銀座のカクテルは秘め恋の味

坂本 光陽

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Gカクテル③

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 ところが、【銀時計】の閉店後のこと。映画の話をしていた成り行きで、ゴジラの話になった。私の父がゴジラファンであることを漏らすと、桐野さんが思いもよらぬことを口にした。

「そうですか、お父さんとは気が合いそうですね。僕も『シン・ゴジラ』は大好きですよ。ゴジラ映画の中で一番好きかもしれません」

「えっ、桐野さん、そうなんですか? ひょっとして、ゴジラが好きなんですか?」
「好きというか、まぁ、好きなんでしょうね」そういって、口元に笑みをつくった。

 これは意外だった。桐野さんとゴジラとは最も遠いと思っていたので、大いに驚かされた。

 うーん、こうなったら、宗旨替しゅうしがえの必要があるかもしれない。ゴジラ嫌いからゴジラ好きへの180度の転換である。雪村ミノリ、24歳、大好きな男性の色に染まりたい、そんな健気なお年頃、なんてね。

「ミノリさんのお父さんほど年季は入っていませんが、子供の頃はゴジラ映画に夢中でしたよ。平成のゴジラシリーズですけどね」

 男と女の違いはあるけれど、九つの年の差を実感するのは、こんな時だ。趣味嗜好や食べ物の好みの違いを埋めるのは大変だと思う。だけど、そんなものぐらい、愛の力で乗り越えてみせるさ。

 ふと思いついたことがある。

「桐野さん、この前の【龍馬カクテル】みたいに、もしかして、ゴジラのカクテルなんてあるんですか? ふふっ、まさか、ないですよね。バカなことを言いました。忘れてください」

「それ、ありますよ」
「えっ、本当ですか?」

「1998年にハリウッド版の第1作の『ゴジラ』が上映された時、アメリカ各地のバーで【ゴジラ】という名前のカクテルが流行りました。ジンベースで、メロンリキュールとアップリリキュール、ブルーキュラソー、あとレモンジュースをタンブラーに入れて、ステアしたものです」

 ちなみに、1998年のハリウッド版ゴジラは、私たちの知っているゴジラではなかった。イグアナみたいな外見で、慌ただしく走り回ったりするのだ。案の定、日本の反応は散々だったらしい。

 ちなみに、父もゴジラとは認めていない。「慌ただしく走り回るゴジラがあるか。そもそも魚を食べるなんて邪道だ」と、言っていた。

 それにしても、ゴジラのカクテルとはね。ゴジラは苦手だけど、カクテルなら話は別だ。

「桐野さん、それは、ぜひ、飲んでみたいですね」と、甘えてみたけれど、
「今日はもう遅いので、またのお楽しみにしましょう」さらりと受け流された。

 二人きりで酔ってみたい気分だったけど、そう言われては仕方がない。残念だけど、これからいくらでもチャンスはあるさ。
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