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八百九十九話 速まる鼓動
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「サラマンダーがいるなら、ワイバーンがいても……おかしくない、か」
「そうだね」
現在、アラッドたちの前では体色の半分が黒くなっているワイバーンと、スティームの従魔であるファルが絶賛空中戦を繰り広げている。
例に漏れず、ワイバーンも闇の力を持っており、結果としてサラマンダーと同じく火と闇の力を扱えるようになっている。
「やっぱり、スティームは心配?」
「……正直に言うと、少しだけ心配かな」
当初、スティームはファルと共に戦うつもりだったが、珍しくファルが一人で戦いたいと伝えた。
本当に珍しい申し出ということもあり、スティームは心配の気持ちを残しながらも、相棒の申し出を受け入れた。
「それでも、負けるとは思ってないかな」
体の色が半分ほど黒色に変色していることから、先日ヴァジュラが戦ったサラマンダーよりも闇の力に順応していることが窺える。
身体能力もCランクからBランククラスへと変化しており、火力に関しては火に闇の力が加わったことで、確実にBランククラスのモンスターが放つ攻撃力へと変貌していた。
Bランクモンスターのストームファルコンであるファルとて、油断出来る相手ではない。
しかし……先日、同じ従魔仲間であるヴァジュラが強敵を相手に、怯むことなく挑み、戦い続け……勝利を掴み取った。
ファルはヴァジュラの様な戦闘大好きモンスターではない。
ただ、主人であるスティームの従魔として、相棒でい続ける為には強さが……頼れる強さが必要だという思いに至った。
そのため、今回体色の半分が黒に染まったワイバーンと遭遇した際、主人に自分一人で戦いたいと申し出た。
「良いね~~!! でも、空が飛べるモンスターまで闇の力を持ってるってなると、やっぱり前にアラッドが話してた通り、私たちだけだと万が一がないとは言えなそうね」
ガルーレは空を飛ぶモンスターとの戦闘経験は何度もある。
何度もあるが、それでも決して得意とは言えなかった。
「ワイバーンだから、容易に支配下に置くことが出来たのかな」
「俺はその可能性が高いと思う……が、他の空を飛べるモンスターが闇の力を授かってないとは、断言出来ないな」
自分たちは自分たちで、フローレンスたちはフローレンスたちで削っていけば良い。
そう思っていたアラッドだが、ほんの僅かな不安が生まれた。
(おそらく闇竜が与えたであろう闇の力に関しては、まだまだ解ってないことが多い。戦いだけが、扱う術に長ける唯一の方法なのか、それとも人間みたいに修行もする必要があるのか…………いや、待てよ)
ここで、アラッドは一つ……最悪な予想が頭の中に浮かんでしまった。
「…………」
「どうしたの、アラッド。急に汗が……もしかして、冷や汗ってやつ?」
「アラッド、周囲に僕たちを狙っているモンスターがいるのかい?」
「違う…………俺の憶測ではあるが、闇竜はそれなりの知能を持っていると思うんだ」
アラッドの言葉に、グレイスという存在を知っている二人は、そうだったとしてもおかしくないだろうと思った。
「得た闇の力を上手く扱えるようになる為に、馴染むために……染まる為に、戦いが必要だとして、闇竜がアンドーラ山岳周辺ではなく、他の場所で戦えと……伝えていたらと考えてしまってな」
「ッ……なる、ほど」
そんな予想が浮かんでしまえば、確かに冷や汗をかいてもおかしくない。
同じく、スティームも冷や汗がドバっと流れ始めた。
ルストという風竜が、ワイバーンに効率的に強くなる為に、冒険者たちの狩り方を教えたのだ。
あまり騒ぎが大きくなり過ぎれば、自分たちを討伐しようとする勢力が一気に押し寄せてくるかもしれない。だから、別の場所でモンスターや冒険者を相手に戦うと良い…………そんなアドバイスを送る可能性が、ゼロとは言えなかった。
「い、いやはや……本当に、恐ろしいね」
「全くだ。ルストがワイバーンにしたことも恐ろしいが、今回標的に闇竜は……想像の域を出てはいないが、二倍三倍じゃきかない程恐ろしい存在かもしれない」
「……ねぇねぇ、アラッド。もしかしてだけどさ、ヴァジュラが戦ったサラマンダーは別として、ソルたちが戦った黒い肌のオーガとか、今ファルが戦ってる半分黒いワイバーンは……多分闇の力を与えられてから、それなりに時間が経ってるってことだよね」
「あぁ、おそらくそうだろうな」
「つまりさ、アラッドの予想が当たってたら、闇竜はもうこそこそと動かなくても良いって言うか、別に私たち冒険者に気付かれても良いって考えてるんじゃないかな」
「っ!!! 十分、あり得そうな話、だな」
ガルーレにしては、中々鋭い推察であった。
そしてその推察を聞いたと同時に、アラッドは自分の心臓が速まっているのを感じた。
(既に、十分な数の配下がいる……としたら、いったい何体いるんだ? 黒い肌のオーガに関してはソルたちが倒した。体が半分ほど黒いワイバーンも、ファルが倒す。残りは……三体か四体…………十体かそれ以上いれば、最悪だな)
数十秒後には、ファルが見事一人で体色が半分黒いワイバーンを討伐することにした。
戻って来たファルをアラッドたちを良くやったと、良い戦いだったと褒めるも、どこか暗い雰囲気はぬぐえなかった。
「そうだね」
現在、アラッドたちの前では体色の半分が黒くなっているワイバーンと、スティームの従魔であるファルが絶賛空中戦を繰り広げている。
例に漏れず、ワイバーンも闇の力を持っており、結果としてサラマンダーと同じく火と闇の力を扱えるようになっている。
「やっぱり、スティームは心配?」
「……正直に言うと、少しだけ心配かな」
当初、スティームはファルと共に戦うつもりだったが、珍しくファルが一人で戦いたいと伝えた。
本当に珍しい申し出ということもあり、スティームは心配の気持ちを残しながらも、相棒の申し出を受け入れた。
「それでも、負けるとは思ってないかな」
体の色が半分ほど黒色に変色していることから、先日ヴァジュラが戦ったサラマンダーよりも闇の力に順応していることが窺える。
身体能力もCランクからBランククラスへと変化しており、火力に関しては火に闇の力が加わったことで、確実にBランククラスのモンスターが放つ攻撃力へと変貌していた。
Bランクモンスターのストームファルコンであるファルとて、油断出来る相手ではない。
しかし……先日、同じ従魔仲間であるヴァジュラが強敵を相手に、怯むことなく挑み、戦い続け……勝利を掴み取った。
ファルはヴァジュラの様な戦闘大好きモンスターではない。
ただ、主人であるスティームの従魔として、相棒でい続ける為には強さが……頼れる強さが必要だという思いに至った。
そのため、今回体色の半分が黒に染まったワイバーンと遭遇した際、主人に自分一人で戦いたいと申し出た。
「良いね~~!! でも、空が飛べるモンスターまで闇の力を持ってるってなると、やっぱり前にアラッドが話してた通り、私たちだけだと万が一がないとは言えなそうね」
ガルーレは空を飛ぶモンスターとの戦闘経験は何度もある。
何度もあるが、それでも決して得意とは言えなかった。
「ワイバーンだから、容易に支配下に置くことが出来たのかな」
「俺はその可能性が高いと思う……が、他の空を飛べるモンスターが闇の力を授かってないとは、断言出来ないな」
自分たちは自分たちで、フローレンスたちはフローレンスたちで削っていけば良い。
そう思っていたアラッドだが、ほんの僅かな不安が生まれた。
(おそらく闇竜が与えたであろう闇の力に関しては、まだまだ解ってないことが多い。戦いだけが、扱う術に長ける唯一の方法なのか、それとも人間みたいに修行もする必要があるのか…………いや、待てよ)
ここで、アラッドは一つ……最悪な予想が頭の中に浮かんでしまった。
「…………」
「どうしたの、アラッド。急に汗が……もしかして、冷や汗ってやつ?」
「アラッド、周囲に僕たちを狙っているモンスターがいるのかい?」
「違う…………俺の憶測ではあるが、闇竜はそれなりの知能を持っていると思うんだ」
アラッドの言葉に、グレイスという存在を知っている二人は、そうだったとしてもおかしくないだろうと思った。
「得た闇の力を上手く扱えるようになる為に、馴染むために……染まる為に、戦いが必要だとして、闇竜がアンドーラ山岳周辺ではなく、他の場所で戦えと……伝えていたらと考えてしまってな」
「ッ……なる、ほど」
そんな予想が浮かんでしまえば、確かに冷や汗をかいてもおかしくない。
同じく、スティームも冷や汗がドバっと流れ始めた。
ルストという風竜が、ワイバーンに効率的に強くなる為に、冒険者たちの狩り方を教えたのだ。
あまり騒ぎが大きくなり過ぎれば、自分たちを討伐しようとする勢力が一気に押し寄せてくるかもしれない。だから、別の場所でモンスターや冒険者を相手に戦うと良い…………そんなアドバイスを送る可能性が、ゼロとは言えなかった。
「い、いやはや……本当に、恐ろしいね」
「全くだ。ルストがワイバーンにしたことも恐ろしいが、今回標的に闇竜は……想像の域を出てはいないが、二倍三倍じゃきかない程恐ろしい存在かもしれない」
「……ねぇねぇ、アラッド。もしかしてだけどさ、ヴァジュラが戦ったサラマンダーは別として、ソルたちが戦った黒い肌のオーガとか、今ファルが戦ってる半分黒いワイバーンは……多分闇の力を与えられてから、それなりに時間が経ってるってことだよね」
「あぁ、おそらくそうだろうな」
「つまりさ、アラッドの予想が当たってたら、闇竜はもうこそこそと動かなくても良いって言うか、別に私たち冒険者に気付かれても良いって考えてるんじゃないかな」
「っ!!! 十分、あり得そうな話、だな」
ガルーレにしては、中々鋭い推察であった。
そしてその推察を聞いたと同時に、アラッドは自分の心臓が速まっているのを感じた。
(既に、十分な数の配下がいる……としたら、いったい何体いるんだ? 黒い肌のオーガに関してはソルたちが倒した。体が半分ほど黒いワイバーンも、ファルが倒す。残りは……三体か四体…………十体かそれ以上いれば、最悪だな)
数十秒後には、ファルが見事一人で体色が半分黒いワイバーンを討伐することにした。
戻って来たファルをアラッドたちを良くやったと、良い戦いだったと褒めるも、どこか暗い雰囲気はぬぐえなかった。
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