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枸櫞の香り
第九話
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俺はリビングのソファに凭れてテレビを観ている。少し離れた一人がけのソファには膝を抱えて同じようにテレビを眺めている巴がいる。
昨夜キスをしてしまった俺は、巴は部屋から出てこないだろうと思ってたし、もし出てきても昨夜のことを怒られたり問い詰められるだろうと覚悟もしていた。なのに当の巴は10時過ぎに遅れて起きてきて、既に居る俺を無視してそこに座ったままこうやってテレビを眺めている。
部屋から出てきてくれただけいい。
目も合わせようとしない巴はやはり怒っているんだろう、そうじゃない方がおかしい。なんも言えなくて俺も黙ってテレビを眺めてる。
でもテレビの内容なんてこれっぽっちも入ってはこない。無表情でボーッとしている巴の横顔を見て、もしかしてまた眠れなかったのかもって思ったら俺のせいで、反省はしている。
でも巴の背中を抱きしめたとき、振り払われなかった。
そしたら気持ちを抑えることができなくて、項に噛み付いてた。そして、キスまでしていたんだ。
あの日、家に帰ると男の靴があった。こんなことは初めてだった。男を俺に会わせるだなんて相当本気か詐欺に遭ってるかだ。
リビングに入ると高級そうなスーツを来たかっこいいおじさんが母親の隣に座って寛いでいた。母子家庭の狭苦しいアパートには似つかない品のある男。母親は俺には向けない女の顔をしていた。
そのおじさんは毎週末来るようになった。本当に付き合っているようだった。海外のお土産もたまにくれて、母親も俺のことを気遣ってくれて嬉しそうにしている。
三ヶ月くらい経った日
「長政くん、君のお母さんと結婚したいと考えている」
当然の流れだった。
「どうぞ」
「長政、いいの?」
「いいもなにも、ママが幸せになるなら」
「君のお母さんを幸せにすると誓うよ、それに君のことも」
二人はお互い見合ってそれはそれは幸せそうに笑ってた。
その後でこのおじさんにも息子がいることを知る。
「巴というんだが、長政くんとは同い年かな。まぁ、物静かなやつで笑いもしないやつだが宜しく頼むよ」
そう聞いて反抗期真っ只中なのかなと思った。しかし次の言葉を聞いて俺はおじさんの息子の人生を垣間見た気がした。
「今度は息子さんとお会いしたいわね」
「巴はいいんだ、空気みたいなもんだと思ってくれ」
自分の再婚に息子の気持ちはお構いなしだった。
「でも、一度は会わないと……」
「あいつと話すことはない」
この物言いに俺はおじさんが帰ったあと母親にぶつけた。
「自分の息子のことあんなふうにいうやつどうなの」
「きっと、反抗期とか男同士ぶつかってる時期なのよ。みんなそうらしいわよ」
「……」
そう云われてしまえば俺は何も言えない、父親と息子の当たり前の関係など知らないからだ。
「入籍前に挨拶はしたいと思ってるから、長政はそんなに考えないで」
ひとりの人間のすべてを知ることはできないし、
その一辺でしか判断をしない。
母親はそれを見てみぬふりをした。
自分の幸せのためか、お金のためか、おそらくどっちもだ。
「それで、引っ越すの?」
「わかんね」
「親の再婚とかキツイ、ママが女の顔するって無理」
「はは……」
麻里が裸でふらふらと床に散乱している下着を拾っては一つずつそれを身に着けていく。俺はベッドでタバコをふかしてその後ろ姿を眺めながら、俺が麻里を抱くように、母親もあのおじさんに抱かれて女の声をあげているんだろうか、などと考えていた。
「長政のママ、美人だもんねぇ」
「おじさんもイケメンだよ」
「えーっ、イケオジ?……じゃぁ、新婚さんだからきっと激しいんだろうねーっ」
下着姿でベッドに戻ってくると俺に跨った。
「長政のママはこうやってイケオジの上に乗って、あんあんってしてんのかな」
麻里がいたずらっぽく首を傾げて口角を上げ、俺のすっかり腑抜けになったものにこすりつける。
「麻里みたいに?」
「そう、こうやって……今もしてるかも?」
擦れ合わせたところは再び繋がりたくてピクリとし始める。麻里は手を伸ばして俺の再び固くなりはじめたものを数回撫で自身の下着を少しだけずらすと一気に挿し込んだ。
「…………あぁ、長政、変態」
俺がタバコを灰皿に押し付けると麻里は腰を動かしながら自分でブラジャーをずらすとたわわな胸がゆさゆさと揺れ、既に散々俺に吸われた突起を俺の顔に近づける。
「ママの情事を想像してこんないやらしくなっちゃうんだからさ」
「うるさい、黙っとけ」
下から突き上げると麻里は顎を上げて一心不乱に腰をくねらせる。
あと数時間後には俺は、あのおじさんの息子に会う。
昨夜キスをしてしまった俺は、巴は部屋から出てこないだろうと思ってたし、もし出てきても昨夜のことを怒られたり問い詰められるだろうと覚悟もしていた。なのに当の巴は10時過ぎに遅れて起きてきて、既に居る俺を無視してそこに座ったままこうやってテレビを眺めている。
部屋から出てきてくれただけいい。
目も合わせようとしない巴はやはり怒っているんだろう、そうじゃない方がおかしい。なんも言えなくて俺も黙ってテレビを眺めてる。
でもテレビの内容なんてこれっぽっちも入ってはこない。無表情でボーッとしている巴の横顔を見て、もしかしてまた眠れなかったのかもって思ったら俺のせいで、反省はしている。
でも巴の背中を抱きしめたとき、振り払われなかった。
そしたら気持ちを抑えることができなくて、項に噛み付いてた。そして、キスまでしていたんだ。
あの日、家に帰ると男の靴があった。こんなことは初めてだった。男を俺に会わせるだなんて相当本気か詐欺に遭ってるかだ。
リビングに入ると高級そうなスーツを来たかっこいいおじさんが母親の隣に座って寛いでいた。母子家庭の狭苦しいアパートには似つかない品のある男。母親は俺には向けない女の顔をしていた。
そのおじさんは毎週末来るようになった。本当に付き合っているようだった。海外のお土産もたまにくれて、母親も俺のことを気遣ってくれて嬉しそうにしている。
三ヶ月くらい経った日
「長政くん、君のお母さんと結婚したいと考えている」
当然の流れだった。
「どうぞ」
「長政、いいの?」
「いいもなにも、ママが幸せになるなら」
「君のお母さんを幸せにすると誓うよ、それに君のことも」
二人はお互い見合ってそれはそれは幸せそうに笑ってた。
その後でこのおじさんにも息子がいることを知る。
「巴というんだが、長政くんとは同い年かな。まぁ、物静かなやつで笑いもしないやつだが宜しく頼むよ」
そう聞いて反抗期真っ只中なのかなと思った。しかし次の言葉を聞いて俺はおじさんの息子の人生を垣間見た気がした。
「今度は息子さんとお会いしたいわね」
「巴はいいんだ、空気みたいなもんだと思ってくれ」
自分の再婚に息子の気持ちはお構いなしだった。
「でも、一度は会わないと……」
「あいつと話すことはない」
この物言いに俺はおじさんが帰ったあと母親にぶつけた。
「自分の息子のことあんなふうにいうやつどうなの」
「きっと、反抗期とか男同士ぶつかってる時期なのよ。みんなそうらしいわよ」
「……」
そう云われてしまえば俺は何も言えない、父親と息子の当たり前の関係など知らないからだ。
「入籍前に挨拶はしたいと思ってるから、長政はそんなに考えないで」
ひとりの人間のすべてを知ることはできないし、
その一辺でしか判断をしない。
母親はそれを見てみぬふりをした。
自分の幸せのためか、お金のためか、おそらくどっちもだ。
「それで、引っ越すの?」
「わかんね」
「親の再婚とかキツイ、ママが女の顔するって無理」
「はは……」
麻里が裸でふらふらと床に散乱している下着を拾っては一つずつそれを身に着けていく。俺はベッドでタバコをふかしてその後ろ姿を眺めながら、俺が麻里を抱くように、母親もあのおじさんに抱かれて女の声をあげているんだろうか、などと考えていた。
「長政のママ、美人だもんねぇ」
「おじさんもイケメンだよ」
「えーっ、イケオジ?……じゃぁ、新婚さんだからきっと激しいんだろうねーっ」
下着姿でベッドに戻ってくると俺に跨った。
「長政のママはこうやってイケオジの上に乗って、あんあんってしてんのかな」
麻里がいたずらっぽく首を傾げて口角を上げ、俺のすっかり腑抜けになったものにこすりつける。
「麻里みたいに?」
「そう、こうやって……今もしてるかも?」
擦れ合わせたところは再び繋がりたくてピクリとし始める。麻里は手を伸ばして俺の再び固くなりはじめたものを数回撫で自身の下着を少しだけずらすと一気に挿し込んだ。
「…………あぁ、長政、変態」
俺がタバコを灰皿に押し付けると麻里は腰を動かしながら自分でブラジャーをずらすとたわわな胸がゆさゆさと揺れ、既に散々俺に吸われた突起を俺の顔に近づける。
「ママの情事を想像してこんないやらしくなっちゃうんだからさ」
「うるさい、黙っとけ」
下から突き上げると麻里は顎を上げて一心不乱に腰をくねらせる。
あと数時間後には俺は、あのおじさんの息子に会う。
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