零下3℃のコイ

ぱんなこった。

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嫉妬心

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気まずくない…とは言えない。

昨日、遊園地で日下部にあんなことして、逃げるように帰って…

それでも今日、会って話をしないといけない。

【明日、学校で少し話せるかな】

昨日、遊園地から出て行った後、日下部からそんなメッセージが届いたから。
僕も、あのままじゃダメだって思うから話さなきゃってことは分かってるけど…。

自分の気持ちが、ごちゃごちゃで答えが出てないのに…どうしたらいいの。

僕は…なんでキスしたいなんて思ってしまったんだ。あんなの人生で初めて思った…。


「風音~!昼飯行こ!」

「あっ…ああ、玉木も今日は購買なの?」

「そーそー!今日めちゃくちゃ腹減ってさ、朝練が終わった後に弁当食っちゃったから購買で昼買おうと思ってー」

「はは…食べ過ぎじゃん」

あっという間にお昼か…。

放課後に日下部と話す約束してるからかな。今日はお昼誘われなかった。練習するようになってから、ほぼ毎日、日下部とお昼食べてたから…変な感じだ。

いやいや、ていうか、あんなことしちゃって普通に僕とお昼一緒に食べれる訳がないよね。

「何買おっかなー。メロンパンとカツサンドがいいなー」

「あー…いいね」

「なんだよ、風音元気なくない?」

「えっ…」

平常心装ってたのに…顔に出てた?
あ、前に日下部に言われたな…顔に出やすい、分かりやすいって。

「ううん!元気なくないよ!」

「そ?ならいいけど」

「お腹減ったから力出なかったのかなー…」

あ。

あそこの前に並んでるのって…もしかして。

「…っ」

「ん?どした?何見てんの。あ!!あれ零くんと雪菜ちゃんじゃね」

「あー…うん、そうだね」

僕らの少し前の方にいる2人。日下部と雪菜さんだ…。

そういえば、時々お昼一緒に食べるって言ってたっけ。今日はその日なんだ。

なんで、今まで全然なかったのにあえて今日なんだ…。

「…なぁ風音!!ジュース奢ってやるよ!」

「…えっ」

「そんな落ち込むなってー!お前の気持ちは分かるよ?俺だって好きな子が他の奴といるとこ見たくないし?まあジュース奢ってやるから元気だせよ」

「あ、ありがとう玉木…」

好きな子が他の奴といるとこ、見たくない…。

あれ?

僕は、どっちに嫉妬してるんだっけ…。

「あ、ごめん。玉木ちょっとトイレ行ってくる。僕コーラで」

「オッケー!」

別にトイレ行きたかった訳じゃないけど…ついあの場から逃げてきてしまった。

「…はぁ」

購買からすぐ近くの階段の踊り場へ駆け込んだ。大きな窓があって開けられるから、少し風に当たれる。

「もう、なんだ…はぁーーー」

深呼吸して落ち着いたら、早く戻らないと…玉木待たせてるし。

キュッ

あ、上靴で歩いてくる音がする。誰か階段登ってきた…


「あれ?」

「…?」

「風音くん?だよね?」

「…!え、雪菜さん?」

なんで、このタイミングで…!
雪菜さんがここに…!

ここ滅多に人通らないのに…

「こんなところで何してるの?お昼食べた?」

「あ、えっと…まだです。ちょっとボーッとしてて…」

「ふふ、なにそれー?私はね、久しぶりに零と一緒にお昼食べるの。上のベランダで」

「そう、なんだ…」

雪菜さんは購買の紙袋を持ってニコニコしてる。一緒にお昼食べるのが嬉しいんだろうな。

別れてくれない、無理に別れたら日下部の気持ちお兄さんに話すって言ってるって知った時は…正直なんでそんな脅しみたいな酷いこと…って思ったけど。

好きな気持ちが大きくなりすぎると…自分でも自分を制御できなくなってしまうのかも。

恋ってそんなに綺麗な物じゃない。

雪菜さんは、それだけ日下部のことを…


「零も、すぐ来ると思うんだけど、まだ…あっ」

「あ!!!雪菜さん、危ない!」

ぐいっ

ドサッ

雪菜さんが振り返った瞬間、すぐ後ろに階段があって踏み外す所だった。
咄嗟に手を引いて、自分の方へと抱き寄せる。

「…っあ、び、びっくりした…」

「だ、大丈夫?」

「うん…、ありがとう風音くん…。落ちるとこだった…」

え、あれ。

今僕めちゃくちゃ雪菜さんと密着してない?
事故とはいえ、こんな間近にずっと見てた雪菜さんがいる。

なのに…

「…あ、ごめんね。くっついちゃって」

なんでか、心臓が、あの時みたいにバクバクしない。

前は話すだけで口から心臓出そうなほど、緊張してたのに…今はこんなに触れてるのに、バクバクしない。

なんで…

「いえ…落ちなくてよかっ…」

キュッ

あ。

ふわふわの寝癖がついた明るい髪の毛…。


「あれ…?雪菜と風音くん…?」

「日下部…っ!」

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