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スピンオフ【雨蜜】唾と罪とナイトメア feat.霙恋 全3話。姉ガチ恋義弟美青年/飲酒運転描写あり/差別的表現/明るい終わり方ではない

【雨蜜スピンオフ】唾と罪とナイトメア 2

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 内腿の柔肌を押さえ、陰阜いんぷの綿飴よりも姉の匂いが強まる玉門へ彼は顔を近付けた。
「姉さん………」
 鼻先の接してしまいそうな近くに、舐めても舐めても舐めたらない雛尖がつんと上を向いていた。だがブラインドの奥の外灯を頼りにしただけの視覚情報であった。
 霙恋えれんは息を吸った。牝の芳醇な香りがする。彼は脳天まで突き抜けていく快美な麻痺に、わずかばかり気を遠くさせた。開脚させた手は置いたまま、頭だけ離すとぼんやりした。この男に限っては、依存性のある恐ろしい薬に違いなかった。そして嗅ぐには暴力か脅迫が伴う。
「最高だ、姉さん……いい匂いがする」
 女の股を嗅ぐのが彼の趣味ではなかった。むしろ嫌悪すら催していた。彼は、他の女の股へ鼻を近付け嗅いだことがあるだろうか?いいや、なかった。触ることにすら嫌悪した。彼はどちらといえば潔癖なのだ。別個体でありながら、同一視される半同個体と姉を代わる代わる犯すので精々だった。そうでなければとても、避妊具なしで女を犯すことなどできなかった。不浄の場所の匂いなどとても嗅げたものではない。だが、姉とまだ表面的であろうとも、安穏に暮らしていた頃、彼は溢れ出す想いのあまり姉の下着を嗅いでしまった。そのときの驚き!脳を痺れさせた馨香!幼い男児の腹に芽吹いた本能の兆し!彼は将来がみえた。そして彼のウィタ・セクスアリスが決定付けられた。そして今、まさに至福の時に浸っていた。
「ああ……姉さん………」
 そして渇きを覚えるのだ。小さな肉の盛り上がりを舌先で転がしてみる。
「あ……っ」
 姉が身動みじろぐ。ソファーが微かな物音をたてる。彼はここが女の弱点であることを知っていた。感度の悪い女はここを刺激することで終わらせる。しかしそれはすべて指でのことである。とても口など付けられるはずがない。
 霙恋は芯を持っている小ぶりな肉芽を舌先のやや裏側を使って愛撫した。
「ん………っ、」
「姉さん……」
 彼は目を眇め、寝ながら媚声を漏らす愛しい人を見上げた。
「かわいい……」
 仕事であっても出せない甘えた音吐が彼からも吐き出される。
「ここで一緒に暮らそうね、姉さん……」
 そして丹念に肉襞のひとつひとつを舐め上げていった。彼の唾液のついていないところなどないといわんばかりであった。
「あ………あ………っ」
「姉さん………姉さん…………好き、好きだ、姉さん………」
 姉の湧水を、霙恋はじゅるじゅると音をたてて吸った。口周りをぬとつかせながら、塗りたくった唾液の代償でももらっていくみたいに。
「足りないだろう、姉さん………今イかせてあげるから………姉さん」
 節くれだった長い指が差し込まれる。抱いても抱いても、次に抱くときには生娘に戻っている。隘路あいろを探る。うねりの強い誘惑に負けそうになる。負けたところで、浅はかな性欲に負けた彼の肉体は姉を貫くことが今日はもうできそうになかった。それでいて肉体の疼きは治らないのだ。
「姉さん……すまない。今日は浅いところでイってくれ……」
「ん………な、に…………?」
 とろんだ内部に沈めた指の角度を定めたとき、姉は泥沼のような眠りから目を覚ました。
「おはよう、姉さん」
 彼女は自身の体勢に気付き、脚を閉じようとした。
「いや!何して……」
 霙恋は姉の腿を制した。そして布の被さった檻を振り向いた。
「姉ちゃん……?姉ちゃん、来てるの?………霙恋くん………」
 元気のない無機質な声ではあるが、そこには期待の色が含まれていたことも否めない。
「あーく、んっ」
「姉ちゃん……?」
 布の下、檻の中で物音がする。霙恋は姉に任せることにした。どちらでも同じことである。姉はここに住まうことになる。そしてその痴態を愚弟に晒そうと晒すまいと知ったことではない。
「姉ちゃん、どして……?いるの……?」
「あーくん、どうしてって……あーくん、どこにいるの?」
 彼女は長弟のことなど忘れて、末弟の声に引き寄せられていく。裸であることも分かっていないようだった。
 霙恋は明かりを点けた。辺り一面、色彩を取り戻す。深い青と濃い緑の模様の布の端から銀色の格子が規則正しい間隔をもって伸びていた。姉は姉で、自身の状態に気付いたようだ。彼女は身体を小さくして前面を隠す。
「見ないで」
「姉ちゃん……」
 霙恋は檻へと近付いた。そして布をさらに引っ張り、下からでも覗けないようにしてしまった。
「霙恋くん」
 怯える声が媚びて聞こえる。
「喋るな。また躾けないといけないか?」
 だが愚鈍な弟に何を言おうと無駄である。
「姉ちゃん」
 コンクリート打ちの室内に、金属音が響く。不穏な沈黙の中にこだましている。布の下の生き物は静かになり、全裸の姉は蹲って恐怖している。
「着替えを持ってくるよ、姉さん」
 姉の体格に合う服を彼は持っていた。そして後悔した。迷いが生じてしまった。姉に着せたかったニットドレスだの、金刺繍の入った真っ白いワンピースだの、やたらと透けたカットソーだのの前に、彼女の身体をすっぽり覆えてしまう自身の服という選択肢が大きく現れたのである。彼は激しく葛藤した。檻を蹴った痛みが選択を邪魔する。そして決断した。彼が手に取ったのは大きなマシュマロをり貫いて縫い付けたようなフーデッドシャツだった。
 彼は爛々とした目でそれを手に取った。そして黒地に小さな草花の模様が入ったロングスカートと桜色のプリーツの入ったスカートとで迷う所作を見せたが、後者に決まった。
 激しい息遣い。そして彼はハンガーごとそれらを抱いた。洗剤が薫る。
 姉さん!
 虚無に姉を当て嵌め、彼は身を熱くした。嬉々としてリビングに戻った。だが上機嫌はまたたくまに打ち砕かれるのである。
 檻の傍に姉がいるのだ。裸の姉弟がアルミの格子を隔ている。
 霙恋の物に憑かれたような昏い双眸に正気の光が戻った。
「姉さん……着替えだ」
 平静を装った。不機嫌をひた隠す。しかし姉に、このただでさえ無表情な長弟の機微など分かるはずもない。いいや、姉にかかわらず、彼にとって半分同個体といっても差し支えない人物を除いては、末弟であろうと実母であろうと、上機嫌か不機嫌かの違いは見抜けなかっただろう。
「あ……りがとう………」
 おそるおそる、姉は着替えに手を伸ばした。霙恋は彼女にそれを渡しながら、動かされた形跡のある布を引っ張る。
「うぅ……」
 動物園の動物ほど可愛げも希少価値も才もない哀れな少年は咽せいでいるような声を漏らした。
「部屋を、貸して……」
「だめだ」
 霙恋は鰾膠にべもなく答えた。姉が羞恥に耐え、服を身に纏っていくのをじっくり眺める。まずはうんざりした表情を愉しむのだ。そして腕。スカートを穿く爪先から、隠れていく腿。淑やかに引かれた二重目蓋、長い睫毛に翳る黒真珠めいた眼は、ふたたび呪詛でも受けたかのように妖しくなった。
「わたしの服は……?」
「クリーニングに出して、俺がもらう」
 下着のひとつも彼は返すつもりがなかった。
「あーくんを出してあげて」
 都合の良い耳は、面倒臭い話を聞かなくなっていた。ただ姉のウィンドウチャイムみたいな声を聴くためだけに機能した。言葉の意味については興味がない。
「姉さん……かわいいよ。よく似合ってる」
 サイズが大きいのだ。ふんわりとした膨張しているような素材が年長者の女を幼く見せる。
 この無表情で普段は寡黙、愛想も愛嬌もなく、その冷淡ぶりで売れた男にも愛玩の念はあるのである。適当なものを愛でる能はあるのだ。彼は物憑かれしているような眸子で姉を観ていた。瞳孔から光線が出るのなら彼女は蜂の巣になっていた。
「あーくんを、出して……」
 愚弟の身を案ずるあまり、彼女は霙恋を恐れているようだった。語気は弱かった。おもねる態度が、姉の姉らしさを奪い去っている。
「ここで一緒に暮らすんだよ、姉さん」
 マシュマロに埋まったような姉ににじり寄る。すると彼女が後退り、距離は保たれたままだった。
「で、でも、霙恋ちゃんにも、生活が……」
「一緒に暮らす!姉さんと嵐恋と俺で、3人で暮らす。いいだろう?姉さん……姉さん!嵐恋もここがいいと言うさ。姉さん!」
 必要以上に姉を呼ぶ。そうすると怯えるのだ。羞悪してもいるのだ。呼ばない理由がないのである。否、彼にそのような打算はない。意識もせずにやっているのだった。
「そ、それはあーくんに、訊か……なきゃ、」
「嵐恋はここに居るのだから、姉さんもここで暮らす。嵐恋……そうだろう?何が不満だ?何を求めてお前は俺のところに来た?姉さんの干渉か?姉さんの邪魔になりたくないのだろう?でも姉さんはお前を支配していたいんだ。お前はここに居るのが一番いい。これが理想的な形なんだ、嵐恋。何もかもお前が我慢すればいい。俺も姉さんも、お前のために我慢を繰り返してきたんだからな」
 霙恋は突然、リビングの棚にあったドライヤーを触りはじめた。コードが床に叩きつけられ、ヘビのように這う。コードの巻き方や片付け方が気に入らなかったらしい。
「あ……う、うん………おで、おで……ここにいる」
 姉は驚いていた。
「一緒に暮らすんだよ、姉さん」
 ドライヤーのコードを気に入るように巻いて片付ける。そして末弟の決断を信じていない姉を見遣った。
「い、いや……あーくん、騙されないで。この人は、あなたを……」
「姉さんの干渉は恐ろしいな、嵐恋」
 霙恋は喋りながら電子ポットに水を注ぐ。
「あ………ああ………」
 檻の中の生き物は訳が分かっていないようだった。ただ兄を怖がっている。姉の傍から離れた一晩のうちに恐ろしいことがあったのだろう。よくよく見れば、火傷は背中の一ヶ所だけではなかった。
「お願いだから……お願いだから、あーくんを怖がらせないで!」
 姉の目には、弟のやたらと赤みの差した腕や肩が見えなかった。布を被せられ、濃い陰を落としているのだから無理もない。
「怖がらせる?俺が?こういうふうにか?」
 霙恋は水の入った電子ポットを電源スタンドに置くこともなく、布を除け、檻の真上で傾ける。哀れな少年が目を剥いた。
「やだ!いやだぁ!やだぁ!」
 異常な反応だった。姉の顔から血の気が引いていく。
「そんなに水が怖いとなると、狂犬病を疑いたくなるな。口を開けろ」
 カラスもトカゲも平気で嬲り殺せる野良猫みたいな眼差しの横で電子ポットは横たわる状態へ近付く。しかし姉が跳んできた。
「何考えてるの、霙恋ちゃん!あなた、頭がおかしい!あなたはおかしい!」
 腕を掴まれていた。彼は掴み返すことにした。
「そうだ。俺はおかしい。姉さんが傍に居るべきは嵐恋じゃないってことさ。姉さん」
 男物にしても大きな作りの服では、姉の首から肩に向かう曲線が襟元から垣間見えるのだった。霙恋は衝撃的な光景でも目の当たりにしたかのような刹那の停止に陥る。彼のなかでは渇きを覚えるのと同時に生唾が大量に分泌されていった。
「姉さん………姉さん!姉さん!」
 彼は腕いっぱいに姉を抱き締める。膨らむ性質の化学繊維がほとんどだった。
「姉さん!かわいい……!姉さん!」
「ぐ……ぅ」
 ボディラインを大いに隠してしまうその服は容赦を忘れさせた。だが物の憑いたような濁った目では、姉の身体をへし折り、砕き潰し、圧壊させてしまうことに気付く余地はなかろう。不本意な殺意に似ていた。肋骨で彼女を食ってしまいたい。彼の腕はその骨に彼女を捩じ込もうとさえしていた。
「く………る、し………」
「かわいい………姉さん!かわいい………」
 酸素も重力も十分な地上で彼は溺れていた。彼もまた苦しいのだ。錯覚に近い苦しみに苛まれている。猛烈な愛玩欲は、やはり殺意と等しかった。
「ああ……ああ………姉ちゃん、姉ちゃん…………」
 檻の中の生き物が啜り泣きはじめる。
「あ゛ぁ、く………ぅぅッ」
「姉さん………一緒に暮らす。一緒に……俺と姉さんと嵐恋で3人で暮らす。姉さん!」
「ぁ、う、う……いたい………あ、っ、くるし…………」
 霙恋は苦痛を訴える姉を見下ろしていた。このときばかりは、合意を強いていたのではなかった。欲望を止められなかったし、また止めようとも思わなかった。ただ我欲に支配されていた。姉を圧殺することに至上の悦びを予感していた。しかし殺意はないのである。殺したいとは微塵も思っていないのだ。恨みなどない。己の欲求を満たそうとすると、姉が死に近付く厄介な構造をしているというだけの話だった。
「も………やめ………」
 霙恋の耳には入らない。
「一緒に暮らす………一緒に暮らしてもらうから、姉ちゃんにヒドいコトしないで………っ」
 それは姉を愛でる行為であったはずだ。ところが檻の中の生き物を恫喝していることになっていたようだ。
 霙恋は市場に横たわる鮪みたいな目をして停まった。力が抜けていく。腕の中から息切れが聞こえてきた。弱りきっている姿に、またもや不穏な欲求が溢れた。
「姉さん!姉さん……!姉さん」
 ふっくらとしたフードのために細さの強調される首へ両手を巻き付けてしまった。ホテルで起きた衝動だった。扼殺する気はないのだ。証拠に力は籠っていなかった。怒りっぽくヒステリックで支配的な姉の肉体的弱さを知りたかった。再確認したかった。実感したかった。姉はあまりにも弱い存在なのだ。触れたら死んでしまう羽虫のようだ。あまりにも可憐。儚く、美しい!
 蒼褪めに蒼褪めた姉は反抗する気力もないらしかった。
「姉さん、姉さん……」
 マヌカンみたいに突っ立っている彼女の唇を吸った。ちゅっ、ちゅっと音を立てる。顔を覗き込み、反対の角度からまた吸った。
「なんで………なんで………」
 戸惑うのは接吻された本人ではない。檻の中の生き物はオウムやインコだったのかも知れない。抑揚のない無機質な語気が割り込んだ。檻の中の巨大なインコからしてみれば、姉と兄がキスしているのだから当惑するのも無理はない。
「言っただろう。俺の恋人だと。姉さんにはカレシができたとも……俺と姉さんだ。よかったな、嵐恋。家族団欒だ」
「最低………最低よ、霙恋ちゃん!あーくん、信じちゃダメ……」
「俺だって隠しておきたかった。だが俺の忠告を無視したのはそいつだ、姉さん。そして自分の姿を晒したのも姉さんのほうだろう?」
 だが檻の中の生き物の存在は邪魔だった。姉の意識が逸らされてしまう。
「う………うぅ……」
 檻の中の生き物がまた泣き出して、姉がすっ飛んでいく。図体が多少大きくなっているけれど、よく知った光景である。
「泣かないで、あーくん……違うのよ、あーくん」
「違くない」
 霙恋は檻の前で姉を辱めることにした。弟を甘やかし過ぎていたのだ。支配的で過干渉な姉に、彼は去勢されてしまったのだ。これでは女ではないし、女になる道も意思もないのだろう。髭を毟り取られ、陰茎も陰嚢もぎ取られた不気味な男児だ。彼にとってこれは男ではない。そうい輩がのさばっているのは好きにしたらよい。だがこれは一応のところ実質的な久城の嫡男である。そして八神の末男である。それが"これ"なのは霙恋のプライドが赦せなかった。恥であった。恥晒しが身内にいる。いくら余所の種が混じっていると思っても傷付けるのは母で、怒るのは父、疑いもしないのは姉だ。
「分からないのなら分からせればいいな。それでも分からないのなら、それまでの人間なのさ。分かりたくないから分からずにいるのだとしたら、それがお前の器なんだな」
 霙恋は檻の前に屈む姉を見遣ると、一度ソファーに向かっていった。クッションをひとつ手に取る様は、日常生活の一コマといったところだった。その立夜鷹タチヨタカを思わせる目付きさえ見なければ。
 あまりにも呑気な行動だった。だが彼はクッションを床に投げ置くと、そこに姉を転がした。
「嵐恋。姉さんはお前の保護者オンナじゃない。俺や雫恋に少しでも似ていてよかったな。それだけは救いだろうさ。偽物の身代わり品として、お前にアイをくれる女はいるのかも分からん」
 愚弟がよくよく見ればちょっとした美少年であることは認めなければならなかったし、人というのは整いきった顔面に今度は不信感を抱くものなのだ。その点に於いて、この弟には歯並びの悪さと、迂愚なほどの鈍さ、白痴のような愛嬌がある。彼を一個人として好まずとも、兄たちを愛した女が代替的な情を注ぐことはあるかも知れない。ただひたすらに、中身との大差がどう転ぶかであった。
「ふざけないで、霙恋ちゃん!」
「ふざけてなんかないよ、姉さん」
 抗う姉の下半身から淡いピンク色のロングスカートを引き抜いた。その下は裸である。隠そうとした手をまとめてあげ、膝を外側へ折らせた。
「いや……ぁ!」
 艶やかな叢と、その下でぱっくりと開いた木通あけび。淫らな朱脣が露わになる。
「嵐恋。ここが俺の出入りしたところだよ。見ろ!見るんだ!」
 彼は怒鳴った。弟は姉のかわいいテディベアを気取るつもりなのだ。愚鈍のくせに腹は黒い。
「あ……ああ……姉ちゃん………」
 嵐恋は兄のほうに従ったのだ。恩知らずの哀れな子供だ。格子の傍まで身を寄せる。
「見ないで……っ、見ないで、あーくん!いや……!」
 霙恋は剥き出しの姉の花園へ顔を埋めた。少し前に散々舐めたが、何度やっても飽きはしない。濃厚な牝の匂いを肺に入れ、恍惚とする。
「姉さん!」
 感極まった雄叫びだった。彼は朱つびに舌を這わせる。
「うぅ……」
「姉ちゃん……」
 愚弟は泣けば済むとでも思っていそうだった。
「見ちゃ……いや………」
 死に絶えそうな反応が霙恋を激しく興奮させる。その声音を変えなければならない使命感に襲われる。彼は無邪気な顔をして肉珠を唇で甘く噛む。
「ああっ」
 その下の楕円泉を舐め上げ、水気が増えているのを確認した。
「あ……ああ………」
 舌先を出し、厚みを持った肉粒を転がす。皮の下から確かに突起が現れていた。質感の強い表面となめらかな裏面が交互に、敏感な露芽を責める。火照りはじめる身体は、霙恋を狂わせる佳芳を醸す。鼻先を黒絹の糸屑溜まりに押し付け、花弁と一緒に花核も舐めねぶる。その途中で唾液ではない液体を拾う。
「あ……あんっ………」
「姉さんの蜜が垂れてきた。尻の穴がひくついて、かわいいな。蕾みたいだ」
 彼は誘惑に負けた。その小さな窄まりも舐めてしまう。
「あ……っだめ、だめ………っ」
 慣れない擽ったさが彼女をそうさせた。身を大きく捻り、さらに扇情的に見えた。質の低い射精を追い求めなければ、彼は興味本位でそこに熱く滾るペニスを突き立てたかも知れない。ひく、ひく、と何か催促しているような渦孔は咲散ることなく命拾いした。
「姉さんは尻の穴も気持ち良さそうだ」
 だが今日はだめだった。彼は諦めた。しかし希望でもあった。今日は姉の香りと味を楽しむ日である。ペニスなどは明日には使い物になるのだ。
「い……いや!放して………」
「姉さんのアヌスは俺のものだよ」
 彼はまた一舐めしてから花吸いに戻った。
「あ………あ………」
 窪みを舐め、襞の織りなす溝を舐め尽くす。それから濡れた痼りを口に入れた。吸う。そして陰茎に口淫をするかのような動き方をした。
「や、!やんっ、あっ、ああんっ」
 鋭敏にされた箇所を、生温く湿った感触に包まれて吸い扱かれてている。
「だめ、だめ、それ……ぃや、ああっ、」
 姉は腰を突き上げた。霙恋は口を塞がれる。鼻先は下生えに埋もれ、溢水した媚蜜が彼の肌を濡らした。淫らな牝の香りを窒素するほど吸い込んで、酔い痴れてしまった。絶頂した姉は弟の舌と唇に潤花を擦り付けて自涜に耽る。霙恋はこの匂いと氾濫水に溺れていたかった。窒素したかった。
「あ………ああん………」
 まだ余韻の引いていない女は懸命に腰を揺らしている。霙恋はそれを追った。
「も……だめ、吸っちゃ………ああんッ」
「まだ足らなんじゃないか、姉さん」
 彼は姉を抱き起こした。そして檻の中の生き物の前で立たせると手淫を施したのだった。彼女は内部を突かれて絶頂する悦びを知っているのだ。外の快楽では物足りなかろう。霙恋は姉の弱いところを削った。
 口元を押さえ、もう片方の手では霙恋に縋り、彼女は身を震わせてオーガズムに達する。可愛がっていた弟の前で、交尾の経験がある牝獣になってしまった。甘酸っぱい香りを撒き散らす、繁殖欲の高い女になってしまったのだ。そして檻の中の生き物も、姉を姉などとは思っていなかったのだ。
「だ………め…………」
「だめじゃないよな、姉さん。こんなに濡らして、悪い子だ」
 隘路から抜いた指はしとどで、長指と薬指を広げると銀糸を引いた。上体を支えられずにしがみつく姉は涙を潤ませてそれを捉えた。
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