22 / 167
第22話 本当の意味で強く
しおりを挟む
「学生の時から、偶に耳にはしていたんだ……人間、恋をすると弱くなると」
(…………毎度思うんだが、それはどう考えてもその人次第。もしくは、初めて恋人という存在が出来たからこそ、そっちだけに集中してしまうんじゃないのか?)
過去を振り返った結果、真剣に恋愛をして……恋人が出来たことがない経験がないため、偉そうに断言することは出来ない。
ただ、前世とは全く違う世界で今を生きているからこそ、一つ纏まった考えがあった。
「その話題に関しては、やはりその人の気持ち次第かと。ただ……自分は、戦闘職の者であれば……あまり本業が疎かになることはないかと」
「……理由を訊いても良いかな」
「物凄く単純な話ですよ。だって……好きな人を、自分の手で守りたいと思いませんか」
「っ!!!!!!」
この世界では、物凄く死が身近にある。
加えて、タルダとタルダの想い人はどちらも戦闘職。
互いにモンスターと、盗賊などの敵と戦って死ぬ可能性がある。
「好きな人ほど、守りたいという想いが強くなるかと。そういった存在が……恋人や家族など、守りたい存在が出来た奴は弱くなると言う人は確かにいます。ただ……それは守る術を知らない、知ろうとしないからではないかと、個人的には思います」
「………………マスターは、本当にこちらの事情まで汲めるんですね」
「冒険者として活動していると、貴族出身の冒険者と一緒に仕事をすることもあるので」
「そうか……大丈夫ですか? 冒険者という道を選んだとしても、貴族はある程度のプライドを持っています」
「そうですね。なんと言いますか……同世代、歳が近い同業者たちから嫌われるのは今もですか、ある程度対処法は解っていましたので」
決して難しい方法ではなく、高いトーク力が必要だったわけではない。
ただ……大勢の同業者たちが居る前で、真正面から叩き潰せば良い。
相手が若ければ若い程、バカにしてきた分を試合で発揮……おちょくりながら倒すことも出来たが、そういった方法で倒してしまうと、色々と後が怖いと考えていたアスト。
その考えは当たっており、ぶっちゃけどちらの倒し方であっても貴族出身の者からすれば侮辱された感じるかもしれないが……正々堂々と真正面から叩き潰されたとなれば、ただ弱かった……そう思われるだけで済む。
「タルダさんは……そういった部分をうっかり忘れてしまうタイプではないと思います」
「……あり得ないとは思いますけど、上手くいって……他から恨みを買うのだけは避けたいですね」
まだ切っ掛けの手紙すら遅れていないのに、先を考え過ぎ……とはツッコまなかった。
「タルダさんの想い人は、それほど魅力的な方なんですね」
「はい……風で聞いた噂なんですが、既に正妻がいる方から、側室にならないかと提案されたことがあるらしく」
「な、なるほど…………それは、下手すれば恨みを買ってしまうかもしれませんね」
婚約破棄させたり、婚約者を寝取ったりしようとしている訳ではない。
タルダはただ、正当な手順を踏んで想い人に告白しようと考えているだけ。
それが上手くいっても……子爵家の令息と、侯爵家の令嬢が結婚した……タルダが長男ではないということもあり、以前話した通りそれ相応の功績を手に入れれば、相手の家に認められて結婚というのは険しい道のりではあるが、不可能ではない。
ちょっと珍しく、何も知らない者たちが聞けば、ちょっとロマンチックなラブストーリーといった程度の話。
ただ……どんな世界にも、ささいな事で暴走するバカは居る。
(ぶっちゃけた話、転生者で……日本っていう基本的に平和な国で生きてきた俺からすれば、これから共に戦う……背中を預ける相手に喧嘩を売ってくるってのが、未だに違和感というか、信じられないって思う部分があるんだよな~)
こういった件に関して考え出すきりがないため、切り替えてタルダへのアドバイスに集中。
「やはり、物理的に強くなるのが一番大切かと。その…………貴族の事情は詳しくありませんが、タルダさんが想い人と上手くいっても、想い人さんの実家に挨拶に行って……私に、僕に、俺に勝てなければ娘はやらんと立ちふさがる男性陣がいるかもしれません」
「…………………いた。いや、話を聞いただけなんだけど、確かに……僕の知人に、そういった試練を体験した人がいた…………うん、絶対にそうなるとは限らないけど、まず物理的に強くなることが一番必要だね」
「……それと、これは騎士であるタルダさんにはあまり受け入れられないかもしれませんが、冒険者としての私から一つ……上手く、逃げ切る手段を持っていた方が良いかと」
「っ…………信念を、曲げなければならないと」
「敗北が濃厚になったとしても、その脅威を必ず伝えなければなりません。情報は大きな武器ですから」
多少なりとも騎士と関わったことがあるからこそ、騎士を目指す者の……騎士の精神は理解していた。
それでも……本当の意味でタルダが強くなろうとしているのであれば、アストはどうしても伝えておきたかった。
(…………毎度思うんだが、それはどう考えてもその人次第。もしくは、初めて恋人という存在が出来たからこそ、そっちだけに集中してしまうんじゃないのか?)
過去を振り返った結果、真剣に恋愛をして……恋人が出来たことがない経験がないため、偉そうに断言することは出来ない。
ただ、前世とは全く違う世界で今を生きているからこそ、一つ纏まった考えがあった。
「その話題に関しては、やはりその人の気持ち次第かと。ただ……自分は、戦闘職の者であれば……あまり本業が疎かになることはないかと」
「……理由を訊いても良いかな」
「物凄く単純な話ですよ。だって……好きな人を、自分の手で守りたいと思いませんか」
「っ!!!!!!」
この世界では、物凄く死が身近にある。
加えて、タルダとタルダの想い人はどちらも戦闘職。
互いにモンスターと、盗賊などの敵と戦って死ぬ可能性がある。
「好きな人ほど、守りたいという想いが強くなるかと。そういった存在が……恋人や家族など、守りたい存在が出来た奴は弱くなると言う人は確かにいます。ただ……それは守る術を知らない、知ろうとしないからではないかと、個人的には思います」
「………………マスターは、本当にこちらの事情まで汲めるんですね」
「冒険者として活動していると、貴族出身の冒険者と一緒に仕事をすることもあるので」
「そうか……大丈夫ですか? 冒険者という道を選んだとしても、貴族はある程度のプライドを持っています」
「そうですね。なんと言いますか……同世代、歳が近い同業者たちから嫌われるのは今もですか、ある程度対処法は解っていましたので」
決して難しい方法ではなく、高いトーク力が必要だったわけではない。
ただ……大勢の同業者たちが居る前で、真正面から叩き潰せば良い。
相手が若ければ若い程、バカにしてきた分を試合で発揮……おちょくりながら倒すことも出来たが、そういった方法で倒してしまうと、色々と後が怖いと考えていたアスト。
その考えは当たっており、ぶっちゃけどちらの倒し方であっても貴族出身の者からすれば侮辱された感じるかもしれないが……正々堂々と真正面から叩き潰されたとなれば、ただ弱かった……そう思われるだけで済む。
「タルダさんは……そういった部分をうっかり忘れてしまうタイプではないと思います」
「……あり得ないとは思いますけど、上手くいって……他から恨みを買うのだけは避けたいですね」
まだ切っ掛けの手紙すら遅れていないのに、先を考え過ぎ……とはツッコまなかった。
「タルダさんの想い人は、それほど魅力的な方なんですね」
「はい……風で聞いた噂なんですが、既に正妻がいる方から、側室にならないかと提案されたことがあるらしく」
「な、なるほど…………それは、下手すれば恨みを買ってしまうかもしれませんね」
婚約破棄させたり、婚約者を寝取ったりしようとしている訳ではない。
タルダはただ、正当な手順を踏んで想い人に告白しようと考えているだけ。
それが上手くいっても……子爵家の令息と、侯爵家の令嬢が結婚した……タルダが長男ではないということもあり、以前話した通りそれ相応の功績を手に入れれば、相手の家に認められて結婚というのは険しい道のりではあるが、不可能ではない。
ちょっと珍しく、何も知らない者たちが聞けば、ちょっとロマンチックなラブストーリーといった程度の話。
ただ……どんな世界にも、ささいな事で暴走するバカは居る。
(ぶっちゃけた話、転生者で……日本っていう基本的に平和な国で生きてきた俺からすれば、これから共に戦う……背中を預ける相手に喧嘩を売ってくるってのが、未だに違和感というか、信じられないって思う部分があるんだよな~)
こういった件に関して考え出すきりがないため、切り替えてタルダへのアドバイスに集中。
「やはり、物理的に強くなるのが一番大切かと。その…………貴族の事情は詳しくありませんが、タルダさんが想い人と上手くいっても、想い人さんの実家に挨拶に行って……私に、僕に、俺に勝てなければ娘はやらんと立ちふさがる男性陣がいるかもしれません」
「…………………いた。いや、話を聞いただけなんだけど、確かに……僕の知人に、そういった試練を体験した人がいた…………うん、絶対にそうなるとは限らないけど、まず物理的に強くなることが一番必要だね」
「……それと、これは騎士であるタルダさんにはあまり受け入れられないかもしれませんが、冒険者としての私から一つ……上手く、逃げ切る手段を持っていた方が良いかと」
「っ…………信念を、曲げなければならないと」
「敗北が濃厚になったとしても、その脅威を必ず伝えなければなりません。情報は大きな武器ですから」
多少なりとも騎士と関わったことがあるからこそ、騎士を目指す者の……騎士の精神は理解していた。
それでも……本当の意味でタルダが強くなろうとしているのであれば、アストはどうしても伝えておきたかった。
293
あなたにおすすめの小説
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる