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甘く危険な果実⑧
しおりを挟む僕は思わず、赤面する。
「ありがとうございます。でも、こんなに反応してしまって、恥ずかしい限りです」
バナナの逞しさは誇らしいけれど、完全に制御できていないことは、プロとしてあるまじきことだろう。
「どうして? 私はうれしいよ」弥生さんはにっこり笑う。「私とだから、気持ちよくなってくれた。そうでしょ?」
「もちろん、その通りですよ。他のお客様ではこんな風にはなりません」
「うれしい」弥生さんは僕の胸に顔をうずめてきた。
セックスの快感だけでなく、相手に快感を与える満足感も味わってもらえた。〈セックス・セラピー〉の効果としては、最高の部類となるだろう。
「お願い。もっと、気持ちよくなって」
バナナをとらえた白い手が再び動き出す。指の腹がかするような愛撫が、僕のリビドーを刺激する。
「シュウくん、男性も乳首が感じるって本当? ネットで読んだんだけど」
どうやら、セックス・マニュアルの類らしい。
「ええ、女性ほどではないですが、敏感な性感帯の一つですよ」
「シュウくんの、なめてもいいかしら? 私、そうしたいの」
知的で清楚な弥生さんが、セクシーな表情になっていた。たまらなく、魅力的だ。
僕は快く頷き、愛撫を受けやすいように、仰向けになる。
弥生さんは右手でバナナに触りながら、上体を僕の上に重ねてきた。僕の胸に顔を寄せると、唇の間からチロリと、きれいなピンク色の舌を出す。
ほどよく湿った舌先が僕の果粒をとらえた。かすかに優しく触れてくる。女性も同じだけど、敏感な部分の強すぎる愛撫は痛みを伴いがちだ。
そのあたり、弥生さんのためらいがちな愛撫は、絶妙な強さだった。いつもならくすぐったいだけなのに、僕は心地好さを覚えていた。
弥生さんは一所懸命に、愛撫してくれた。3年ぶりにセックスをした素人なのだから、もちろん、技術は伴わない。でも、情熱とひたむきさは充分に伝わってくる。
もしかしたら、僕に感謝の気持ちを示そうとしているのかもしれない。そんな弥生さんが、たまらなく、いじらしかった。
もし、今度指名してもらえたら、たっぷりと時間をかけて、男の身体を堪能してもらおう。
弥生さんは僕の果粒をなめながら、上目遣いで僕の表情をうかがってくる。彼女の艶やかな髪をなでながら伝える。
「とても気持ちがいいです。このまま、いってしまうかも」
でも、これは嘘だ。本当は、淡い愛撫では物足りなくなっていた。
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