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6章
(15)孤軍奮闘
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クライヴの偽物がシャルに暴かれる、数時間前のこと。
「――では、手筈通りに」
クライヴの声を真似た男はロッシュに向けて深々とお辞儀し、ギルドの窓を破って外へ飛び出していった。続いて、室内の衛兵がわざとらしく声を張り上げ、ギルドの外からわらわらと衛兵たちが現れる。
直後、別人に変声したリョーホの指示が響き渡り、特徴的な『流星』の金切り音が広場から東門へと遠ざかっていった。
一連の騒動が止んだ後、ロッシュは傍らの衛兵を見下ろした。
「……この者を牢屋へ」
「はっ」
ずるり、と複数の衛兵が血だまりから本物のクライヴを引きずり出す。クライヴは乱雑に運ばれていくのを感じながら、血で濡れた目を拭おうと、緩慢な瞬きを繰り返していた。
カミケン直属の精鋭狩人とあろうものが、ロッシュに近づくことすらできなかった。
至近距離から『響音』の超音波を浴びた途端、クライヴの天地は反転した。頭の奥から風船が割れるような音がしたと思えば、すでに身体は血だまりに沈んでいたのだ。
視界は涙腺から溢れた血で全く機能せず、鼻の中は濃密な鉄臭さで濡れている。聴覚も水中のようにくぐもっており、米神から顎の付け根まで長い針を突き込まれたようだ。もはや、狩人として復帰することすら危ぶまれる重傷だった。
瞬きを繰り返すたび、ページを抜いたようにクライヴの意識は飛び続けた。担がれていると思えば、床を引きずられ、夜風が吹き付けると、硬い石床に転がされた。重い鉄格子が外枠に叩きつけられる音がして、ようやっとここが牢屋であると知れた。
衛兵の足音が遠ざかり、監獄内に完全な静寂が訪れる。
クライヴは慎重に気配を探り、縛られた手足でどうにか正座の体勢をとった。両手を足首へ伸ばし、靴の裏に仕込んでいた『雷光』の短剣を引き抜く。刃に触れた途端、治癒の力が発動し、頭部の出血がぴたりと止まった。目の奥はまだ突き刺すような痛みが残っていたが、時期に回復するだろう。
のろのろと手足の縄を切り、喉に滞留した血で咳き込みながら床に倒れる。かなり思考能力が落ちており、指が思うように動かない。潜入捜査に失敗したスキュリアの狩人たちも、この後遺症のために脱出が叶わなかったのだろう。
とはいえ、『雷光』の短剣をもってすれば軽傷となる。全く、エラムラの英雄サマサマだ。
クライヴは片頬で笑いながら『雷光』の短剣を持ち直し、傷口よりも明らかに回復が遅い神経の再生をじっと待った。だが、完治させるまでの時間は残されていないだろう。
今頃は、偽物のクライヴがリョーホと合流しているはず。しかも偽物には地獄耳の鈴を持たされているだろうから、機密をべらべら喋られては目も当てられぬ事態になる。できるだけ早く、偽物を止め、鈴を破壊しなければ。
十分ほどかけて、ようやく耳鳴りが収まってきた。ここまで来れば歩行にも支障はなく、いま少し時間を使えばギリギリ走れそうだ。
クライヴは改めて牢屋の外に人がいないのを確認し、喉の奥に指を突っ込んだ。
血と唾液を吐き出すと、口腔の最奥に隠していた銀色の鈴が転がり出てくる。それは汚れてもなお輝きを失わず、深くはっきりと刻まれた菌糸模様が浅く拍動していた。
この銀色の鈴と、偽物と思しきロッシュの『響音』は共鳴しなかった。ロッシュがあえて手を抜いたのか、それとも鈴の存在に気付かなかったのか。
ともかく脱出しなければ話にならない。せめてこの鈴だけでも仲間に預けなければ、死んでも死に切れない。
クライヴは銀色の鈴を鷲掴み、大きく息を吸い込んでから、再び喉の奥へ押し込んだ。
「死なない限り、任務は失敗ではない……!」
カミケンから教わった不屈の精神を滾らせ、クライヴは牢屋の鍵に飛びついた。
爪の間に隠してあった針金を親指で押し出し、錠前の穴へ手探りで差し込む。何度か内部の凹みを押し上げれば、ものの数分で錠前は外れた。
肩口で押すようにして牢屋の扉を開ける。素早く通路の左右を見渡し、巡回がいないことを視認する。
牢に窓がないのなら、現在地は地下で確定。目指すは上に続く階段だ。
「あ……あんたさっきまで、死にかけてたはずじゃあ……」
隣室の囚人がクライヴの姿を見てギョッとしていたが、無視して階段を駆け上がる。何度かつま先が速度に追いつかずに蹴躓いたが、なんとか地上まで上りきった。
階段の先には鉄格子の門と、狭い通路が一直線に続いていた。通路横には広々とした部屋があり、衛兵たちの休憩室のようだ。
舌打ちを飲み込みながら、クライヴは階段と通路を隔てる門へと近づく。鉄格子の隙間から外側に触れてみると、やはりご丁寧にも錠前がかけられていた。
さっきのようにピッキングしてもいいが、休憩所と門の位置が近すぎる。悠長に鍵を開けている場合ではない。
クライヴは一旦距離を取り、『雷光』の短剣を手のひらで押すようにして錠前と門の接合部を貫いた。ドラゴンの鱗を加工して作られたであろう錠前は、普通の鉄よりも頑丈だった。だが、骨が痺れるような衝撃を残して、錠前は氷のように砕け散った。
騒々しい金属音が響き渡り、休憩室から三人の衛兵が飛び出してくる。クライヴは門を押し開け、そのまま一人目の衛兵へ正拳突きを放った。不意をつかれた衛兵は鳩尾に直撃を受け、夕飯を吐きながら気絶した。
続く二人目。クライヴの背後に回り込もうとした衛兵の足を、素早く爪先で掬い上げる。二人目は珍妙な悲鳴をあげながら転び、無防備な背中を曝け出した。その背に渾身の踵下ろしを放ち、念の為に後頭部を殴りつける。多分死んではいまい。
最後の一人。クライヴが息を乱しながら振り返った先には、年若い衛兵が、悲鳴のような雄叫びを上げて剣を振りかぶっていた。
「うあああああ!」
戦い慣れていない、まだ守護狩人になって間もない子供だろう。クライヴは冷静に斬撃の軌道を読み、左から肘で剣をへし折った。
「え!? 嘘だろ!?」
「餓鬼は寝てろ」
呆然とする衛兵の腕を引っ張り、首元に拳を叩き込む。若い衛兵は泡を吹きながら、白目を剥いて気絶した。
直に増援が来る。その前に外に出なければ。
「……くっ!」
クライヴは『迷彩』を発動するも、すぐに能力の揺らぎに気づいた。まだ回復しきっていない身体では、菌糸に上手く指示を出せないらしい。ところどころ『迷彩』がほつれ、ガラス細工のようにクライヴの輪郭が浮かび上がっていた。
菌糸の回復を待つ時間はない。こうしている間にも、仲間の情報がロッシュに抜き取られている。
クライヴは逡巡するまでもなく、即座に監獄から飛び出した。
監獄の出入り口は隠れる場所がないほど開けていた。エラムラの南側、しかも外壁沿いに位置しているため、すり鉢状に広がるエラムラの里を一望できる。民が暮らす区画より明らかに建物が少なく、身を隠すための木々もない。
背後を振り返れば、白い煉瓦作りの監獄と、外壁と同化した堅牢な物見台が立っていた。
監獄から東門までの距離はかなりある。ボロボロの身体で隠れながら進もうものなら、およそ十五分はかかる目算だ。その間、衛兵に見つからずに移動できるとは限らない。ロッシュの『響音』は、どんな音も聞き逃さないのだから。
しかし、それにしては衛兵の動きが遅い。通常なら、錠前を破壊した時点で衛兵が殺到してくるはずなのだが。
クライヴは住宅街へと移動しながら物見台を振り返る。談笑する衛兵の姿がちらりと見えた。
――気づかれていない?
猛烈な違和感が喉まで迫り上がるが、堪えて脱出を優先する。住宅街の入り組んだ道を抜け、広場を迂回するように東門へ歩を進める。
まだ発見されていないという余裕のせいか、頭の片隅で勝手に思考が回り続ける。
クライヴがギルドに侵入したといち早く気づいたのは、他ならぬロッシュだった。そして、クライヴを捕らえるなり即座に偽物を用意できたのも、どこかでクライヴたちの計画を盗み聞いていたが故だと思っていた。
ならばなぜ、クライヴの脱走に気づかない。気づいていながら放置しているのか? いいやありえない。
エラムラの守護者たるロッシュは、四六時中『響音』を用いて、里の警部に当たるような狂人だ。里を危険に晒す可能性があるだけでも、過剰に監視をつける徹底ぶりだった。今更、クライヴを見逃すメリットは皆無である。
「おい、あそこに誰かいるぞ!」
自問自答を繰り返している間に、近くの外壁から衛兵の叫び声が響き渡った。ついに見つかってしまった。しかし、脱獄囚を見つけたとは思えない抽象的な物言いだ。
やはり何かがおかしい。
無意識に『雷光』の短剣を構えながら、より入り組んだ道を選ぶ。この角を曲がれば東門は目前だ。
ひゅん、と刃物を振り抜く音がして、咄嗟に曲がり角から頭を引っ込める。直後、先ほどまで立っていた場所に深々と薙刀が突き刺さった。
石畳が砕け散るほどの重い攻撃に、クライヴは小さく生唾を飲む。そして曲がり角から、ぬっと大きな影が現れた。
「エラムラの狩人を舐めるなよ。侵入者め」
ドスを効かせながらクライヴを睨みつけてきたのは、数日前、バルド村救助隊に参加していた熟練の守護狩人であった。
いかに対人戦に特化したクライヴであっても、死戦を潜り抜けた守護狩人相手では『迷彩』も焼石に水だ。真っ向から戦おうものなら、互いに出血は免れないだろう。
オラガイア同盟がある手前、クライヴはエラムラの狩人を殺すわけにはいかなかった。しかし、背後からも続々と増援が押し寄せ、まもなく挟み撃ちにされる。戦う以外に道はない。
せめて死体だけでもエラムラの外に。
喉奥に隠した銀色を思いながら、クライヴは短剣を握り直した。
瞬間、真上から眩い光が駆け抜ける。その場にいた狩人たちは信号弾と見誤り、縫い止められたように足を止めた。
光を見て動いたのはクライヴだけだった。
「なっ」
守護狩人のすぐ側で、わざと『迷彩』の効力を消す。一気にクライヴの気配が大きくなり、守護狩人は反射的に薙刀を下から上へと振るった。
人は予想外のことが起きれば、身に染みた動作を必ず取る。優れた狩人ほど、攻撃に移るのも早かった。
全ての動作を完璧に予測していたクライヴは、軽々と薙刀を足場にし、夜空へ跳躍した。向かう先は発光源たる『流星』だ。
限界まで腕を伸ばす。だが、あと数センチというところで浮遊感がはらわたを鷲掴みにする。
届かない。
直後、叩くような勢いで、クライヴの手が相棒に掴み取られた。
「ぐぅぅぅおりゃああああ!」
シュレイブは空中で『流星』の軌道を変え、一気に東側の外壁へと飛翔する。
外壁の外側には『腐食』の巫女の結界がある。このまま突っ込んでは身体が塵となってしまう。
目を見開きながら、クライヴはシュレイブの胸ぐらを掴んだ。だが、二人は『腐食』に呑まれることなく、無事にエラムラの外を飛んでいた。
「な……」
「レブナが巫女様に直接頼んでおいたのだ! 流星が見えるまで結界を解除しておいてくれとな!」
先に言え、と叫びたかったが、口を開いたら銀色の鈴が飛んでいってしまいそうでとっさに黙り込む。シュレイブはクライヴの鬼の形相に気づくと愉快そうに声を上げて笑った。
傍目では目立つ『流星』を切り止め、東門から少し離れた森へと着陸する。そこにはレオハニーが待機しており、他の面々は見当たらない。どうやらクライヴの救助に任命されたのはシュレイブとレオハニーのみで、他は別行動をとっているようだった。
「いっ!」
最後の最後でシュレイブがしくじり、クライヴは尻から地面に降ろされた。
「あ、ごめんクライヴ」
「お前な……」
「――無事かい。クライヴ」
目の前に、最強の討滅者の手が差し出される。生涯訪れぬだろうと思っていた憧れの光景に、クライヴは一瞬頭が真っ白になった。遅れて、物語に飛び込んだかのような高揚感が、つま先から頭のてっぺんまで広がった。
はっと苦笑気味のため息をついて、できるだけ事務的に最強の手を取る。
「流石、仕事が早いようで脱帽です」
「助けられた身でなんだその態度はぁ!」
シュレイブから叱責を喰らいながら、クライヴはレオハニーに身を任せるようにして立ち上がった。エラムラの狩人に殺されかけ、バルド村の狩人に救われるのはおかしな気分だ。どちらもスキュリア陣営にとっては宿敵だったというのに。
クライヴは自主的にレオハニーと交わした手を話すと、ここに来てずっと疑問だったことを口にした。
「なぜ合流した男が偽物だと分かったのですか、レオハニー様」
これほどの速さで救助が来たということは、誰かがクライヴの偽物に気づいた以外にありえない。だが、クライヴが見た偽物はかなり精巧であった。意識を失っていたせいで肝心の変装する瞬間を見逃してしまったが、一目見ただけで自分の幽霊を見てしまったような、言い表せない不気味さに襲われた。
リョーホが魂を見破ったのか。それとも最強故の勘が働いたのか。
クライヴの問いに、レオハニーは心なしか得意げに答えた。
「気づいたのはシュレイブだ。覚えたてのバルド村式のハンドサインを使いながら、必死に平静を取り繕っていたよ」
「し、仕方ないだろう。合図がバレたら、今度こそ俺たちは終わりだと絶望していたんだぞ!」
顔を真っ赤にしながらシュレイブは憤慨する。昔から嘘をつくのが苦手なこの男にとって、敵の前で堂々と密告するのはかなりの苦役だったろう。敵が工作慣れしていない素人で大変助かった。
それにしても。
「気づくのが早すぎるだろう」
「お前は必ず任務をやり遂げる男だ。命惜しさにおめおめ逃げ帰るほど薄っぺらい誇りではない。だろう?」
自信満々に断言され、クライヴはほんのひと時だけ声を忘れた。
「……帰ったら、カミケン様にお前の事を自慢してやる」
「うむ! 心ゆくまで語ってくれ!」
もう何も言うまい。クライヴはシュレイブに背を向けながら人知れず笑みをこぼし、大きく背筋を伸ばしながらレオハニーへ向き直った。
「それで、この後はどうするんです? レオハニー様」
「先程の騒ぎで、今頃は広場に人が集められているはずだ。そこでロッシュの秘密を暴き、エラムラを正す」
「たった一晩で?」
「可能だよ。君が命懸けで持ち帰った、その鈴があれば」
夜闇を散らすほどの赤い瞳が、クライヴの喉仏へと注がれる。最強にはベアルドルフの瞳がなくとも全てお見通しだったようだ。改めて彼女が味方で良かったと、クライヴは心の底から胸を撫で下ろした。
「――では、手筈通りに」
クライヴの声を真似た男はロッシュに向けて深々とお辞儀し、ギルドの窓を破って外へ飛び出していった。続いて、室内の衛兵がわざとらしく声を張り上げ、ギルドの外からわらわらと衛兵たちが現れる。
直後、別人に変声したリョーホの指示が響き渡り、特徴的な『流星』の金切り音が広場から東門へと遠ざかっていった。
一連の騒動が止んだ後、ロッシュは傍らの衛兵を見下ろした。
「……この者を牢屋へ」
「はっ」
ずるり、と複数の衛兵が血だまりから本物のクライヴを引きずり出す。クライヴは乱雑に運ばれていくのを感じながら、血で濡れた目を拭おうと、緩慢な瞬きを繰り返していた。
カミケン直属の精鋭狩人とあろうものが、ロッシュに近づくことすらできなかった。
至近距離から『響音』の超音波を浴びた途端、クライヴの天地は反転した。頭の奥から風船が割れるような音がしたと思えば、すでに身体は血だまりに沈んでいたのだ。
視界は涙腺から溢れた血で全く機能せず、鼻の中は濃密な鉄臭さで濡れている。聴覚も水中のようにくぐもっており、米神から顎の付け根まで長い針を突き込まれたようだ。もはや、狩人として復帰することすら危ぶまれる重傷だった。
瞬きを繰り返すたび、ページを抜いたようにクライヴの意識は飛び続けた。担がれていると思えば、床を引きずられ、夜風が吹き付けると、硬い石床に転がされた。重い鉄格子が外枠に叩きつけられる音がして、ようやっとここが牢屋であると知れた。
衛兵の足音が遠ざかり、監獄内に完全な静寂が訪れる。
クライヴは慎重に気配を探り、縛られた手足でどうにか正座の体勢をとった。両手を足首へ伸ばし、靴の裏に仕込んでいた『雷光』の短剣を引き抜く。刃に触れた途端、治癒の力が発動し、頭部の出血がぴたりと止まった。目の奥はまだ突き刺すような痛みが残っていたが、時期に回復するだろう。
のろのろと手足の縄を切り、喉に滞留した血で咳き込みながら床に倒れる。かなり思考能力が落ちており、指が思うように動かない。潜入捜査に失敗したスキュリアの狩人たちも、この後遺症のために脱出が叶わなかったのだろう。
とはいえ、『雷光』の短剣をもってすれば軽傷となる。全く、エラムラの英雄サマサマだ。
クライヴは片頬で笑いながら『雷光』の短剣を持ち直し、傷口よりも明らかに回復が遅い神経の再生をじっと待った。だが、完治させるまでの時間は残されていないだろう。
今頃は、偽物のクライヴがリョーホと合流しているはず。しかも偽物には地獄耳の鈴を持たされているだろうから、機密をべらべら喋られては目も当てられぬ事態になる。できるだけ早く、偽物を止め、鈴を破壊しなければ。
十分ほどかけて、ようやく耳鳴りが収まってきた。ここまで来れば歩行にも支障はなく、いま少し時間を使えばギリギリ走れそうだ。
クライヴは改めて牢屋の外に人がいないのを確認し、喉の奥に指を突っ込んだ。
血と唾液を吐き出すと、口腔の最奥に隠していた銀色の鈴が転がり出てくる。それは汚れてもなお輝きを失わず、深くはっきりと刻まれた菌糸模様が浅く拍動していた。
この銀色の鈴と、偽物と思しきロッシュの『響音』は共鳴しなかった。ロッシュがあえて手を抜いたのか、それとも鈴の存在に気付かなかったのか。
ともかく脱出しなければ話にならない。せめてこの鈴だけでも仲間に預けなければ、死んでも死に切れない。
クライヴは銀色の鈴を鷲掴み、大きく息を吸い込んでから、再び喉の奥へ押し込んだ。
「死なない限り、任務は失敗ではない……!」
カミケンから教わった不屈の精神を滾らせ、クライヴは牢屋の鍵に飛びついた。
爪の間に隠してあった針金を親指で押し出し、錠前の穴へ手探りで差し込む。何度か内部の凹みを押し上げれば、ものの数分で錠前は外れた。
肩口で押すようにして牢屋の扉を開ける。素早く通路の左右を見渡し、巡回がいないことを視認する。
牢に窓がないのなら、現在地は地下で確定。目指すは上に続く階段だ。
「あ……あんたさっきまで、死にかけてたはずじゃあ……」
隣室の囚人がクライヴの姿を見てギョッとしていたが、無視して階段を駆け上がる。何度かつま先が速度に追いつかずに蹴躓いたが、なんとか地上まで上りきった。
階段の先には鉄格子の門と、狭い通路が一直線に続いていた。通路横には広々とした部屋があり、衛兵たちの休憩室のようだ。
舌打ちを飲み込みながら、クライヴは階段と通路を隔てる門へと近づく。鉄格子の隙間から外側に触れてみると、やはりご丁寧にも錠前がかけられていた。
さっきのようにピッキングしてもいいが、休憩所と門の位置が近すぎる。悠長に鍵を開けている場合ではない。
クライヴは一旦距離を取り、『雷光』の短剣を手のひらで押すようにして錠前と門の接合部を貫いた。ドラゴンの鱗を加工して作られたであろう錠前は、普通の鉄よりも頑丈だった。だが、骨が痺れるような衝撃を残して、錠前は氷のように砕け散った。
騒々しい金属音が響き渡り、休憩室から三人の衛兵が飛び出してくる。クライヴは門を押し開け、そのまま一人目の衛兵へ正拳突きを放った。不意をつかれた衛兵は鳩尾に直撃を受け、夕飯を吐きながら気絶した。
続く二人目。クライヴの背後に回り込もうとした衛兵の足を、素早く爪先で掬い上げる。二人目は珍妙な悲鳴をあげながら転び、無防備な背中を曝け出した。その背に渾身の踵下ろしを放ち、念の為に後頭部を殴りつける。多分死んではいまい。
最後の一人。クライヴが息を乱しながら振り返った先には、年若い衛兵が、悲鳴のような雄叫びを上げて剣を振りかぶっていた。
「うあああああ!」
戦い慣れていない、まだ守護狩人になって間もない子供だろう。クライヴは冷静に斬撃の軌道を読み、左から肘で剣をへし折った。
「え!? 嘘だろ!?」
「餓鬼は寝てろ」
呆然とする衛兵の腕を引っ張り、首元に拳を叩き込む。若い衛兵は泡を吹きながら、白目を剥いて気絶した。
直に増援が来る。その前に外に出なければ。
「……くっ!」
クライヴは『迷彩』を発動するも、すぐに能力の揺らぎに気づいた。まだ回復しきっていない身体では、菌糸に上手く指示を出せないらしい。ところどころ『迷彩』がほつれ、ガラス細工のようにクライヴの輪郭が浮かび上がっていた。
菌糸の回復を待つ時間はない。こうしている間にも、仲間の情報がロッシュに抜き取られている。
クライヴは逡巡するまでもなく、即座に監獄から飛び出した。
監獄の出入り口は隠れる場所がないほど開けていた。エラムラの南側、しかも外壁沿いに位置しているため、すり鉢状に広がるエラムラの里を一望できる。民が暮らす区画より明らかに建物が少なく、身を隠すための木々もない。
背後を振り返れば、白い煉瓦作りの監獄と、外壁と同化した堅牢な物見台が立っていた。
監獄から東門までの距離はかなりある。ボロボロの身体で隠れながら進もうものなら、およそ十五分はかかる目算だ。その間、衛兵に見つからずに移動できるとは限らない。ロッシュの『響音』は、どんな音も聞き逃さないのだから。
しかし、それにしては衛兵の動きが遅い。通常なら、錠前を破壊した時点で衛兵が殺到してくるはずなのだが。
クライヴは住宅街へと移動しながら物見台を振り返る。談笑する衛兵の姿がちらりと見えた。
――気づかれていない?
猛烈な違和感が喉まで迫り上がるが、堪えて脱出を優先する。住宅街の入り組んだ道を抜け、広場を迂回するように東門へ歩を進める。
まだ発見されていないという余裕のせいか、頭の片隅で勝手に思考が回り続ける。
クライヴがギルドに侵入したといち早く気づいたのは、他ならぬロッシュだった。そして、クライヴを捕らえるなり即座に偽物を用意できたのも、どこかでクライヴたちの計画を盗み聞いていたが故だと思っていた。
ならばなぜ、クライヴの脱走に気づかない。気づいていながら放置しているのか? いいやありえない。
エラムラの守護者たるロッシュは、四六時中『響音』を用いて、里の警部に当たるような狂人だ。里を危険に晒す可能性があるだけでも、過剰に監視をつける徹底ぶりだった。今更、クライヴを見逃すメリットは皆無である。
「おい、あそこに誰かいるぞ!」
自問自答を繰り返している間に、近くの外壁から衛兵の叫び声が響き渡った。ついに見つかってしまった。しかし、脱獄囚を見つけたとは思えない抽象的な物言いだ。
やはり何かがおかしい。
無意識に『雷光』の短剣を構えながら、より入り組んだ道を選ぶ。この角を曲がれば東門は目前だ。
ひゅん、と刃物を振り抜く音がして、咄嗟に曲がり角から頭を引っ込める。直後、先ほどまで立っていた場所に深々と薙刀が突き刺さった。
石畳が砕け散るほどの重い攻撃に、クライヴは小さく生唾を飲む。そして曲がり角から、ぬっと大きな影が現れた。
「エラムラの狩人を舐めるなよ。侵入者め」
ドスを効かせながらクライヴを睨みつけてきたのは、数日前、バルド村救助隊に参加していた熟練の守護狩人であった。
いかに対人戦に特化したクライヴであっても、死戦を潜り抜けた守護狩人相手では『迷彩』も焼石に水だ。真っ向から戦おうものなら、互いに出血は免れないだろう。
オラガイア同盟がある手前、クライヴはエラムラの狩人を殺すわけにはいかなかった。しかし、背後からも続々と増援が押し寄せ、まもなく挟み撃ちにされる。戦う以外に道はない。
せめて死体だけでもエラムラの外に。
喉奥に隠した銀色を思いながら、クライヴは短剣を握り直した。
瞬間、真上から眩い光が駆け抜ける。その場にいた狩人たちは信号弾と見誤り、縫い止められたように足を止めた。
光を見て動いたのはクライヴだけだった。
「なっ」
守護狩人のすぐ側で、わざと『迷彩』の効力を消す。一気にクライヴの気配が大きくなり、守護狩人は反射的に薙刀を下から上へと振るった。
人は予想外のことが起きれば、身に染みた動作を必ず取る。優れた狩人ほど、攻撃に移るのも早かった。
全ての動作を完璧に予測していたクライヴは、軽々と薙刀を足場にし、夜空へ跳躍した。向かう先は発光源たる『流星』だ。
限界まで腕を伸ばす。だが、あと数センチというところで浮遊感がはらわたを鷲掴みにする。
届かない。
直後、叩くような勢いで、クライヴの手が相棒に掴み取られた。
「ぐぅぅぅおりゃああああ!」
シュレイブは空中で『流星』の軌道を変え、一気に東側の外壁へと飛翔する。
外壁の外側には『腐食』の巫女の結界がある。このまま突っ込んでは身体が塵となってしまう。
目を見開きながら、クライヴはシュレイブの胸ぐらを掴んだ。だが、二人は『腐食』に呑まれることなく、無事にエラムラの外を飛んでいた。
「な……」
「レブナが巫女様に直接頼んでおいたのだ! 流星が見えるまで結界を解除しておいてくれとな!」
先に言え、と叫びたかったが、口を開いたら銀色の鈴が飛んでいってしまいそうでとっさに黙り込む。シュレイブはクライヴの鬼の形相に気づくと愉快そうに声を上げて笑った。
傍目では目立つ『流星』を切り止め、東門から少し離れた森へと着陸する。そこにはレオハニーが待機しており、他の面々は見当たらない。どうやらクライヴの救助に任命されたのはシュレイブとレオハニーのみで、他は別行動をとっているようだった。
「いっ!」
最後の最後でシュレイブがしくじり、クライヴは尻から地面に降ろされた。
「あ、ごめんクライヴ」
「お前な……」
「――無事かい。クライヴ」
目の前に、最強の討滅者の手が差し出される。生涯訪れぬだろうと思っていた憧れの光景に、クライヴは一瞬頭が真っ白になった。遅れて、物語に飛び込んだかのような高揚感が、つま先から頭のてっぺんまで広がった。
はっと苦笑気味のため息をついて、できるだけ事務的に最強の手を取る。
「流石、仕事が早いようで脱帽です」
「助けられた身でなんだその態度はぁ!」
シュレイブから叱責を喰らいながら、クライヴはレオハニーに身を任せるようにして立ち上がった。エラムラの狩人に殺されかけ、バルド村の狩人に救われるのはおかしな気分だ。どちらもスキュリア陣営にとっては宿敵だったというのに。
クライヴは自主的にレオハニーと交わした手を話すと、ここに来てずっと疑問だったことを口にした。
「なぜ合流した男が偽物だと分かったのですか、レオハニー様」
これほどの速さで救助が来たということは、誰かがクライヴの偽物に気づいた以外にありえない。だが、クライヴが見た偽物はかなり精巧であった。意識を失っていたせいで肝心の変装する瞬間を見逃してしまったが、一目見ただけで自分の幽霊を見てしまったような、言い表せない不気味さに襲われた。
リョーホが魂を見破ったのか。それとも最強故の勘が働いたのか。
クライヴの問いに、レオハニーは心なしか得意げに答えた。
「気づいたのはシュレイブだ。覚えたてのバルド村式のハンドサインを使いながら、必死に平静を取り繕っていたよ」
「し、仕方ないだろう。合図がバレたら、今度こそ俺たちは終わりだと絶望していたんだぞ!」
顔を真っ赤にしながらシュレイブは憤慨する。昔から嘘をつくのが苦手なこの男にとって、敵の前で堂々と密告するのはかなりの苦役だったろう。敵が工作慣れしていない素人で大変助かった。
それにしても。
「気づくのが早すぎるだろう」
「お前は必ず任務をやり遂げる男だ。命惜しさにおめおめ逃げ帰るほど薄っぺらい誇りではない。だろう?」
自信満々に断言され、クライヴはほんのひと時だけ声を忘れた。
「……帰ったら、カミケン様にお前の事を自慢してやる」
「うむ! 心ゆくまで語ってくれ!」
もう何も言うまい。クライヴはシュレイブに背を向けながら人知れず笑みをこぼし、大きく背筋を伸ばしながらレオハニーへ向き直った。
「それで、この後はどうするんです? レオハニー様」
「先程の騒ぎで、今頃は広場に人が集められているはずだ。そこでロッシュの秘密を暴き、エラムラを正す」
「たった一晩で?」
「可能だよ。君が命懸けで持ち帰った、その鈴があれば」
夜闇を散らすほどの赤い瞳が、クライヴの喉仏へと注がれる。最強にはベアルドルフの瞳がなくとも全てお見通しだったようだ。改めて彼女が味方で良かったと、クライヴは心の底から胸を撫で下ろした。
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☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
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世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
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冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
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もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
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【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
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かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
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国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
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ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
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妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
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