スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
902 / 1,390

九百話 理解している

しおりを挟む
ファルが体色が半分ほど黒いワイバーンを倒し終えた後、本来はもう数日アンドーラ山岳で探索を行うつもりだったが、アラッドたちはゴルドスへと戻り……フローレンスたちを探した。

「まだ戻ってきてない、か」

だが、残念なことにフローレンスたちはまだゴルドスに戻ってきていなかった。

「……すれ違いになっても困る。フローレンスたちが戻ってくるまで、待つとしよう」

再度アンドーラ山岳へと向かい、フローレンスたちを探すということも出来なくはないが、すれ違いになっては困るため、アラッドたちはゴルドスで戻ってくるのを待つことにした。

そして数日後、三人の耳にフローレンスたちが戻ってきたという情報が入り、アラッドたちは速足でフローレンスたちの元へと向かった。

「フローレンス!!」

「アラッド? そんな焦った顔をしてどうしまっ!?」

「話がある」

よくある構図である、焦りを感じていた者が、探していた人物を見つけ……名前を呼び、手を掴む。
そして話があると伝える。

よくある構図、よくある光景ではあるが……アラッドの内心を知らない者たちからすれば、彼女をどこかに連れて行こうとしてるのではないか。
他人には知られたくない事を、伝えようとしているのではないか。

そう思われてもおかしくない構図でもあった。

「お前らにも話がある」

だが、この瞬間……ほんの少しだけフローレンスの心に生まれた淡い気持ちが霧散。

珍しく浮かんでいる焦りの表情に、微かに不安が混ざっているのを見抜いた。

「分かりました。直ぐに移動しましょう」

今回はわざわざ個室のある店に移動するといった手間は掛けず、アラッドたちが泊っている宿へと移動。

やや人数が多いものの、アラッドたちはそれなりの宿に泊っているということもあり、すし詰め状態になることはなかった。

「まず、俺たちは今回の探索で、体色の半分が黒いワイバーンに遭遇した」

「っ!! そうでしたか。実は、私たちも体毛が黒に近い灰色のラバーゴートに遭遇しました」

灰色、というところで判断に迷うも、この場で自分たちにそれを伝えるという事は、同じラバーゴートと比べてワンランク上の強さを有していたのだと解る。

「そうか……誰も消えてないところを見るに、無事に討伐出来たんだな」

「えぇ。それで、これからが本題でしょうか」

「そうだ。まず、以前対峙した風竜がワイバーンたちに、冒険者や騎士の狩り方を教えていたと伝えただろ。もし……今回俺たちが狙っている闇竜が同じぐらいの知能を持っていた場合、アンドーラ山岳ではなく、他の場所で戦えと指示を飛ばす可能性があるという考えに至った」

それに何の意味があるのか、どこに恐れる必要があるのか。といった事を口にする者はいなかった。

特にアラッドを嫌っているソルでさえ、唾をごくりと飲み込み……数秒間、動けなかった。

「なるほど……その方法なら、冒険者を襲う場合、確実に殺さなければならないという条件が付きますが……闇竜が適当に力を与えているのではなく、しっかり選び、見定めているのであれば……あり得そうですね」

「そうだろ。それに、強くなる……闇の力を上手く使えるようになる為に相手をするのは、なにも冒険者や騎士じゃなくても構わない」

「……力を与えられたモンスターたちがどこまで考えているかは解りませんが、そうなると噂が広まらない可能性が高そうですね」

普通の体色とは異なるモンスターが現れた。

それは確かに珍しい。
珍しい事に違いはないが……それでも、過去にそういった特異的なモンスターが現れた例はいくつかある。
故に、多くの者が突然変異で生まれた個体なのだろうと、深く考ええることなく片付ける。

「それと、これも俺たちの想像の域でしかないが、闇竜がアンドーラ山岳に生息しているという話は元々あったが、体色が黒いモンスターに関しては、それらしい噂がなかった」

「っ!! ……つまり、闇竜はもう……これ以上他のモンスターに力を与え、支配下に置く必要がなくなったと」

フローレンスの言葉に、アラッドは重々しく首を縦に動かした。

「…………元々、何故そんな事を始めたのかを知れれば良いのですが……まず、私たち人間が住む街を襲おうとしている。そう考えるのが、妥当ですね」

「そうだな。それと、最悪闇竜がワンランク上のドラゴンに進化してると考えておいた方が良い」

そんな標的側にとって都合の良い話があるかと、誰もツッコむ者はいなかった。

「その話を私たちに伝えてくれたという事は、これから……私たちと共に行動して闇竜とその配下を討伐する、という事ですね」

流れから、アラッドがその為に自分たちにあれこれ伝えてくれたのだと解る。

アラッドもなんとなく、自分が伝えたい本題がバレてるだろうとは解っていた。
ただ、それはそれとして、考えを先に読まれるのは……なんとなく気分が良くなかった。

「まぁ、そういう事だ。何体、Bランククラスのモンスターがいるか解らないが、お前の相棒も……相性的に、一人で一体を相手にすることは出来るだろ」

「えぇ、一個人の戦力としてカウントしていただいて構いません」

リーダーであるフローレンスが了承するのであれば……という気持ちだけではなく、ソルたちも事の重大さは理解しているからこそ、アラッドたちと共に行動することをすんなりと受け入れた。
しおりを挟む
感想 483

あなたにおすすめの小説

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

行き遅れ令嬢の婚約者は王子様!?案の定、妹が寄越せと言ってきました。はあ?(゚Д゚)

リオール
恋愛
父の代わりに公爵家の影となって支え続けてるアデラは、恋愛をしてる暇もなかった。その結果、18歳になっても未だ結婚の「け」の字もなく。婚約者さえも居ない日々を送っていた。 そんなある日。参加した夜会にて彼と出会ったのだ。 運命の出会い。初恋。 そんな彼が、実は王子様だと分かって──!? え、私と婚約!?行き遅れ同士仲良くしようって……えええ、本気ですか!? ──と驚いたけど、なんやかんやで溺愛されてます。 そうして幸せな日々を送ってたら、やって来ましたよ妹が。父親に甘やかされ、好き放題我が儘し放題で生きてきた妹は私に言うのだった。 婚約者を譲れ?可愛い自分の方がお似合いだ? ・・・はああああ!?(゚Д゚) =========== 全37話、執筆済み。 五万字越えてしまったのですが、1話1話は短いので短編としておきます。 最初はギャグ多め。だんだんシリアスです。 18歳で行き遅れ?と思われるかも知れませんが、そういう世界観なので。深く考えないでください(^_^;) 感想欄はオープンにしてますが、多忙につきお返事できません。ご容赦ください<(_ _)>

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです

今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。 が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。 アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。 だが、レイチェルは知らなかった。 ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。 ※短め。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

処理中です...