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兄の物語[120]お金は大事

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「にしてもあれだな、クライレットのバジリスクの意識を引き寄せるあの動きは良かったな」

全員が良い動きをしていた。
それは間違いないのだが、全体を見ていたガンツが特に良いと思った行動はそこだった。

「そうですか? 俺としては、あそこであれを武器として使わなかったのは、減点対象かと思ったんですが」

「ん~~~……そこまで戦況がヤバい、総崩れって訳でもなかったからな。それに、メインアタッカーはクライレットじゃなかったんだ。それを考えりゃあ、あぁいう使い方をしたって時点で、ナイス判断だと思うぜ」

基本的に鳳竜は緊急時にしか使うつもりがなかった。
そう考えていたからこそ、自身の殺気と武器が放つ圧を合わせて意識を引き寄せるという手段に至った。

「……ねぇ、あれってなんだったの」

「僕の切り札、としか言えないかな」

二人が会話の中で指すあれという存在に、ジェリスはずっと気になっていた。

そして持ち主であるクライレットとしては、本当に自身の最強の切り札だと認識しているからこそ、容易に話すことが出来ない。

「切り札ねぇ~~~~」

「何をそんなに気になってるんだ、ジェリス」

「カルディアは気にならなかったの? クライレットが一瞬だけ取り出したあれ」

「……気になるか気にならないかで言えば、気になる。ただ、誰でも基本的に見せたくない切り札というものはあるだろう」

言葉にした通り、カルディアもほんの少しだけクライレットが取り出したあれと呼ばれている武器に興味があった。

それでもクライレットの人となり、実力を知っていくなかで、あぁいった奥の手と呼べる武器を有していてもおかしくないという思いを持っていた。

「それに、お前の場合は気になると言うよりも、クライレットがあそこまで存在感を持つ武器を持っていることに嫉妬してるだけだろ」

「うっ……解ってるなら買ってくれたっていいじゃん」

「バカを言うな。散財するのが眼に見えている」

パーティーの貯金は、当然ながらカルディアが握っている。
不当に利益を搾取し、裏で贅沢をしているといったことはない。

カルディアも出来れば貯蓄管理など、面倒なことはしたくない。
それでも……ジェリスは金使いが物凄く大雑把であるため、万が一のことを考えれば、単純に得た報酬や買取金額は二分割して個人で管理して……とは出来なかった。

「はぁ~~~~…………それじゃあ、クライレットはどうやってあんな武器買えたのよ」

「パーティーを組んだ時から、パーティーでの貯金を行っていたから……としか言えないね」

クライレットは割と食費に関してはケチらないタイプではあるが、それ以外には殆ど金を使わない。

スピードタイプであるため、実戦で怪我を負うことも少ないため、怪我を治すポーション代も掛からない。
クライレット個人の貯金もそれなりに貯まっていた。

「後は……良い鍛冶師を見つける? そこら辺が大事かな」

「それって、結局は運ってことじゃない」

「バカを言うな。貯金すればひとまず必要な金は用意出来る」

「じゃあ買ってよ! 散財するって言うけど、結構溜まってるでしょ」

カルディアとパーティーを組んでから受けてきた依頼の数、討伐した魔物の素材などを考えれば、ジェリスがそう思うのも無理はなかった。

「あのなぁ……基本的にはお前の武器の替えとかで使ってるんだ。逆に俺がそろそろ新しい杖を購入しても良いぐらいだ」

「うぐっ!!!!」

魔法使いは、基本的に杖がなくとも魔法を発動することが出来る。
それでも、杖を装備して魔法を発動することで得られる恩恵は決してバカに出来ない。

元々カルディアはそこそこ高品質の杖を持っていたので我慢していたが……そろそろ買い換えたいと思っていた。

「この話はもう終わりだ。宴会で面倒な金の話などしたくない……ぷは~~~!! すまない、もう一杯同じのを」

「かしこまりました~~」

今のところ、再度その辺りを交渉できる交渉術はジェリスになく、ひとまず諦めるしかなかった。
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