零下3℃のコイ

ぱんなこった。

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執着心

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え?

なんで、また僕はベッドの上に寝てるんだ…?

今こいつに腕引っ張られて、ベッドに倒れて…それで…?僕の真上に日下部の顔が見える。

さっきの状態と同じ…?

「…雪菜のこと、まだ好きだよね?」

「えっ」

「そうやって、僕のためを思ってくれるなら…雪菜を奪ってくれるよね?」


そんなの…分かってるよ。だって、そのために僕と日下部は一緒にいるだけで…

僕は、やることは変わらないし。
雪菜さんに好きになってもらえるように頑張るだけ…

上手くいったら、僕達はもう関係なくなるだけ…


「わ、わかってる…」

なのに、胸がチクチクするっていうか…疼くっていうか、なんなんだ。これ。

日下部の本当の気持ちを知ってから、余計に。


「ねぇ…なんでそんなに顔赤いの?」

「えっ…」

「男を好きになる奴に、こんなことされてさ。嫌じゃないの?」

「…っい、嫌とかじゃ、」


あれ、なんでだろう。

なんで?嫌じゃない…と思ってしまうんだ。
恋愛経験が足りてない僕でも、無理な相手にこんなことされたら嫌だってことくらい分かる。

じゃあ、なんで…

今はただ単に緊張して…体が熱い。

「日下部、はなし…」

「僕、好きな人以外は基本どうでもいいって言ったでしょ…。好きになったら、その人のことで頭いっぱいになって、独り占めしたくなって、離したくなくなっちゃうんだ。気持ちが重い方なのかな…」

「……っ」

「でも…そんな自分も怖いし、恋愛しても苦しいことしかない。だったら、いっそ何も感じたくないって思ってた。そんな時に、風音くんを見て、この人なら僕をこの苦しさから解放してくれそうだって思った」

日下部に掴まれてる手首が、ギリ…ッと圧迫される。

「だから…僕はただ君を利用してるだけだよ。ごめんね。でも…代わりにっていうか、僕も風音くんの力になるから。許してほしい」

そんな、泣きそうな顔するなよ。
今にも目から涙が落ちてきそうなくらい、潤んでる。

「泣くなよ…」

解放された右手で、日下部の目元を撫でると、僕の手を日下部は掴んで包んだ。


僕は…雪菜さんが好きなんだよね?
付き合いたいんだよね?
1年の時よりも、どんどん雪菜さんに近付いてるし…恋が叶うかもしれない。

もし叶ったら、僕は日下部とはただのクラスメイトになって…こんな特別な関係はなくなって。

そしたら日下部も雪菜さんから離れられて…苦しくなくなる。

本当に?

僕は、本当はどうしたいんだ?分からない。
自分の気持ちが、分からなくなってる…。

「…ごめんね、こうやって風音君に縋っちゃダメだって思ってるのに…」


僕は、ちゃんと雪菜さんのことが好きだよね?
そうなんだよね?

「今日のこと、忘れてね…」

こんなの、ただの同情だ。それしか考えられない…。

「…え、」

だから、勝手に腕が動いただけだ。

日下部の背中に手を回したのも…僕の方から力強く抱きしめたのも…

ただの同情ってだけ。

「風音、くん…」

そうだよね?

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