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八百九十四話 最悪を上回る最悪

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「さて……後は、フローレンスの奴らに伝えないとな」

「ふ~~~~ん?」

「……ガルーレ、なんだよその顔は」

「別に~~? ただ、何だかんだでフローレンスさんに優しいんだな~~って思って」

からかう様な笑みを向けてくるガルーレ。

しかし、アラッドはフローレンスに対してそういった感情はなかった。

「あいつらも同じ相手を標的としてるんだ。標的の戦力が不確かな以上、伝えておいた方が良いだろ」

「りょ~かい。そういう事にしておくよ~~」

「そういう事にしておくってなんだよ。ったく」

その後、アラッドたちは夕食の時間まで街をぶらぶらと散策。

丁度良い時間になってから店を探し始めると、バッタリとフローレンスたちと遭遇した。

「よう」

「えぇ、先日ぶりですね」

「そうだな……なんつーか、かなり疲れてるみたいだな」

目立った怪我を負ってるようには見えない。

だが、フローレンス以外のメンバーの疲労が濃いように感じた。

「少し色々とありまして」

「色々、か…………その色々に関して、答え合わせがしたい」

答え合わせがしたい……つまり、夕食を一緒に食べるぞという誘いである。

「フローレンス、この街で美味い店は知ってるか?」

「幾つか知っていますが」

「そうか、今日は俺が出す。案内してくれ」

「……ふふ、解りました」

ソルとルーナたちはポカーンとした表情を浮かべているが、フローレンスはフローレンスでなんとなくアラッドたちがここ数日で体験した色々を知っており、特に考え込むことなくアラッドたちを案内した。

そして入店後、アラッドたちは個室に入り、それぞれメニューを注文。

「アラッド……結構良い値段してるけど、本当に良いのかい?」

「あぁ、稼いでるからな」

言い切った。
稼いでいるから……人よりも大量に稼いでいるから、高級店でパーティーのメンバー分だけではなく、フローレンスたちの分まで奢っても問題無いと。

因みに、裏のスペースではいつもの様にクロたちがメニュー表を見ながら料理を注文していた。

「では、まず俺たち方から情報を伝える。先日アンドーラ山岳を探索している最中に、闇の力を持ったサラマンダーと遭遇した」

「っ……やはり、他にも居たのですね」

「それは、こっちも同じ気持ちだ。そのサラマンダーとはヴァジュラが戦った。途中まで、闇の力が炎に混ざっている割合は微々たるものだったが、最後の攻防で放ったブレスには、目に見えて闇が混ざっていた」

「そうでしたか……しかし、そちらのサラマンダーはヴァジュラ一人で討伐したのですね」

「あれだけ楽しそうな笑みを浮かべてたら、そりゃしょうもないサポートを入れられるわけがない。万が一の状況に陥っているならともかくな」

基本的にアラッドは最初から一人で戦っていれば、最後まで一人で戦い続け、勝利を掴み取りたい。
ガルーレやスティームも同じような考えを持っているため、結局本当に最後まで誰もヴァジュラをサポートしようとすら思わなかった。

「そうでしたか……では、今度は私たちですね。先日、肌が赤ではなく、黒色のオーガと遭遇しました」

「黒色…………予想通りと言えば、予想通りか。それで、当然の様にそいつは闇の力を使ってきたのか」

「はい、その通りです。加えて、身体能力はBランクモンスターと同等のものでした」

身体能力の変化。

それを聞き、アラッドはますますモンスターが授かった、付与された闇の力に厄介さを感じた。

(完全に馴染めば、身体能力も向上するという訳か……どの程度まで上がるのかは正確に解らないが……最悪の、あのサラマンダーはAランク並みに…………いや、だとしたら付与した側が背負うリスクの方が多い気が)

アラッドは一旦リスク云々の話は置いておき、フローレンスとの会話に戻る。

「オーガがBランクレベルまで身体能力が上がり、更には闇の力まで持つ、か」

「更に、どこで手に入れたのかは解りませんが、並ではない武器を持っていました」

「…………見た感じ、お前が戦った訳じゃないんだろ」

「えぇ、彼女たちが頑張って討伐してくれました」

「ふ~~~ん……まっ、良いんじゃないか」

何の為にフローレンスが今回参加してるんだとツッコミたいところではある。

だが、結果的に後々闇竜と戦うことになれば、同行しているソルやルーナたちがある程度闇の力を付与されたモンスターと戦えなければ、足手纏いとなる。

「武器に関しては、闇竜から渡されたのかもな」

「自身の宝物庫から、何かしらの武器を渡したと」

「多分としか言えないがな…………ふぅーーーー、思ってた以上に厄介な事になってるな」

ただ、同族を従えるだけではない。

亜竜を従えるだけであれば、ストールやルストも行っていた。

だが……今回はまだ正確な情報を得られていないものの、アラッドたちが考えていた最悪を……更に上回る最悪なケースとなっているかもしれない。

そんな重苦しい雰囲気が漂う中、一つ目の料理が届けられた。

「……とりあえず食べようか」

冷めてはお勿体ないという訳で、アラッドは遠慮せず注文した料理を食べてくれと促した。
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