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七百六十一話 諸々報告
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「この間ぶりだね、アラッド。おかえり」
「ただいま、父さん」
特に予定がないということもあり、アラッドは一度実家に帰ってきていた。
スティームは当然文句など無く、ガルーレとしてもアラッドの実家には強者がたくさん要るということもあって、寧ろ乗り気であった。
「もしかして、母さんは狩りに行ってる?」
「いや、違うよ。アリサたちは、今ガルシアたちを連れてダンジョンに行ってるよ」
「ダンジョン? ガルシアたちも連れて?」
元気であることは窺えるが、それよりも何故何故? という気持ちの方が大きい。
「ほら、この前来た時に気になることを教えてくれただろ」
「この前……えっ、もしかしてそういう事、なんですか?」
直ぐに何故アリサたちがダンジョンに向かった理由に辿り着いたアラッド。
その息子の表情を見て「解る解る。良く解るよその気持ち」と言いたげな苦笑いを浮かべるフール。
「そういう事なんだよ。という訳で、今アリサたちはいないんだ」
「わ、解りました」
「ところでアラッド。いや、是非とも二人にも訊きたいかな。アッシュは上手く戦れたかい」
一応、一応手紙による報告で末息子であるアッシュが代表戦に勝利したという報告は受けていた。
だが、細かい詳細までは聞いていなかった。
「あなた、アラッド。入っても良いかしら」
「……丁度良いタイミングかな」
「えぇ、そうですね」
声の主はアッシュと血の繋がった実の母であるエリア。
フールが入室を許可。
スティームとガルーレはザ・貴族夫人と解るエリアを見て、アラッドの友人として失礼がない様、深々と頭を下げた。
二人の対応に微笑を浮かべながら、フールの隣に腰を下ろす。
「おかえりなさい、アラッド」
「ただいま、エリア母さん」
互いに優しい笑顔を浮かべながら、元々エリアがそのつもりだったこともあり、話はアッシュの件について戻る。
「アッシュは代表戦で……年齢を考えれば、学生代表として相応しい力を見せてくれました」
「具体的にどのようにして勝利を収めたのか、訊いても良いかな」
「アッシュは、ナルターク王国の学生代表であるリエラ・カルバトラとの差を埋める為に、無理矢理身体能力の限界を超えた力を発揮する、といった荒業を発動して勝利を収めました」
「っ!!!???」
具体的な報告を伝えられたフールは、まさかの内容に衝撃を隠せずにいた。
そして、それは父親のフールだけではなく、優れた魔法使いであるエリアも同じ反応を見せた。
「……アラッド、それは間違いないのかい」
「はい。本人からも説明を得ています」
「「………………」」
その戦いを観ていたであろう、説明を聞いていたであろうスティームとガルーレにも頷かれ、二人は本当なのだと認めざるを得なかった。
「……アッシュは、その後痛みを訴えたりしていなかったかい」
「特にそういった様子はありませんでした。無理してやせ我慢しているといった感じもなく」
「そうか…………アラッドは、以前からアッシュには戦いのセンスがあると言っていたね」
「はい」
「私も解っていた。解っていたつもりだった……しかし、予想を遥かに上回っていたようだ」
スキルや魔力云々関係無く、限界を超えた力を引き出す。
その感覚にフールは覚えがあった。
だが、才能あふれる貴族たちの中でも戦闘センスが高い部類であるフールであっても、それを自分の意志で行うのは不可能であった。
「とは言っても、本人の意志が変わらない限りはね……うん、仕方ない」
戦いの才能がある、どころの話ではない。
しかし、アッシュはレグラ家の長男ではない。
長男に何かあった時の為に、というスペア的な立場でもない。
フールとしても惜しいという気持ちはあれど、その道を強制することはしない。
「父さんの気持ちも解ります。ただ、アッシュの性格からして、学園に入学しただけでも良い結果かと。加えて、アッシュがその気になっていれば……おそらく、まともに上を目指そうとするのはシルフィーだけになるかと」
断言は出来ない。
ただ、双子であるシルフィーは、それだけアッシュに負けられない、負けたくないという思いが燃え上がり続ける。
だが他の生徒たちには……何かしらの因縁、拭い切れない屈辱などが無ければ、上を目指すだけ無駄だと感じてしまう高過ぎる壁になってしまう。
(前世のバスケットボールとかで、相手チームに外国人留学生とかがいる感覚、になるのかもな)
勝つ気が、勝負しようとする意志がかき消される。
未来の騎士候補たちの事など知ったことではないアラッドだが、さすがに気の毒だと思わざるを得ない。
「……多くの学生たちを知らない身でこう言ってしまうのは良くないけど、確かにその通りだろうね」
「仮にアッシュが戦いの道に進んだとしても、冒険者兼錬金術師といった非常に選ぶ者が少ない道かと」
二人がまだ何とも言えない表情を浮かべる中、ふと……アラッドは思い出した内容を伝えた。
「そういえば、代表戦でアッシュと戦ったリエラ・カルバトラが対戦後、アッシュに婚約を申し込みました」
「「っ!!!???」」
衝撃の大きさで言えば、間違いなく自力で肉体の限界を超えたという内容よりも断然大きかった。
「ただいま、父さん」
特に予定がないということもあり、アラッドは一度実家に帰ってきていた。
スティームは当然文句など無く、ガルーレとしてもアラッドの実家には強者がたくさん要るということもあって、寧ろ乗り気であった。
「もしかして、母さんは狩りに行ってる?」
「いや、違うよ。アリサたちは、今ガルシアたちを連れてダンジョンに行ってるよ」
「ダンジョン? ガルシアたちも連れて?」
元気であることは窺えるが、それよりも何故何故? という気持ちの方が大きい。
「ほら、この前来た時に気になることを教えてくれただろ」
「この前……えっ、もしかしてそういう事、なんですか?」
直ぐに何故アリサたちがダンジョンに向かった理由に辿り着いたアラッド。
その息子の表情を見て「解る解る。良く解るよその気持ち」と言いたげな苦笑いを浮かべるフール。
「そういう事なんだよ。という訳で、今アリサたちはいないんだ」
「わ、解りました」
「ところでアラッド。いや、是非とも二人にも訊きたいかな。アッシュは上手く戦れたかい」
一応、一応手紙による報告で末息子であるアッシュが代表戦に勝利したという報告は受けていた。
だが、細かい詳細までは聞いていなかった。
「あなた、アラッド。入っても良いかしら」
「……丁度良いタイミングかな」
「えぇ、そうですね」
声の主はアッシュと血の繋がった実の母であるエリア。
フールが入室を許可。
スティームとガルーレはザ・貴族夫人と解るエリアを見て、アラッドの友人として失礼がない様、深々と頭を下げた。
二人の対応に微笑を浮かべながら、フールの隣に腰を下ろす。
「おかえりなさい、アラッド」
「ただいま、エリア母さん」
互いに優しい笑顔を浮かべながら、元々エリアがそのつもりだったこともあり、話はアッシュの件について戻る。
「アッシュは代表戦で……年齢を考えれば、学生代表として相応しい力を見せてくれました」
「具体的にどのようにして勝利を収めたのか、訊いても良いかな」
「アッシュは、ナルターク王国の学生代表であるリエラ・カルバトラとの差を埋める為に、無理矢理身体能力の限界を超えた力を発揮する、といった荒業を発動して勝利を収めました」
「っ!!!???」
具体的な報告を伝えられたフールは、まさかの内容に衝撃を隠せずにいた。
そして、それは父親のフールだけではなく、優れた魔法使いであるエリアも同じ反応を見せた。
「……アラッド、それは間違いないのかい」
「はい。本人からも説明を得ています」
「「………………」」
その戦いを観ていたであろう、説明を聞いていたであろうスティームとガルーレにも頷かれ、二人は本当なのだと認めざるを得なかった。
「……アッシュは、その後痛みを訴えたりしていなかったかい」
「特にそういった様子はありませんでした。無理してやせ我慢しているといった感じもなく」
「そうか…………アラッドは、以前からアッシュには戦いのセンスがあると言っていたね」
「はい」
「私も解っていた。解っていたつもりだった……しかし、予想を遥かに上回っていたようだ」
スキルや魔力云々関係無く、限界を超えた力を引き出す。
その感覚にフールは覚えがあった。
だが、才能あふれる貴族たちの中でも戦闘センスが高い部類であるフールであっても、それを自分の意志で行うのは不可能であった。
「とは言っても、本人の意志が変わらない限りはね……うん、仕方ない」
戦いの才能がある、どころの話ではない。
しかし、アッシュはレグラ家の長男ではない。
長男に何かあった時の為に、というスペア的な立場でもない。
フールとしても惜しいという気持ちはあれど、その道を強制することはしない。
「父さんの気持ちも解ります。ただ、アッシュの性格からして、学園に入学しただけでも良い結果かと。加えて、アッシュがその気になっていれば……おそらく、まともに上を目指そうとするのはシルフィーだけになるかと」
断言は出来ない。
ただ、双子であるシルフィーは、それだけアッシュに負けられない、負けたくないという思いが燃え上がり続ける。
だが他の生徒たちには……何かしらの因縁、拭い切れない屈辱などが無ければ、上を目指すだけ無駄だと感じてしまう高過ぎる壁になってしまう。
(前世のバスケットボールとかで、相手チームに外国人留学生とかがいる感覚、になるのかもな)
勝つ気が、勝負しようとする意志がかき消される。
未来の騎士候補たちの事など知ったことではないアラッドだが、さすがに気の毒だと思わざるを得ない。
「……多くの学生たちを知らない身でこう言ってしまうのは良くないけど、確かにその通りだろうね」
「仮にアッシュが戦いの道に進んだとしても、冒険者兼錬金術師といった非常に選ぶ者が少ない道かと」
二人がまだ何とも言えない表情を浮かべる中、ふと……アラッドは思い出した内容を伝えた。
「そういえば、代表戦でアッシュと戦ったリエラ・カルバトラが対戦後、アッシュに婚約を申し込みました」
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衝撃の大きさで言えば、間違いなく自力で肉体の限界を超えたという内容よりも断然大きかった。
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