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片思い
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ドク…ッ。
やっぱり…こいつの好きな人って…
「はは、引いたでしょ?男が好きなんて」
「…っ」
「だから、誰にも話せなかったんだ。風音くんにもこのことは言うつもりなかったけど…あんな真っ直ぐに言われたら、話したくなっちゃって。気持ち悪かったらごめ…」
「引いてなんか、ない…!」
「え…?」
「僕は…日下部ほど長く片思いしてるわけじゃないけど…分かるよ!相手を好きになることも、上手くいかなくて苦しいのも、好きで辛いのも分かる…から、 その!」
「風音くん…」
「びっくりはしたけど…引くとか、ないよ!だって恋愛なんて自由だろ…」
それよりも、小学生の頃からって…僕には想像できないほど苦しい思いをしてきたんだろうな。
男が好きってことは驚いたけど…本当に引いたりとか、気持ち悪いとか思ってない。
ただちょっと…なんでだろう。胸のとこがチクチクする。
「…ありがとう。でも光ちゃんには彼女がいるし、叶わないって分かってるから。もうずっと前から諦めてるんだ」
「…っもしかして、それで、あの人を忘れるために雪菜さんと?」
「いや、ちょっと違うかな…」
日下部は鼻のとこをぐしぐしと袖で擦りながら、ベットにゴロンと仰向けに倒れ込む。
「光ちゃんのことが好きなの、雪菜にも隠してたんだけど…ずっと近くにいたし、勘がいい子だからバレてたみたいで。中2の時に言われたんだ。お兄ちゃんのこと好きでしょ?って。
もう嘘もつけなかったから、内緒にしてほしいって言った。この気持ちがバレたら、きっと引かれて光ちゃんと一緒にいられなくなると思ったから。どうせ叶わないって分かってたから気持ちを隠して近くにいようって思ってたんだ」
何年もの長い間、ずっと気持ちを隠して…?
「そしたら、雪菜は僕のことを好きだって言ってきた。内緒にする代わりに付き合ってくれって。もちろんそんな事出来ないって言ったけど…どうせ気持ちを隠してるなら、もっと光ちゃんと近い存在になりたいでしょ?私の彼氏になれば、幼なじみ以上になれるんだよって言われて…迷いが出て断り切れなかったんだ」
「…っそういうことだったのか」
「だから、雪菜のこと好きになったことはないし。それでいいって言われてたけど、もう早々と気持ち的に限界がきてずっと別れたかった。でも別れたくないって言われてて…無理に別れたら光ちゃんに僕の気持ちをバラすって言われてた」
え…それって、もう脅しじゃん…。
だから、日下部は別れたいけど別れられないから、僕に雪菜さんを奪ってほしいって言ってきたのか…。
雪菜さんの気持ちさえ変われば、そういう心配もなく難なく離れられるから…。
「本当は悪い子じゃないんだよ、雪菜も。僕のこと昔から好きだったみたいで、気持ちが暴走してるんだと思う。いだったか言ってた、自分が制御できないって」
「…引き止めたくて必死なんだな」
「まあ、そんな感じ。光ちゃんは鈍感だからこんなこと知らないし気付いてもないけどね。僕達が好き同士で付き合ってると思ってる。僕達のこと知った時も、すごく嬉しそうな顔してたから…余計に、別れづらくなっちゃった」
日下部は、ずっとあの人のことが好きなのに…それを隠して他の人と付き合うって、苦しいに決まってるよな。
でも、雪菜さんも…それだけ日下部のことが好きで…
保健室で手当してくれた時、僕が判断を間違えたから…って言ってたのはこのことだったのか。
「…もしかして、階段で僕が見ちゃった喧嘩も、それで?」
「ああ、うん。周りに不審に思われないように、あと光ちゃんに心配かけたくなかったら外面よくしてるだけでさ、本当は雪菜の束縛もすごくなって、冷たくしちゃってた。仲のいい幼なじみっていうのは変わらないけど、恋愛対象にはどうしても見れなくて…あんな喧嘩もしょっちゅうだよ」
「日下部…」
「だから、僕はみんなが言ってるような…優しくてかっこいい完璧な彼氏とかじゃない、全然。本当はただの意気地無しで、冷たい人間だよ」
あの冷めたような顔は…そのせいだったのか。
恋を諦めてるけど、好きで苦しいって気持ちと、やめたいけどやめられないって気持ちが伝わってくる。
一一一何とも思わないようにしてるんだ。一喜一憂してたら持たないっていうか一一一
エレベーターの時の言葉も、なんとなく意味が分かった。
こいつは、辛いことを感じないようにしてるんだ。
本当の気持ちを隠すために、無理に笑って、取り繕って耐えてる…。
「あ、ごめんね。重い話しちゃって。風音くんには話せちゃったな、なんでだろ。でも気にしないでね?」
「お前は、冷たい人間じゃないよ」
「え?」
「僕が怪我した時も、わざわざ手当してくれたし…!利用するつもりだったとしても、他にあったと思うのに…お前はいつも優しいよ!」
「いや、それは…」
「気持ちを隠すための嘘の姿だとしても!僕はお前のこと、ただの冷たい奴だとか思ってないから!」
「…っなに、それ」
「だ、だから!話してくれてありがとうっていうか…?なんか、雪菜さんとの事情は口出せないけど!なんとなく日下部にもう辛い思いしてほしくないっていうか…!だから僕にできることがあったら…」
ぐいっ
「ぅ、わ!?」
ドサッ!!!
やっぱり…こいつの好きな人って…
「はは、引いたでしょ?男が好きなんて」
「…っ」
「だから、誰にも話せなかったんだ。風音くんにもこのことは言うつもりなかったけど…あんな真っ直ぐに言われたら、話したくなっちゃって。気持ち悪かったらごめ…」
「引いてなんか、ない…!」
「え…?」
「僕は…日下部ほど長く片思いしてるわけじゃないけど…分かるよ!相手を好きになることも、上手くいかなくて苦しいのも、好きで辛いのも分かる…から、 その!」
「風音くん…」
「びっくりはしたけど…引くとか、ないよ!だって恋愛なんて自由だろ…」
それよりも、小学生の頃からって…僕には想像できないほど苦しい思いをしてきたんだろうな。
男が好きってことは驚いたけど…本当に引いたりとか、気持ち悪いとか思ってない。
ただちょっと…なんでだろう。胸のとこがチクチクする。
「…ありがとう。でも光ちゃんには彼女がいるし、叶わないって分かってるから。もうずっと前から諦めてるんだ」
「…っもしかして、それで、あの人を忘れるために雪菜さんと?」
「いや、ちょっと違うかな…」
日下部は鼻のとこをぐしぐしと袖で擦りながら、ベットにゴロンと仰向けに倒れ込む。
「光ちゃんのことが好きなの、雪菜にも隠してたんだけど…ずっと近くにいたし、勘がいい子だからバレてたみたいで。中2の時に言われたんだ。お兄ちゃんのこと好きでしょ?って。
もう嘘もつけなかったから、内緒にしてほしいって言った。この気持ちがバレたら、きっと引かれて光ちゃんと一緒にいられなくなると思ったから。どうせ叶わないって分かってたから気持ちを隠して近くにいようって思ってたんだ」
何年もの長い間、ずっと気持ちを隠して…?
「そしたら、雪菜は僕のことを好きだって言ってきた。内緒にする代わりに付き合ってくれって。もちろんそんな事出来ないって言ったけど…どうせ気持ちを隠してるなら、もっと光ちゃんと近い存在になりたいでしょ?私の彼氏になれば、幼なじみ以上になれるんだよって言われて…迷いが出て断り切れなかったんだ」
「…っそういうことだったのか」
「だから、雪菜のこと好きになったことはないし。それでいいって言われてたけど、もう早々と気持ち的に限界がきてずっと別れたかった。でも別れたくないって言われてて…無理に別れたら光ちゃんに僕の気持ちをバラすって言われてた」
え…それって、もう脅しじゃん…。
だから、日下部は別れたいけど別れられないから、僕に雪菜さんを奪ってほしいって言ってきたのか…。
雪菜さんの気持ちさえ変われば、そういう心配もなく難なく離れられるから…。
「本当は悪い子じゃないんだよ、雪菜も。僕のこと昔から好きだったみたいで、気持ちが暴走してるんだと思う。いだったか言ってた、自分が制御できないって」
「…引き止めたくて必死なんだな」
「まあ、そんな感じ。光ちゃんは鈍感だからこんなこと知らないし気付いてもないけどね。僕達が好き同士で付き合ってると思ってる。僕達のこと知った時も、すごく嬉しそうな顔してたから…余計に、別れづらくなっちゃった」
日下部は、ずっとあの人のことが好きなのに…それを隠して他の人と付き合うって、苦しいに決まってるよな。
でも、雪菜さんも…それだけ日下部のことが好きで…
保健室で手当してくれた時、僕が判断を間違えたから…って言ってたのはこのことだったのか。
「…もしかして、階段で僕が見ちゃった喧嘩も、それで?」
「ああ、うん。周りに不審に思われないように、あと光ちゃんに心配かけたくなかったら外面よくしてるだけでさ、本当は雪菜の束縛もすごくなって、冷たくしちゃってた。仲のいい幼なじみっていうのは変わらないけど、恋愛対象にはどうしても見れなくて…あんな喧嘩もしょっちゅうだよ」
「日下部…」
「だから、僕はみんなが言ってるような…優しくてかっこいい完璧な彼氏とかじゃない、全然。本当はただの意気地無しで、冷たい人間だよ」
あの冷めたような顔は…そのせいだったのか。
恋を諦めてるけど、好きで苦しいって気持ちと、やめたいけどやめられないって気持ちが伝わってくる。
一一一何とも思わないようにしてるんだ。一喜一憂してたら持たないっていうか一一一
エレベーターの時の言葉も、なんとなく意味が分かった。
こいつは、辛いことを感じないようにしてるんだ。
本当の気持ちを隠すために、無理に笑って、取り繕って耐えてる…。
「あ、ごめんね。重い話しちゃって。風音くんには話せちゃったな、なんでだろ。でも気にしないでね?」
「お前は、冷たい人間じゃないよ」
「え?」
「僕が怪我した時も、わざわざ手当してくれたし…!利用するつもりだったとしても、他にあったと思うのに…お前はいつも優しいよ!」
「いや、それは…」
「気持ちを隠すための嘘の姿だとしても!僕はお前のこと、ただの冷たい奴だとか思ってないから!」
「…っなに、それ」
「だ、だから!話してくれてありがとうっていうか…?なんか、雪菜さんとの事情は口出せないけど!なんとなく日下部にもう辛い思いしてほしくないっていうか…!だから僕にできることがあったら…」
ぐいっ
「ぅ、わ!?」
ドサッ!!!
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