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壊すしかない。

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緑川は他の教師には話さなかったのか、特に職員室に呼ばれる事は無かった。

教室の奴らあれからは腫れものでも触るかの様に静かだ。

こちらから話掛けない限り、向こうから話しかけて来るのは萌子位だ。

「この教室に、田向良治って奴いるか?」

いきなり、2年生の森崎が教室に入ってきた。

「俺がそうだけど?」

「お前が…そうか? 哲也や石川に相当酷い事した様じゃないか?」

「それは」

「何でお前話しているんだ? 今は俺が話しているんだろうがぁぁぁーーあん」

「…」

此奴、俺に話させないつもりか?

「まぁ、良い、石川から話は聞いた、お前、放課後裏庭に来い、解ったな」

「先輩に関わりたくないから逃げますよ」

「逃げたら、萌子ちゃんが犠牲になるかもな?」

石川が…俺が萌子と付き合っている事話したのか?

金が無いと聞いたから手加減しようと思ったが…チクったんならもう手加減の必要はないな。

「仕方がない…行きますよ」

「そうそう、人間素直じゃなくちゃな? なぁに素直になるなら殺さないよ、俺は優しいからな」

卑怯な方法取りやがって…笑えるな。

馬鹿な奴、萌子はこの教室に居る。

俺が同じ方法をとるなら、まず女は抑える…そして犯した後にボコる。

その状態から交渉する…そうすれば相手に怖さを伝えられるし『危ない奴』だと相手に認識させられる。

馬鹿な奴だ(笑)

「悪い、萌子、今日は1人で帰ってくれ」

「良治大丈夫?」

「萌子が捕まらなければ、俺は負けねーから、大丈夫だ」

「そう、それなら平気だね」

俺は万が一に備えて、萌子を早退させた。

門まで送っていったから大丈夫だろう。

◆◆◆

放課後になった。

俺は1人で裏庭に行った。

正確には裏庭の物置小屋の中だ。

森崎がそこで待っていた。

此奴、なんで一人なんだ?

最低でも三人はいると思っていたが。

「お前さぁ、喧嘩は仕方ねーにしろ、武器は駄目だろうが」

「先輩、相手は3人ですよ…どっちが卑怯なんだか」

「あん、何口答えしてんの? それを決めるのは俺、お前じゃねーよ!」

「ハイハイ、で、俺は何をすれば良いんですか? グハッ」

此奴いきなり腹を殴ってきやがった。

「何で俺が一人で来たか解るか? お前がそう言う事を言うと思ったからよ…だから一人なんだよ…取り敢えずは半殺しだ」

「グ八ッ うえええーーっ」

「オラ、オラ…どうだ? 俺は格闘技を幾つか習っているからな、卑怯な事しなくても強ぇぇぇんだよ」

糞っ、此の体弱ぇぇな。

ちょっと腹を殴られた位で吐くなんて。

「すいません」

「なんだ、お前ぇ、石川が恐ろしく強いって言っていたが..弱ぇぇじゃん、オラよぉぉーーっ」

吐いて蹲ったら蹴りかよ。

案外えげつがねーな…痛てぇーな。

この馬鹿が絡んで来なければ、今日は石川から集金してまた萌子とホテルにしけこむつもりだったのによーーっ。

まぁ良い、喧嘩は勝てば良いんだ。

「森崎先輩…ハァハァ勘弁してくだ…さい」

「もう詫びいれるんかぁーーっあん、だが止めねーよ」

「グハッ、ハァハァもう勘弁してください…」

「いあや、まだだ、だが詫びる気があるなら土下座しろ…土下座」

「解りました…」

俺は森崎の前で土下座した。

「最初から、素直に謝れば良いんだよ…根性無しが ぺっ」

汚ねーな唾かけやがった。

「すみません」

俺は隠し持っていたカイザーナックルで目の前の膝の皿を殴った。

思いっきり…

「ぎゃぁぁぁーーっ、貴様ぁぁぁ卑怯だぞハァハァ」

俺は手を緩めない。

そのまましがみ付き、左膝の皿から脛迄力いっぱい殴った。

「ハァハァハァ」

「ぎゃぁぁぁぁーーっ離せ、話せよーーーーっ」

此奴は空手をはじめ幾つかの格闘技を習っている。

だから…壊すしかない。

そうしないと…次は負ける。

本当なら殺してしまうのが一番良いが…流石にそれは不味い。

『だから、弱くした』

膝の皿から脛迄力強く殴った。

ここ迄すれば、もう終わりだ。

現実は漫画や小説と違う。

此奴はこれで暫くはギブス生活…そして多分、障害は残る。

もう此奴は怖くない。

治ってもローキック1発で倒せる。

「ハァハァ、離してやるよ」

俺の腕を振りほどいたと同時に森崎はその場で倒れ込んだ。

「痛ぇぇぇぇl――っ」

「馬鹿みたいだ…大物ぶるからこうなるんだよ、先輩…もうあんた、スクラップだよ。そこまで壊せばもう、真面に格闘技なんかできねーな、終わりだ」

「田向――っ、貴様ぁぁぁーー殺うんぐっ?」

「そう言う事は言わねー方が良いのにな、俺は小刀を横にして口に入れ少しだけ引いた」

森崎の口がほんの僅かだが裂けた。

「いはいぇぇぇぇーーつ、おうえの口がぁぁぁーーっ」

「馬鹿だな、そんなに暴れるから、手元が狂って結構裂けたし、舌も切っただろうが、まぁ自業自得だ」

「そうな..」

「先輩、もう片足は真面に下手したら生涯動かねー、詫びるなら今がチャンスですよ、もう先輩は1年の女子にすら勝てない位弱いんすから….先輩、俺に謝った方が良いんじゃねーか」

「すまない」

「先輩、それじゃ駄目だろう? 先輩が言ったように土下座だよ土下座」

「足が、痛くてハァハァ無理だ…」

「知らねーよ」

俺は、森崎の近くまで行くと、耳を少しだけ切った。

ミチっ。

「あああっ、耳が耳が…俺の耳―――っ」

「少し切れ込みを入れただけですよ…先輩、今の所問題はないですが..この状態で思いっきり引くと簡単に耳が千切れるんだぜ」

「止めて、止めてくれ」

「あのさぁ、先輩どう言う風に聞いたから知らねーけど、元は彼奴らが俺を虐めて金をとったんだぜ…それは誰に聞いても知っている、今の俺は返済して貰っているだけだ、それで誰が悪いんだ? 教えてくれよ..」

「俺は知らなかったんだ、ハァハァ」

「な.ら.ば….口を挟むべきじゃ無かったな…それでさぁ…石川が悪いって言うのは解かったんだよな? 今度から石川の返済が遅れたら、森崎先輩が払えよ」

「何で俺が…ハァハァ」

「だって先輩、石川の仲間なんだよな…なら仕方ねーじゃん」

そう言いながら俺は森崎の足を踏んだ…

「いたっぎゃぁぁぁぁーーっ」

「先輩、よろしくな」

石川…本当にムカつく。

折角、手心加えてやったのによ…





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