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第23話 考え過ぎたら禿げる
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「兄ちゃん、美味かったぜ」
「ありがとうございます」
丁度会計金額を受け取り、本日最後の客が帰っていく。
(……あの日以降、タルダさんは来なくなったな)
身分違い、と言えなくもない恋をしているブルームーン好きの騎士、タルダ。
カクテル言葉を知っているアストからすれば、この先彼がどういった人生を送るのか、ハラハラドキドキで一杯である。
そんなタルダがミーティアに訪れなくなってから既に十五日が経過。
基本的にアストが属するコミュニティでは、騎士に関する情報が殆どは言って来ないので、ここ最近どういった風に過ごしているのか、全く解らない。
(でも、会計の時はとても気合の入った顔をしてたし…………とりあえず、前を向いて目標に突き進もうと決めたんだよな)
これから多くの客と出会っていくことを考えれば、一人の客の今後に一々深く悩んでいられない。
悩み過ぎると若禿げになってしまう。
(この先どうなるか凄い気になるけど、俺もそろそろ次の街に移動しないとな)
アストはバーに訪れてくれたタルダ以外の騎士に、彼への伝言を頼むことなく、いつも通り商人の護衛を依頼を受けて、新しい街へと旅立った。
「アストさん」
「どうした?」
護衛中、アストは珍しく自身より歳下で……なおかつ、才能ある有望株のDランク冒険者から、初対面で敵意や嫉妬心を向けられることなく声を掛けられた。
「……どうやったら、女の人にモテますか」
「………………それ、俺に質問しても良いのか? というか、合ってるか?」
現在仕事中ではあるが、多少のお喋りは構わないと思い、会話を続ける。
「はい、合ってます。ギルド内で偶にアストさんの話が出るんですけど、女性冒険者や受付嬢の中でアストさんに気がある人は多いみたいなので」
「そ、そうか」
アストはあまり冒険者ギルド内に長居することはなく、夕食は殆どギルドに併設されている酒場以外の場所で食べている。
なので、そういった異性の冒険者や受付嬢たちの会話内容などはあまり耳に入ってこない。
「グルタは、女性にモテたいのか」
「…………今まで、冒険者として活躍すればモテるのかなって、思って活動してたところはあります」
間違ってはいない。
まだ純情な青年、グルタの考えは間違っていない。
グルタは将来有望なルーキーの一人であり、体格は恵まれているとは断言出来ないが、まだこれから成長する可能性を十分秘めている。
顔は…………決して悪くない。
「まぁ、あれだな。確かにそれは、男が頑張る理由の一つというか、目標というか……ですよね」
「はっはっは!!! そうだな、その気持ちはすげぇ解るぜ」
共に護衛依頼を受けた三十過ぎの体格の良いおっさん冒険者は、アストから振られた話題に笑いながら同意。
「つってもグルタ、あれだぜ~~~。お前は将来有望だから、お前じゃなくてお前が将来手に入れる金を見て近寄ってくる奴だっている筈だぜ~」
「っ……か、金目的という奴ですか」
「そうそう。俺も……まぁグルタほど勢いがあった訳じゃねぇけど、それなりに持ってた頃、一回いてぇ目にあったからな~~~」
見栄を張っている訳ではなく、このベテランオッサン冒険者は本当に大金をとんずらされたことがあった。
「グルタ。モテたいっていう想いは、確かに男らしい原動力だ。ただ、モテたからといって幸せになるとも限らない」
「アストさんも、今幸せじゃないんですか?」
「お、俺か? いや、俺は………………あれだな、こう……清く正しいを売りにしてる冒険者ではないと言うか……ちょっと言葉がおかしいか? とにかく、めちゃくちゃ遊んでいる訳ではないが、特定の人をつくることなくフラフラと遊んでるんだ」
一つの街、もしくは地域に定着しないため、恋人などつくろうとも思わっていないアスト。
基本的に夜の街で発散することが多いが、女性冒険者や受付嬢から誘われることもあるので、そういったケースで発散することもある。
「……ば、バーテンダーとしても活動してるからそ、そんな感じで女性と接することが出来るんですか???」
「それはどうなんだろうな? 個人的には、あまりバーに来る客とはそういう関係にならないように努めてるけどな」
事前に決めていた……というよりは、前世でバーで働き始めた頃から、正社員のバーテンダーから客とはそういう関係になるなよ、と口酸っぱく言われていた。
アスト自身、立ってるだけでモテるほど整った顔は持っていなかったため、特にそういったアプローチを受けることはなかったが……異世界で再びバーテンダーとして働き始めてからも、なるべく最初にバー客として知り合った女性とはそういった関係にならないように努めてきた。
「…………とはいえ、あれだ。まだ十八の俺が君にこういう事を言うのは変だと思うが、変に焦らない方が良い。まだ若いんだからな」
「だっはっは!!!!! 本当にアストが言うことじゃねぇな」
「だから解ってますって。それで、グルタが本当にモテたいのか……それとも遊びたいのか。モテたとしても、直ぐに運命の人だと思える女性に出会って、一途に生きるかもしれない」
「っ……俺みたいな若造が、まだまだ変に悩むのは早いってことですね!!!! 俺、まずは冒険者としてもっともっと頑張ります!!!!!!」
「あっ、うん……そうか」
前世でバーで働き始め、そして今世でもバーテンダーとして働き始めて五年以上が経過した今でも……言葉選びは本当に難しいと実感するアストだった。
「ありがとうございます」
丁度会計金額を受け取り、本日最後の客が帰っていく。
(……あの日以降、タルダさんは来なくなったな)
身分違い、と言えなくもない恋をしているブルームーン好きの騎士、タルダ。
カクテル言葉を知っているアストからすれば、この先彼がどういった人生を送るのか、ハラハラドキドキで一杯である。
そんなタルダがミーティアに訪れなくなってから既に十五日が経過。
基本的にアストが属するコミュニティでは、騎士に関する情報が殆どは言って来ないので、ここ最近どういった風に過ごしているのか、全く解らない。
(でも、会計の時はとても気合の入った顔をしてたし…………とりあえず、前を向いて目標に突き進もうと決めたんだよな)
これから多くの客と出会っていくことを考えれば、一人の客の今後に一々深く悩んでいられない。
悩み過ぎると若禿げになってしまう。
(この先どうなるか凄い気になるけど、俺もそろそろ次の街に移動しないとな)
アストはバーに訪れてくれたタルダ以外の騎士に、彼への伝言を頼むことなく、いつも通り商人の護衛を依頼を受けて、新しい街へと旅立った。
「アストさん」
「どうした?」
護衛中、アストは珍しく自身より歳下で……なおかつ、才能ある有望株のDランク冒険者から、初対面で敵意や嫉妬心を向けられることなく声を掛けられた。
「……どうやったら、女の人にモテますか」
「………………それ、俺に質問しても良いのか? というか、合ってるか?」
現在仕事中ではあるが、多少のお喋りは構わないと思い、会話を続ける。
「はい、合ってます。ギルド内で偶にアストさんの話が出るんですけど、女性冒険者や受付嬢の中でアストさんに気がある人は多いみたいなので」
「そ、そうか」
アストはあまり冒険者ギルド内に長居することはなく、夕食は殆どギルドに併設されている酒場以外の場所で食べている。
なので、そういった異性の冒険者や受付嬢たちの会話内容などはあまり耳に入ってこない。
「グルタは、女性にモテたいのか」
「…………今まで、冒険者として活躍すればモテるのかなって、思って活動してたところはあります」
間違ってはいない。
まだ純情な青年、グルタの考えは間違っていない。
グルタは将来有望なルーキーの一人であり、体格は恵まれているとは断言出来ないが、まだこれから成長する可能性を十分秘めている。
顔は…………決して悪くない。
「まぁ、あれだな。確かにそれは、男が頑張る理由の一つというか、目標というか……ですよね」
「はっはっは!!! そうだな、その気持ちはすげぇ解るぜ」
共に護衛依頼を受けた三十過ぎの体格の良いおっさん冒険者は、アストから振られた話題に笑いながら同意。
「つってもグルタ、あれだぜ~~~。お前は将来有望だから、お前じゃなくてお前が将来手に入れる金を見て近寄ってくる奴だっている筈だぜ~」
「っ……か、金目的という奴ですか」
「そうそう。俺も……まぁグルタほど勢いがあった訳じゃねぇけど、それなりに持ってた頃、一回いてぇ目にあったからな~~~」
見栄を張っている訳ではなく、このベテランオッサン冒険者は本当に大金をとんずらされたことがあった。
「グルタ。モテたいっていう想いは、確かに男らしい原動力だ。ただ、モテたからといって幸せになるとも限らない」
「アストさんも、今幸せじゃないんですか?」
「お、俺か? いや、俺は………………あれだな、こう……清く正しいを売りにしてる冒険者ではないと言うか……ちょっと言葉がおかしいか? とにかく、めちゃくちゃ遊んでいる訳ではないが、特定の人をつくることなくフラフラと遊んでるんだ」
一つの街、もしくは地域に定着しないため、恋人などつくろうとも思わっていないアスト。
基本的に夜の街で発散することが多いが、女性冒険者や受付嬢から誘われることもあるので、そういったケースで発散することもある。
「……ば、バーテンダーとしても活動してるからそ、そんな感じで女性と接することが出来るんですか???」
「それはどうなんだろうな? 個人的には、あまりバーに来る客とはそういう関係にならないように努めてるけどな」
事前に決めていた……というよりは、前世でバーで働き始めた頃から、正社員のバーテンダーから客とはそういう関係になるなよ、と口酸っぱく言われていた。
アスト自身、立ってるだけでモテるほど整った顔は持っていなかったため、特にそういったアプローチを受けることはなかったが……異世界で再びバーテンダーとして働き始めてからも、なるべく最初にバー客として知り合った女性とはそういった関係にならないように努めてきた。
「…………とはいえ、あれだ。まだ十八の俺が君にこういう事を言うのは変だと思うが、変に焦らない方が良い。まだ若いんだからな」
「だっはっは!!!!! 本当にアストが言うことじゃねぇな」
「だから解ってますって。それで、グルタが本当にモテたいのか……それとも遊びたいのか。モテたとしても、直ぐに運命の人だと思える女性に出会って、一途に生きるかもしれない」
「っ……俺みたいな若造が、まだまだ変に悩むのは早いってことですね!!!! 俺、まずは冒険者としてもっともっと頑張ります!!!!!!」
「あっ、うん……そうか」
前世でバーで働き始め、そして今世でもバーテンダーとして働き始めて五年以上が経過した今でも……言葉選びは本当に難しいと実感するアストだった。
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