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第4章 婚約の行方
40.計画の行方
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クロリ・メイナードとしてアリアの侍女になって数日が経っていた。アリアの侍女になると言った時、彼女はクリス王子に勝手に侍女を決められたのが嫌で癇癪を起こしていたが、好きなドレスを買ってやると宥められると私を受け入れた。暫くアリアの様子を見ているとこんな言葉が思い浮かぶ。
ー王国の金食い虫
特に最近では聖女の祝宴のための準備費に莫大な金を使っている。なんせ、自身の色直しは10回も予定しているのだからドレス代だけでも相当なものだろう。それに加え侍女への扱いは思ったよりも酷い。皆、それなりに位のある令嬢達だ。それに対してこの扱いでは悪評は流れるばかりだろう。
ーしかし、今回の計画はよりアリアと親密にならなければならない
重たい腰をあげながらも私は彼女に近づいた。アリアは何でも肯定してくれる侍女が好きで皆が彼女の言いなりだった。そこであえて私はこの間、反対の行動を取ったのである。あれは聖女の祝宴のドレス選びで悩んでいた時のことだった。
「うーん、どれがいいかしら」
王都の評判の良い職人達を呼び寄せ、色とりどりの最新の流行りもののドレスが部屋中に飾られていた。
「ねえ、貴女から見てこれはどうかしら?」
アリアは一人の侍女に問いかけると侍女はびくついたように肩を震わせた。
「と、とても…素敵です!…あ…アリア様は何でもお似合いですから」
侍女がそう言うとアリアはその侍女の足を思いっきり踏んだ。侍女は痛みを絶えるように歯を食いしばっていた。
「そういうことじゃないのよ?…貴女全然分かってないわね」
私はその侍女を庇うように前に出るとアリアに向かって口を開いた。
「恐れながら、私から申しあげても?」
「貴女は…この間の新しい侍女ね。」
アリアは私を見ると周りを一回りしてから値踏みするようにこちらを見ていた。暫くすると「いいわ、言ってみなさい」と高飛車に呟いた。
「それでは私から。今、アリア様がお持ちになっているドレスですが、はっきりと申しあげますとお似合いになりません」
辺りに静寂が広がる。他の侍女達は張り詰めたように私の顔を見ていた。
「…なぜそう思うの?」
静寂を裂いたのはアリアだった。アリアが怒らずにこちらに興味を持った隙を狙う。
「恐れながらアリア様の肌は少し黄色味がありますから薄い紫よりも赤や濃い緑のドレスのお色のほうが良く映えます。それに古代から赤は幸運や繁栄、それに祝祭の意味合いもあります。この度のドレスは民衆の前での挨拶時のものですからそういった古来からの意味合いも大事にされると民からの好感度も高くなるかと」
私がそう述べるとアリアは赤色のドレスを肌に当てて納得したようにこちらを見た。
「貴女、ノースジブル領から来たからセンスが心配だったけれど、他の侍女と違ってとてもいいわ。そういえばまだ名前を聞いてなかったわね」
私は向き直り自身の偽りの名前を口にした。それからというもの何かとあれば彼女はクロリを指名してくるようになった。そして今日も部屋へと呼ばれ向かう最中だ。部屋に着くとアリアの声が響いた。
「クロリ!遅いじゃない!他の侍女はグズばっかりでお陰で髪型が決まらなくて大変なのよ!」
相変わらずしょうもないことで腹を立てていた。私は態度に出ないように微笑みを保っていた。
「アリア様、今日は私にお任せを」
私はアリアの髪を梳かし髪を結うと満足そうにしていた。すると、アリアは思い出したように「あ!」と口にした。
「この髪型ならあの耳飾りが良いのに殿下の所に置いてきてしまったわ」
アリアは侍女に取ってくるように命令したが命令した瞬間、取り消して自分で取りに行くと行って部屋を後にした。侍女達が「同行します」と申し出たが「いらない」とだけ言って部屋を後にした。
部屋には侍女だけが残されると一人の侍女が慌てたように瞳を動かしていた。聞けばアリアが必ずティータイムに飲む茶葉を切らしていたらしい。それを聞くと私は「早馬車なら間に合うから今のうちに」と告げ、彼女を部屋から出した。他の侍女にも「殿下の部屋に行ったなら暫く戻ってこない筈だし休憩していらっしゃい。もしアリア様が戻ってきたら私から弁解する」と言ってアリアの部屋に一人残った。
部屋に自分しかいないのを確認すると部屋の錠を閉じ、誰かが近づけば分かるように感知魔法を仕掛ける。私はアリアの部屋の中から魔道具を探し続けるとアリアの寝台の下から黒く厳重に鍵のかかった箱を見つけた。かなり錠がかかっているが解除魔法でどうにかなるかと試しすと一つの鍵が外れた。
そしてまた一つと鍵を外していき、最後の錠が外れそうになった時、感知魔法に誰かがかかった。私は咄嗟に箱を隠すと、扉が開かれた。
ー王国の金食い虫
特に最近では聖女の祝宴のための準備費に莫大な金を使っている。なんせ、自身の色直しは10回も予定しているのだからドレス代だけでも相当なものだろう。それに加え侍女への扱いは思ったよりも酷い。皆、それなりに位のある令嬢達だ。それに対してこの扱いでは悪評は流れるばかりだろう。
ーしかし、今回の計画はよりアリアと親密にならなければならない
重たい腰をあげながらも私は彼女に近づいた。アリアは何でも肯定してくれる侍女が好きで皆が彼女の言いなりだった。そこであえて私はこの間、反対の行動を取ったのである。あれは聖女の祝宴のドレス選びで悩んでいた時のことだった。
「うーん、どれがいいかしら」
王都の評判の良い職人達を呼び寄せ、色とりどりの最新の流行りもののドレスが部屋中に飾られていた。
「ねえ、貴女から見てこれはどうかしら?」
アリアは一人の侍女に問いかけると侍女はびくついたように肩を震わせた。
「と、とても…素敵です!…あ…アリア様は何でもお似合いですから」
侍女がそう言うとアリアはその侍女の足を思いっきり踏んだ。侍女は痛みを絶えるように歯を食いしばっていた。
「そういうことじゃないのよ?…貴女全然分かってないわね」
私はその侍女を庇うように前に出るとアリアに向かって口を開いた。
「恐れながら、私から申しあげても?」
「貴女は…この間の新しい侍女ね。」
アリアは私を見ると周りを一回りしてから値踏みするようにこちらを見ていた。暫くすると「いいわ、言ってみなさい」と高飛車に呟いた。
「それでは私から。今、アリア様がお持ちになっているドレスですが、はっきりと申しあげますとお似合いになりません」
辺りに静寂が広がる。他の侍女達は張り詰めたように私の顔を見ていた。
「…なぜそう思うの?」
静寂を裂いたのはアリアだった。アリアが怒らずにこちらに興味を持った隙を狙う。
「恐れながらアリア様の肌は少し黄色味がありますから薄い紫よりも赤や濃い緑のドレスのお色のほうが良く映えます。それに古代から赤は幸運や繁栄、それに祝祭の意味合いもあります。この度のドレスは民衆の前での挨拶時のものですからそういった古来からの意味合いも大事にされると民からの好感度も高くなるかと」
私がそう述べるとアリアは赤色のドレスを肌に当てて納得したようにこちらを見た。
「貴女、ノースジブル領から来たからセンスが心配だったけれど、他の侍女と違ってとてもいいわ。そういえばまだ名前を聞いてなかったわね」
私は向き直り自身の偽りの名前を口にした。それからというもの何かとあれば彼女はクロリを指名してくるようになった。そして今日も部屋へと呼ばれ向かう最中だ。部屋に着くとアリアの声が響いた。
「クロリ!遅いじゃない!他の侍女はグズばっかりでお陰で髪型が決まらなくて大変なのよ!」
相変わらずしょうもないことで腹を立てていた。私は態度に出ないように微笑みを保っていた。
「アリア様、今日は私にお任せを」
私はアリアの髪を梳かし髪を結うと満足そうにしていた。すると、アリアは思い出したように「あ!」と口にした。
「この髪型ならあの耳飾りが良いのに殿下の所に置いてきてしまったわ」
アリアは侍女に取ってくるように命令したが命令した瞬間、取り消して自分で取りに行くと行って部屋を後にした。侍女達が「同行します」と申し出たが「いらない」とだけ言って部屋を後にした。
部屋には侍女だけが残されると一人の侍女が慌てたように瞳を動かしていた。聞けばアリアが必ずティータイムに飲む茶葉を切らしていたらしい。それを聞くと私は「早馬車なら間に合うから今のうちに」と告げ、彼女を部屋から出した。他の侍女にも「殿下の部屋に行ったなら暫く戻ってこない筈だし休憩していらっしゃい。もしアリア様が戻ってきたら私から弁解する」と言ってアリアの部屋に一人残った。
部屋に自分しかいないのを確認すると部屋の錠を閉じ、誰かが近づけば分かるように感知魔法を仕掛ける。私はアリアの部屋の中から魔道具を探し続けるとアリアの寝台の下から黒く厳重に鍵のかかった箱を見つけた。かなり錠がかかっているが解除魔法でどうにかなるかと試しすと一つの鍵が外れた。
そしてまた一つと鍵を外していき、最後の錠が外れそうになった時、感知魔法に誰かがかかった。私は咄嗟に箱を隠すと、扉が開かれた。
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