零下3℃のコイ

ぱんなこった。

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変化

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あ…やばい、日下部に見られて……

いや。

別にいいのか。

むしろ、僕と雪菜さんが上手くいくことをこいつは望んでるんだから…

「…あ、零。今風音くんと会って…」

「そうなんだ」

「階段から落ちそうになった所を助けてくれただけで…」

「別に何も思ってないからいいよ」

チクッ……

なんで僕がチクチクしてるんだよ。

「…あ、うん。そうだよね」

「風音くんはお昼食べた?」

「いや、まだ…」

「早く食べないと昼休憩終わっちゃうよ」

あれ、なんか…
日下部の表情が、今まではどんな時でも無理に笑ってる感じがしたけど
今は笑ってすらない。

しっかり見えないけど、無って表情だ。
いつもより態度が、冷たいっていうか何ていうか…。

もしかして怒ってる?

「じゃあ行こうか、雪菜」

「うん…」

「…っくさか、」

呼び止めてどうするんだよ。
今、別に弁明も何も必要ないんだから…

昨日のことも、今は話せない…。

ていうか、僕の方に見向きもしなかった。

「じゃあね、風音くん。ありがとね!」

「あ、はい…」

日下部の背中に続いて歩いていった雪菜さんは、こっちに手を振ってから背を向けた。

なんなんだ…放課後、普通に話せるよね…?

「あっ風音ー!遅いぞ!トイレ長い!腹痛いのか!?」

「ごめんごめん、大丈夫。てか声でかいよ!」

「ほら、コーラとメロンパン」

「え!パンも買ってくれたの?ありがとう…」

玉木には心配かけないようにしないとな…。

「ははっ、特別だよ」

合流した玉木からジュースとパンを受け取って、廊下を歩く。

今頃、日下部と雪菜さんは2人きりでご飯食べてるのか…。なんであいつは、ちょっと冷たかったんだろう。

僕が雪菜さんとくっついてたから…?
いや、雪菜さんを好きじゃないなら怒ることじゃないし…むしろ僕達からしたらいいはずなのに。

「ねぇ、玉木」

「ん?」

「嫉妬ってさ、男が…男…」

「ん?嫉妬がなに?」

「いや、なんでもない…」

「なんだよ~」

僕と日下部の関係って、何なんだ。

キーンコーンカーンコーン

放課後…

「風音くん、お待たせ」

「…ああ」

日下部と校門で待ち合わせて、学校を出る。お互い何を話すか知らない。

でも、2人の間に明らかに前とは違う空気が漂っている。

「家じゃなくていいの?歩きながらで」

「あ…うん。大丈夫」

「そっか、分かった」

歩きながら話したいと言ったのは、横並びなら緊張せずに話せると思ったから…でも無意味だった。

横にいようが、真正面にいようが、緊張してる度合いは変わらないみたいだ。


「…」
 
やばい、無言が続いてる…僕から話さないと…

「あ、あのさ、昨日のこと…ごめん。謝りたくて…」

「……」

「急にあんなことして、びっくりしたよな…ごめ」

「いいよ、気にしてない。僕もしちゃったし。今日話そうって言ったのは、その事じゃないから」

「…え?」

昨日のことじゃない…?

「誰にでも、気の迷いはあるよ。僕達、結構一緒にいるし、お互い事情も知ってるから情が移っただけだと思う。それで昨日のキスのことは終わりにしとこう」

「…は、」

「話したかったのは…この関係のこと」

関係のこと…?

ってまさか…
でも、そんなこと…

「もう、やめよう」

「へ…?やめる、って…」

「僕との練習も。雪菜を奪うって話も。全部やめよう」

え、なんで…。

それを、やめたら…

「ただのクラスメイトに戻ろ」

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