聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります！もうお父様なんて知りません！

闇の力

サリーの体から抜けた闇の力の一部は、聖剣の力から逃れ、スザンナに集まった。


禍々しい力はリチャードを巨大な獣に変えた。



「きゃはははははは！やっておしまい！あの綺麗な顔を、ズタズタにしてやるのよ！！苦しめて苦しめて、それから殺すの！」

闇の魔力で美貌を取り繕っても、性根の悪さが容姿を歪ませていることに彼女は気づかない。





元々の麗しい容貌は喪われ、巨大な牛の化け物と化したリチャードは血の涙を流しながら、リリーの方へ向かう。






「リリー様っ、」

委員長が僕を庇うように抱きしめ、

「リリー！」


前方で集団と戦っていたチャーリーが僕の方に走る。



チャーリーと委員長。



だめっ。





お願い、こんなことはもうやめよう！





僕の願いが弾けて、聖なる力があふれる。






「リリー、ダメだ、使うな！」



溢れる。




『あぁぁあ…』




ありがとう、とほほ笑みながら牛の化け物は消えた。



だが。






「くぉおおの、りりぃぃぃいいいい！！！！！！！！！！！！！！！！」



血走った眼の黒い女が、禍々しい莫大な闇を背負って、僕のところへ飛んできた。






闇よ！


浄化されて！



「ダメだっ、リリー！これは俺がッ！！！！！！！！！！！」



「ヒッ！」



浄化の光が女を照らし、偽りの姿を解く。顔を火傷しているの？スザンナ。

火傷の傷は浄化とともに消えていく。




だが、恨みの焔は後から後から無尽蔵に彼女の体からあふれる。




「スザンナ！！！！！！！！！！」


光を遮るように、チャーリーが飛び出し、聖剣で闇を払った。

「うぅ！！！！！！！！！ちゃあぁぁぁりぃいいいいいいいいい！」


スザンナが消えるのと同時に、チャーリーの心臓を――――――――――






スザンナの腕が貫通した。









「いやあぁあああああああああああああああああああああ！！！！！！！！！！！！！！！」









闇が晴れ、悪霊は消えた。




みな、城に戻ってくる。






そこには、虫の息のチャーリーを抱きかかえるリリーがいた。






「チャーリー！僕、今、治すから…！」


「い……いぃ、リリーが無事なら、それ……でっ。」






この致命傷を治せば、負担が大きい。

リリーの命をどうにかするくらいなら。

それに、リリーにはベリー王子が…。




「いや、いやぁ、チャーリーがいなきゃやだ！ちゃーり……すきっ…すきなのっ。」





ああ。






「諦めるのはまだ早い。」


ベリーはリリーの隣に座って、手を握った。