに言われるが侭、ベートは腕を回して抱きしめた。ヴィンスが望んだ事のはずなのに、すぐさま片腕で強く押して抱擁を解くと不満そうに薄緑色の瞳で睨みつけた。
「お前が――最初に私にした方の、だ」
「で、でも。それって酷い事だし、今はヴィンス怪我してるし……」
「『キス』は、互いの好意を確かめる為の行為だと説明しただろう? それだけじゃ足りない。お前が私を好いている事を、もっと。深く。私の身体全部で確かめたいし――私の全てで、お前に伝えたい」
ぽふりとベッドに仰向けになって埋もれると、ヴィンスは無言で片手でシャツを脱ぎ始めた。手伝うようにベートが左手を伸ばすと、互いの手が触れあった。
視線を絡ませたまま、ベートはヴィンスの手に自分の手を重ねた。獣の右手をヴィンスの胸へとそっと置くと、少し早いリズムで打たれている心臓の音が伝わった。
「……ヴィン、ス」
耐えられなくなって小さく名前を呼ぶと、白く細い柳のような足がそっと持ち上がり、自分のズボンを押し上げている勃起した雄へと近づいた。
「っ、ぁ……う……」
何度か爪で雄を刺激され、先走りがズボンの生地を変色させる。じわじわと広がり続ける染みへと視線を向けたまま、ヴィンスは声を投げかけた。
「こっちはその気みたいだが?」
「う……」
自分を求めてくれる気持ちは、嬉しい。どんな風に自分を思ってくれるのかを、確かめたい。でも、それ以上にヴィンスを傷つけたくはない。どうすれば良いかを考えていると、ベートはある事を思い付いた。
「ねえヴィンス」
「何だ?」
「その……ヴィンスが嫌だったり無茶だったりしたら、ちゃんと止めるって約束してくれる?」
ベートの懇願が自分の体調を気遣うものである事に嬉しさを感じ、ヴィンスは小さく笑うとベートに対して首を縦に振った。
「ああ、約束しよう」
「ヴィンス、身体の具合はどう?」
「ああ。出血も傷も浅いし、血も止まっている」
「でも、その……気を失ってたし、顔色も悪いし」
唇を尖らせ、ぽつぽつと呟くベートに対し、ヴィンスは深くため息を吐いて気まずそうに頬を掻いた。
「気を失っていたのは、こういう外傷については初めてだった事と、お前達の殺し合いを止められた事で張り詰めていた気が緩んだ事が原因だ」
「本当?」
念押しするようにベートは問いかけると、ヴィンスは小さく肩を竦めた後、濡れたように薄緑色の瞳でじっと見つめると、静かに顔を近づけた。
「そんなに顔近づけると……キスしちゃうかもしれない」
「そのつもりで、こうしている」
「ぅ……じゃあ、するからね」
一言告げると、強く目をとじガチガチに緊張しながら、自分の唇をヴィンスのものにをそっと重ねる。無理をさせないようベートが身体を支えようと腰に腕を回すと、自分の緊張を解そうとするように己の耳をふにふにと揉み始めた。
「ぁ……」
暖かく柔らかなヴィンスの指に触れられると、耳がポカポカと暖かくて気持ちが良い。ベートもまたヴィンスの指使いを真似るように耳にそっと触れると、甘く低い声が吹きかけられる。
「ベー……ト」
小さな声で名前を呼ばれると、誘い込むように唇が開かれる。ヴィンスの身体が放つ甘い香りは、ベートの持つ獣性と愛しさの両方を強く刺激させ、噛み付くように口付けた。
「ん、ふ――ぁっ」
舌の縁同士が擦り合わされると、背筋の裏からゾクゾクとした震えが奔る。自分の感じる悦楽を、ヴィンスにもまた感じてほしくて、舌の裏や表面を先端で舐めると、首筋に回されたヴィンスの指が小さく跳ね、そして首の裏に爪が刺さる。
「ん――」
キスを交わし合う事で感じる甘味をもっと味わいたくて、ヴィンスの口内を確かめるようにベートは自らの舌を動かし続けていると、微かに漏らした声が、ベートの舌を震わせた。
「ヴィンス、苦しかった?」
唇を離して問いかけると、ヴィンスは首を横に振った。少し頬を上気させたヴィンスの様子は、以前ワインを飲んだ時のようにフラフラとして頼りない。けれど何かを言いたそうに、時折じっと己の顔を見つめている。
「ヴィンス、どうしたの?」
ベートが問いかけると、ヴィンスは躊躇いながら口を開いた。
「その……ベート」
「うん、何?」
ヴィンスの呼びかけに、ベートはじっと瞳を見つめてヴィンスの言葉を待っていた。直向にこちらを見つめる金色の瞳に対し、ヴィンスは縋るようにこちらに視線を向けながら押し黙っていたが、覚悟を決めたようにベートの方へと顔を向けた。
「お前に……抱いて……欲しい」
「こう?」
ヴィンスに言われるが侭、ベートは腕を回して抱きしめた。ヴィンスが望んだ事のはずなのに、すぐさま片腕で強く押して抱擁を解くと不満そうに薄緑色の瞳で睨みつけた。
「お前が――最初に私にした方の、だ」
「で、でも。それって酷い事だし、今はヴィンス怪我してるし……」
「『キス』は、互いの好意を確かめる為の行為だと説明しただろう? それだけじゃ足りない。お前が私を好いている事を、もっと。深く。私の身体全部で確かめたいし――私の全てで、お前に伝えたい」
ぽふりとベッドに仰向けになって埋もれると、ヴィンスは無言で片手でシャツを脱ぎ始めた。手伝うようにベートが左手を伸ばすと、互いの手が触れあった。
視線を絡ませたまま、ベートはヴィンスの手に自分の手を重ねた。獣の右手をヴィンスの胸へとそっと置くと、少し早いリズムで打たれている心臓の音が伝わった。
「……ヴィン、ス」
耐えられなくなって小さく名前を呼ぶと、白く細い柳のような足がそっと持ち上がり、自分のズボンを押し上げている勃起した雄へと近づいた。
「っ、ぁ……う……」
何度か爪で雄を刺激され、先走りがズボンの生地を変色させる。じわじわと広がり続ける染みへと視線を向けたまま、ヴィンスは声を投げかけた。
「こっちはその気みたいだが?」
「う……」
自分を求めてくれる気持ちは、嬉しい。どんな風に自分を思ってくれるのかを、確かめたい。でも、それ以上にヴィンスを傷つけたくはない。どうすれば良いかを考えていると、ベートはある事を思い付いた。
「ねえヴィンス」
「何だ?」
「その……ヴィンスが嫌だったり無茶だったりしたら、ちゃんと止めるって約束してくれる?」
ベートの懇願が自分の体調を気遣うものである事に嬉しさを感じ、ヴィンスは小さく笑うとベートに対して首を縦に振った。
「ああ、約束しよう」
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