毎日記念日小説

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9月12日 マラソンの日 九条独演会

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昨日のあれ、みんな話しやすかったなな?
テンポ速すぎたんじゃないかな?
さすがにあのテンポはないわとか思われてるんじゃないかな?
今日は、あまり焦らず、テンポを上げすぎず、いつも通りを意識しよう。
それで、周りが勝手に早くなっていったら、それに逆らうことはせず一緒にテンポを上げていこう。
そうだ。
そうしよう。
それが一番いい気がする。
今日の課題は『テンポ』
頭の隅に『テンポ』を。
『テンポ』、忘れないようにしよう。
『テンポ』について意識しながら、俺は『雑談部屋』に入っていった。






今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。


”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”

やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
AIはここを修正しないのだろうか?
やっぱ、修正しないかぁ。
修正してくれないかなぁ。
毎回同じこと思ってるなぁ。
ある意味、これがルーティーンみたいなところあるしなぁ。
そう考えると、意味があるのかなぁ?
意味、あったのかな…
このルーティーンやめようかな?
どうしよう。
でも、これをやめて、調子崩したら辛いから、続けるかぁ。
再びアナウンスが鳴った。


”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『マラソンの給水所』です。
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『九条様』『大久保様』『早川様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『マラソン』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”

アナウンスがやんで、光に包まれた。
マラソンか。
マラソンかぁ…
これも、『テンポ』が大事そうな話題だなぁ。
これなら、『テンポ』を忘れなさそうだなぁ。
それにしても、給水所ってしゃべっていてもいいものなのかな?
なんかちゃんと応援とかをしなきゃいけない場所なんじゃないのかな?
まぁ、再現のシチュエーションだし、大丈夫だろ。なんとかなるだろ。
何か、テーマ持って行こうかなぁ。
どうしようかなぁ。
でもなぁ、テーマを持って行って、それを話したいから、司会みたいなことをして、昨日みたいに『テンポ』が崩れそうなんだよなぁ。
今日は、テーマは持って行かなくていいかなぁ。
そこまで不安のある話題でもないし。
今日の方針を決めたところで、光が収まった。

給水所は、オリンピックとかで出てくるガチな感じじゃなくて、町のマラソン大会みたいなところだった。
紙コップに入れられた水が、所狭しと並んでいる奥に俺たちは立っていた。
最初に話し出したのは、早川。

「今日の話題は、『マラソン』ですね~。皆さんは、マラソンってされたことあります~?」

とても無難な立ち上がり。
突飛なことを言わずに自然と始まった。
一安心。
突飛な感じも楽しいけど、そっちだと『テンポ』が頭からすっぽり抜けそうだし、今日は無難な感じで良かったなぁ。
最初に反応したのは大久保。
九条、なんか静かだな。
いつもなら一番に叫んでいそうなのに。

「私は、フルマラソンは、ない。学校で、やらされた、町内の、ミニマラソン、なら、何回か、あるよ」

「分かります~。なんかやらされますよね~、町内のイベント的なマラソン~。私は、あれはあまり好きじゃなかったですね~」

なんとなく、九条が次に行かなさそうだったから、俺が話し出した。

「俺もそんな感じだな。冬の時期にそういうのをやってたから、マラソンのイメージが冬になってる」

「分かります~。熱中症対策なのか、冬に多いですよね~、マラソン大会~。寒さと、服の摩擦で、ちょっとかゆくなっちゃうんですよね~。それで嫌になるんですよね~」

早川さんの俺への反応が終わると、やっと苦情が話し出した。
今まで、溜めて溜めて一気に解放したような大声を出して話し出した。

「マラソン大好き!!!!!!!!!!!!!!!!マラソンって、すごい頑張ったって感じがして、めっちゃ好き!!!!限界を超えた感じとか!!一皮むけた感じもするし!!!!成長って感じるから好き!!!!!!!!!」

「九条君は、マラソンが大好きなんですね~。確かに、マラソンを走り切ったら達成感がすごそうですね~」

どうやら、九条は、マラソンが好きすぎて、逆にショートしていたらしい。
それから関を切ったかのように九条が怒涛の勢いで話し出した。
それから20数分、ほとんど九条のエピソードを聞いて終わった。
普段に輪をかけて、ハイテンションな九条。
その九条の話をみんな楽しく聞く。
自分でやる分には好きではないけど、見る分には別に嫌いではない。それが九条以外の三人の意見だったんだと思う。
九条のテンションが戻り始めたころ、アナウンスが鳴った。




”33分23秒33が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。



千里の道も一歩から。
日々積み重ねていくことが大切です。
一気に何かを成し遂げようとすると苦しいです。マラソンのように。
でもそれを日々の中で少しずつ行っていくと意外とあっさり達成できたりします。
今日も学びを積み重ねていくため、今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”

アナウンスが止んだ。

教室に戻ってきた
楽しかった。
今日は、雑談をしたという感じよりも、九条の話を聞いたみたいな感じだった。
でも、九条のハイテンションに充てられて、すごく楽しかった。
たまには、こういうすごい好きな人の話を聞くのも面白いかなぁ。
俺は、九条につられて、少しテンション高く次の授業の用意を始めた。



俺は、話を聞き入っていて『テンポ』については、すっかり忘れてしまっていた。
そのことに気が付いたのは、学校終わりの帰路に就いた時だった。
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