761 / 1,390
七百六十話 早く移動した方が
しおりを挟む
ライホルト達と別れの挨拶を済ませた翌日、アラッドたちは予定通りアルバース王国へと帰宅。
「お疲れ様、アッシュ」
「改まってどうしたんですか、アラッド兄さん」
馬車の中で、アラッドは改めて弟に労いの言葉を掛けた。
「いや、今回の代表戦、対価があったとはいえ、お前が一番思うところがあったと思ってな」
話が来た時こそ、物凄く乗り気ではなかったアラッド。
しかし精霊剣を持つラディア・クレスターとの戦いでは狂化を使わざるを得ない状況にまで追い込まれ、後日ライホルト・ギュレリックとの試合では互いに狂化、巨人の怒りこそ使用しなかったが、満足のいく力勝負が出来た。
フローレンスはアラッドと違い、最初から代表戦に対して乗り気であり、自分を慕う者たちに正解の広さを教えることも出来た。
ライホルトとの代表戦も非常に満足感のある戦いを行えた。
そんな中、アッシュだけは戦いという行為に対し、価値を見い出してはいなかった。
「……確かに僕は戦いに対して特に思うことはありません。でも、こうしてアラッド兄さんたちと国外に旅行出来たのは楽しかったです」
「ふふ、嬉しい事言ってくれるじゃないか、アッシュ」
兄に気を遣っての言葉、ではない。
錬金術師の道にアッシュにとって、アラッドと共に旅行などする機会は基本的にない。
冒険者兼錬金術師という道に進めば、その機会もゼロとは言えないが……アッシュの中で、まだ完全にそちらへ揺れてはいない。
「ところで、アラッド兄さんはこれからどうするんですか?」
「ふむ…………全くもって考えてないな。スティーム、ガルーレ。何かここに行きたいって場所はあるか?」
今現在、アラッドはクロとだけで行動してるわけではないため、勝手に次の目的地を決めることはない。
「ん~~~~、今のところ特にこれといった場所はないかな」
「私はやっぱり、強い敵がいる場所かな!!」
「ガルーレらしいな。まっ、ってな感じで特に場所は決まってないな」
「そうですか。それなら、なるべく王都からは直ぐに移動した方が良いかもしれませんね」
「ん? なんでだ」
次の目的地へ向かえば、妹のシルフィーや友人のレイたちとは当分会わなくなるため、もう少し話して模擬戦したりしたいと考えていた。
「うちの学園の教師の一部は、アラッド兄さんが代表戦に参加したことを知ってます。他の学園はそれを知らなくても、アラッド兄さんが去年のトーナメントで優勝して冒険者として活動を始めてから、どれほど功績を積んできたのかは知ってます。是非とも、臨時教師として雇いたい人材の筈です」
アラッドを雇うことになれば、Aランクのモンスターである従魔だけではなく、既にBランク相当の実力があると噂されている有望な若手も臨時教師として雇える。
学園側としては、これ以上ない臨時教師である。
「パロスト学園は理解出来るが、他の学園もか? 俺は一応、パロスト学園の卒業生だぞ」
「他学園の卒業生だからといって、雇ってはいけないというルールはないでしょう。もしかしたら暗黙のルールがあるのかもしれませんけど、アラッド兄さんは現在冒険者なので、おそらく問題はないかと」
しっかりと学園を卒業したフローレンスの方に顔を向けると……本当に良い笑顔で頷かれてしまった。
(パルディア学園の卒業生としては、是非とも在校生の方々にはソルとルーナの二人と同じく、世界の広さを知って欲しいですし、良い機会になるでしょう)
勿論、フローレンスはアラッドと険悪な仲になりたくはないため、パルディア学園の学園長にあれこれ言葉巧みに唆す様な真似はしない。
ただ……卒業生として、それはそれでありだと思ってしまうのは、彼女の自由だろう。
「あれだね。一つの学園で指導を行ったら、他の学園も遠慮なく頼み込んで来そうだね」
「……一学園だけを差別するな、っといった感じでか」
「言い方が悪いと、そういうことになるかな」
スティームは特にそういった依頼が来たとしても、反対するつもりはなかった。
冒険者として上に登るのであれば、そういった教育面に関する依頼で高評価を残すことも重要になる。
(指導、指導、か~~~~。あの先生……アレク先生だっけ? あぁいう先生とか試合出来るなら、ありかな)
逆に、ガルーレとしては魅力的な報酬がなければ、あまり受けたいとは思えないでいた。
「仮に全部の学園で臨時教師をしてたら……軽く数か月は王都に滞在することになりそうだな」
王都は王都で多くの冒険者が滞在しており、活動する場として悪い場所ではない。
ただ……権力が密集してる場所とも言える。
「………………そうだな。シルフィーやレイ嬢に軽く挨拶をしたら、直ぐに王都から出るか」
その後、王都に到着して報酬を受け取ったアラッドは予定通りシルフィーやレイ嬢たちとナルターク王国での出来事を話し終えた翌日、面倒な人達に捕まる前に王都を出発した。
「お疲れ様、アッシュ」
「改まってどうしたんですか、アラッド兄さん」
馬車の中で、アラッドは改めて弟に労いの言葉を掛けた。
「いや、今回の代表戦、対価があったとはいえ、お前が一番思うところがあったと思ってな」
話が来た時こそ、物凄く乗り気ではなかったアラッド。
しかし精霊剣を持つラディア・クレスターとの戦いでは狂化を使わざるを得ない状況にまで追い込まれ、後日ライホルト・ギュレリックとの試合では互いに狂化、巨人の怒りこそ使用しなかったが、満足のいく力勝負が出来た。
フローレンスはアラッドと違い、最初から代表戦に対して乗り気であり、自分を慕う者たちに正解の広さを教えることも出来た。
ライホルトとの代表戦も非常に満足感のある戦いを行えた。
そんな中、アッシュだけは戦いという行為に対し、価値を見い出してはいなかった。
「……確かに僕は戦いに対して特に思うことはありません。でも、こうしてアラッド兄さんたちと国外に旅行出来たのは楽しかったです」
「ふふ、嬉しい事言ってくれるじゃないか、アッシュ」
兄に気を遣っての言葉、ではない。
錬金術師の道にアッシュにとって、アラッドと共に旅行などする機会は基本的にない。
冒険者兼錬金術師という道に進めば、その機会もゼロとは言えないが……アッシュの中で、まだ完全にそちらへ揺れてはいない。
「ところで、アラッド兄さんはこれからどうするんですか?」
「ふむ…………全くもって考えてないな。スティーム、ガルーレ。何かここに行きたいって場所はあるか?」
今現在、アラッドはクロとだけで行動してるわけではないため、勝手に次の目的地を決めることはない。
「ん~~~~、今のところ特にこれといった場所はないかな」
「私はやっぱり、強い敵がいる場所かな!!」
「ガルーレらしいな。まっ、ってな感じで特に場所は決まってないな」
「そうですか。それなら、なるべく王都からは直ぐに移動した方が良いかもしれませんね」
「ん? なんでだ」
次の目的地へ向かえば、妹のシルフィーや友人のレイたちとは当分会わなくなるため、もう少し話して模擬戦したりしたいと考えていた。
「うちの学園の教師の一部は、アラッド兄さんが代表戦に参加したことを知ってます。他の学園はそれを知らなくても、アラッド兄さんが去年のトーナメントで優勝して冒険者として活動を始めてから、どれほど功績を積んできたのかは知ってます。是非とも、臨時教師として雇いたい人材の筈です」
アラッドを雇うことになれば、Aランクのモンスターである従魔だけではなく、既にBランク相当の実力があると噂されている有望な若手も臨時教師として雇える。
学園側としては、これ以上ない臨時教師である。
「パロスト学園は理解出来るが、他の学園もか? 俺は一応、パロスト学園の卒業生だぞ」
「他学園の卒業生だからといって、雇ってはいけないというルールはないでしょう。もしかしたら暗黙のルールがあるのかもしれませんけど、アラッド兄さんは現在冒険者なので、おそらく問題はないかと」
しっかりと学園を卒業したフローレンスの方に顔を向けると……本当に良い笑顔で頷かれてしまった。
(パルディア学園の卒業生としては、是非とも在校生の方々にはソルとルーナの二人と同じく、世界の広さを知って欲しいですし、良い機会になるでしょう)
勿論、フローレンスはアラッドと険悪な仲になりたくはないため、パルディア学園の学園長にあれこれ言葉巧みに唆す様な真似はしない。
ただ……卒業生として、それはそれでありだと思ってしまうのは、彼女の自由だろう。
「あれだね。一つの学園で指導を行ったら、他の学園も遠慮なく頼み込んで来そうだね」
「……一学園だけを差別するな、っといった感じでか」
「言い方が悪いと、そういうことになるかな」
スティームは特にそういった依頼が来たとしても、反対するつもりはなかった。
冒険者として上に登るのであれば、そういった教育面に関する依頼で高評価を残すことも重要になる。
(指導、指導、か~~~~。あの先生……アレク先生だっけ? あぁいう先生とか試合出来るなら、ありかな)
逆に、ガルーレとしては魅力的な報酬がなければ、あまり受けたいとは思えないでいた。
「仮に全部の学園で臨時教師をしてたら……軽く数か月は王都に滞在することになりそうだな」
王都は王都で多くの冒険者が滞在しており、活動する場として悪い場所ではない。
ただ……権力が密集してる場所とも言える。
「………………そうだな。シルフィーやレイ嬢に軽く挨拶をしたら、直ぐに王都から出るか」
その後、王都に到着して報酬を受け取ったアラッドは予定通りシルフィーやレイ嬢たちとナルターク王国での出来事を話し終えた翌日、面倒な人達に捕まる前に王都を出発した。
217
あなたにおすすめの小説
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
魔界を追放された俺が人間と異種族パーティを組んで復讐したら世界の禁忌に触れちゃう話〜魔族と人間、二つの種族を繋ぐ真実〜
真星 紗夜(毎日投稿)
ファンタジー
「...俺が...、元々は人間だった...⁉︎」
主人公は魔界兵団メンバーの魔族コウ。
しかし魔力が使えず、下着ドロボウを始め、禁忌とされる大罪の犯人に仕立て上げられて魔界を追放される。
人間界へと追放されたコウは研究少女ミズナと出会い、二人は互いに種族の違う相手に惹かれて恋に落ちていく...。
あんなトコロやこんなトコロを調べられるうちに“テレパシー”を始め、能力を次々発現していくコウ。
そして同時に、過去の記憶も蘇ってくる...。
一方で魔界兵団は、コウを失った事で統制が取れなくなり破滅していく。
人間と異種族パーティを結成し、復讐を誓うコウ。
そして、各メンバーにも目的があった。
世界の真実を暴くこと、親の仇を討つこと、自らの罪を償うこと、それぞれの想いを胸に魔界へ攻め込む...!
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる