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兄の物語[119]こみ上げる嬉しさ

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「ふぅ~~~~。ったく、本当に最後の最後に面倒な奴が現れたもんだぜ」

脚を潰し終えれば、オルトロスの機動力は死んだも同然。
再生能力を有していないオルトロスに残された攻撃方法は口からのブレスのみとなった。

当然ながら……優秀なサポートありとはいえ、前衛一人で立ち回ったガンツを相手に、機動力が死んだ状態で同行できる訳もなく、二つの首を斬り落とされ、一人も食い殺すことが出来ずに討伐された。

「お疲れ様です、ガンツさん」

「おぅよ。カルディアもサポートありがとな。ペトラとミシェルもマジで助かったぜ」

「後衛として、当然の事をしたまでです」

「わ、私も同じです」

「はっはっは! 本当に謙虚な奴らだな~~~~」

優秀過ぎで可愛げがないぜと笑うガンツだが、三人が謙虚な態度なのは性格以外の理由がちゃんとあった。

(Bランク冒険者が、優れた戦闘者なのは当然……しかし、改めてその強さを認識させられたな)

(Bランク帯でも私たちの実力は十分通用すると思っていたけれど………………ふふ。慢心してはいけないと、良い刺激になったわ)

(多分、ガンツさんが上手く合わせてくれてた…………それじゃあ、駄目)

改めて、一流と言われるランクに辿り着いた冒険者の強さを知った。

「ありがとうございます、ガンツさん」

「試験監督として、ちょっとは頑張らねぇとな。これまでお前らが優秀過ぎたせいで、マジで俺のやる事なかったからな」

「いやいや、マジで凄かったすよガンツさん!!!」

「うんうん。バルガスの言う通り、経験値の強さ? を感じさせられました~~」

「……うちはまだ戦れたけど、確かに思った以上に強かったとは思いました」

「なっはっは!!! お前らぁ~~~、そんなに褒めたからって、何も出てこねぇぞ」

そう言いながらも、ガンツは街に戻ればオルトロスの素材を売却した金で、全員に飯を奢ろうと決めた。



「んじゃ、クライレット。頼むぜ」

「えっ、俺ですか?」

「お前に決まってるだろ」

周囲を見渡すも、不服な者は一人だけいるも、他は全員納得していた。

「……分かりました。では……俺たちのこれまでに、そして試練を乗り越えてこれからに……乾杯!!!」

「「「「「「「乾杯!!!!!!」」」」」」」

一名だけ不服な者もいたが……ジェリスも約クソ気味に声を出し、仲間たちと杯を重ねた。

現在、クライレットたちは冒険者ギルドに諸々の報告を終え、酒場で宴会を開いていた。

「ぷは~~~~~、おかわり!!!!」

「うちも!!!!」

「俺も貰おう」

「私もお願いしま~す」

「んじゃ、俺ももう一杯!」

バルガス、ジェリス、カルディア、フローラ、ガンツの五人は最初の一杯を一気に飲み干し、直ぐに二杯目を注文。

「フローラはともかく、バルガス。そんなハイペースで呑んで潰れても知らないわよ」

「はっはっは!!!! 良いじゃねぇか。宴会なんだからよ!!」

これまで何度繰り返してきたか分からないやり取り。
バルガスに対して、そんな事言うだけ無駄だというのは解っている。

解ってはいるが……それでも、つい口にしてしまう。
それだけ何度繰り返した過去を思い出せない程、ペトラも今回の勝利に嬉しさを感じていた。

「ペトラ~、今日はペトラも一杯呑んじゃいなよ~~」

「……そうね」

「おっ! 良い呑みっぷり!!!」

二口目で残りを呑み干し、ペトラも二杯目を注文。

まだ……結果は出ていない。
自分たちがBランクに昇格したという結果は出ていないが、それでもバジリスクを相手に自分の役割を果たせた自覚はあった。

(そうよね……今日ぐらい、パーッと好きに食べて呑んで良いわよね)

最終目標にはまだ辿り着いてない。
頂きの高さを考えれば、まだ五合目といったところ。

それでも……こみ上げる嬉しさを抑えることはできなかった。
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