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第4章 婚約の行方

42.思わぬ方向

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 私は黒い宝石と差し替えるように魔法で作った偽物を箱に入れる。そしてまた錠を閉じて元の位置へと戻した。そしてリヒト様に魔鳥を送る。

ーアリアに箱の中身を気づかれる前に王宮を出なければならない

 しかし、あまりにも不自然だと疑われてしまう。その為に私はクロード・メイナードとして事前に王宮に手紙を送っていた。内容は至って簡単でクロリ・メイナードに縁談が来たため急いで屋敷に戻って欲しいというものだ。

 手紙は今日中に届くだろうが、後は明日の出立までにアリアに箱の中身を気づかせないことだ。アリアも魔道具を使う機会は聖女の祝宴まではないだろう。とにかく明日まで持たせればこちらの勝利である。

 私は黒い宝石を隠し持つといつものように侍女として仕えた。素知らぬ顔で働きながらクロード・メイナードからの手紙を開け、アリアに明日の朝、王都を出ることを伝えた。

「クロリ!貴女来たばかりなのにもう故郷に帰るというの?」
「ええ、アリア様。誠に申し訳ないのですが明日の朝には出発致します。」
「ふーん、お相手は?」

 アリアが私に聞いてくるのは想定外だったがこちらも上手くはぐらかす。

「さあ、お兄様の決めた相手でしょうから私にも分かりません」
「…貴女それでいいの?兄に振り回されてしたくもない縁談を受けて」
「え?」
「好きな殿方に嫁ぎたいとは思わないの?」

 何だかよく分からない話の方向へ向かおうとしている。私はただノースジブルに帰りたいだけだというのに。

「…私は平民として生きてきたのに子爵家として令嬢として受け入れてくれたメイナード家に恩返ししたいだけですから」

 適当な言葉を並べたのがアリアにとって逆効果だった。

「そんなのクロリの意思じゃないじゃない!」
「え?」
「私から貴女のお兄様に言ってやるわ!結婚する相手くらいこちらが決めるとね!」
「…アリア様、私はいいのです!」
「クロード・メイナードを王都へ呼びなさい!私がクロリの代わりに言ってやるわ!」

 私の意見を無視して目の前の人物はクロリ・メイナードの行く末のために侍女にクロード・メイナードを呼び出すように伝えたのである。

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