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七百四十八話 逆ハは望まない
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「再度言うが、お前たちは若手の中ではトップクラスの強さを持っているのは間違いない。初対面の奴にこんな事を言われてもと思うかもしれないが、そこは理解しているつもりだ」
赤髪のマッシュ男が前衛を務め、エルフの男が後衛から弓で、竜人族の男が魔法で遠距離攻撃を行い、ハーフドワーフの男が屈強な肉体でタンクを務める。
そこにもう一枚前衛が加われば、確かに理想的なパーティーが完成すると言っても過言ではない。
「ただ、個人的にはお前たちがラディア嬢とパーティーを組むメリットと、ラディア嬢が加入するメリットが釣り合っていない。せめて、メリットが五割以上はあると断言出来てからではないとな」
「……っ」
そこまで言うのであれば、試してみるか。
赤髪のマッシュたちがそう口にしようとしたタイミングで、アラッドは更に追加でラディア側のデメリットを口にした。
「それと、一つ気になってたんだが……お前らとラディア嬢がパーティーを組んだ場合、ラディア嬢は他の同性冒険者と仲良く出来るのか?」
何故そんな事を尋ねるのかと、首を傾げる四人を無視して話が続く。
「ラディア嬢は、そこら辺をどう考えてるんだ」
「……私は、出来ることなら仲良くしたいと思っている」
「なるほどな。であれば、そもそもな話……実力云々の前に、組み合わせとしてマッチングする可能性はゼロみたいだな」
どうして、何故だ!!! といった悲観的な顔を浮かべる赤髪マッシュたち、アラッドは落ち付けと両手で伝えながら、しっかりと理由を教えて上げた。
「男が四、女が一っていうのは比率的におかしいだろ」
「むっ、それは……」
比率がおかしい。
その点に関しては反論が出来ない四人。
「もしかしたら、世の中そういったパーティーも存在するのかもしれない。俺はまだ出会ったことはないが、それで世の中広いから絶対にそんなパーティーはいないとは言えない。ただ、お前らの場合は、全員面が良いっていうのが問題なんだ」
面が良い……言葉だけ見れば褒められてるのに、そこがダメなんだと指摘されている。
この何とも言えない状況に、四人は苦い表情を浮かべ……ガルーレはアラッドが何を言いたいのかなんとなく理解している為、笑いを堪えていた。
「面が良い男が四人いて、その中に美女が一人いる。その構図だけ見れば、立派な逆ハーレムパーティーだろ」
「なっ!! お、俺達はそんなつもりで彼女を勧誘した訳じゃない!!」
心外だと、初めて思いっきり感情を露わにした赤髪マッシュ。
そんな彼を……アラッドは若干冷めた顔で見ていた。
(ただラディア嬢と組みたいと思ったから勧誘したって言いたげな顔だな。どう見てもそれ以外の感情がありそうだけど……仮にあったとして、他の三人がラディア嬢のことをどう思ってるのか、そこまできっちり把握してるのか?)
色々とツッコミたい部分はあるが、ひとまず赤髪マッシュを落ち着かせる。
「他の客に迷惑だから、あまり大きな声は出すな」
「っ、すまない」
「解ってくれてなによりだ。それで、傍から見れば逆ハーレムって言うのは、外から見た人の感想だ。お前たちがどういった対応を取ろうとも、外野が勝手に判断する。身に覚えのない言い掛かりを付けられたり、そういう経験に覚えはないか?」
「「「「…………」」」」
アラッドの予想通り、経験がそれなりにあるため、再び黙ってしまう四人。
「嫌がらせっていうのは、何処で起こるか分からない。お前らが守れているつもりでも、実は守れていなかった、なんて事になってもおかしくない。まだ何か言いたげな顔をしてるが、仮にパーティーを組んだとしても、ラディア嬢が息苦しくなるのは解っただろ」
物事に絶対はない。
それはアラッドも解っている。
赤髪マッシュたちがそれでもと言いたくなる気持ちは解らなくもない。
これまで親交があった訳ではなく、アラッドと赤髪マッシュは完全に初対面。
何故侯爵家の令息とはいえ、お前にそんな事を言われなきゃならないんだ!! と言いたくなるのも仕方ない。
「もし、俺の説明を聞いてもまだ何か言いたい事があるなら、とりあえず俺から見てお前は話が通じない奴なんだとなという認識になる」
話が通じない。
その言葉を聞いた瞬間、再び怒りが顔に出る……のではなく、四人の心にぐさりと何かが突き刺さった。
「っ……っ………………すぅーーー、はぁーーーー…………そう、だな。すまない、食事中に迷惑を掛けた」
結局赤髪マッシュたちはテーブルに座るだけで何も注文しなかった為、彼らはテーブルの上に金貨を合計で二枚起き、アラッドたちに……ラディアに軽く頭を下げ、店から出て行った。
「冒険者にしては礼儀正しい部類とは思ったけど、本当に何も起こらず引いたわね」
「おそらく、自分たちが下手な絡まれ方をしてきた相手に対して、こいつは本当に話が通じない奴だと、彼ら自身が思ったことがあるのでしょう」
嫌悪した感覚を、今度は自分たちが他人に与えようとしていた。
それに気付いた四人は……若干血の気の引いた顔をしながら、己の非を認めて店から出て行った。
赤髪のマッシュ男が前衛を務め、エルフの男が後衛から弓で、竜人族の男が魔法で遠距離攻撃を行い、ハーフドワーフの男が屈強な肉体でタンクを務める。
そこにもう一枚前衛が加われば、確かに理想的なパーティーが完成すると言っても過言ではない。
「ただ、個人的にはお前たちがラディア嬢とパーティーを組むメリットと、ラディア嬢が加入するメリットが釣り合っていない。せめて、メリットが五割以上はあると断言出来てからではないとな」
「……っ」
そこまで言うのであれば、試してみるか。
赤髪のマッシュたちがそう口にしようとしたタイミングで、アラッドは更に追加でラディア側のデメリットを口にした。
「それと、一つ気になってたんだが……お前らとラディア嬢がパーティーを組んだ場合、ラディア嬢は他の同性冒険者と仲良く出来るのか?」
何故そんな事を尋ねるのかと、首を傾げる四人を無視して話が続く。
「ラディア嬢は、そこら辺をどう考えてるんだ」
「……私は、出来ることなら仲良くしたいと思っている」
「なるほどな。であれば、そもそもな話……実力云々の前に、組み合わせとしてマッチングする可能性はゼロみたいだな」
どうして、何故だ!!! といった悲観的な顔を浮かべる赤髪マッシュたち、アラッドは落ち付けと両手で伝えながら、しっかりと理由を教えて上げた。
「男が四、女が一っていうのは比率的におかしいだろ」
「むっ、それは……」
比率がおかしい。
その点に関しては反論が出来ない四人。
「もしかしたら、世の中そういったパーティーも存在するのかもしれない。俺はまだ出会ったことはないが、それで世の中広いから絶対にそんなパーティーはいないとは言えない。ただ、お前らの場合は、全員面が良いっていうのが問題なんだ」
面が良い……言葉だけ見れば褒められてるのに、そこがダメなんだと指摘されている。
この何とも言えない状況に、四人は苦い表情を浮かべ……ガルーレはアラッドが何を言いたいのかなんとなく理解している為、笑いを堪えていた。
「面が良い男が四人いて、その中に美女が一人いる。その構図だけ見れば、立派な逆ハーレムパーティーだろ」
「なっ!! お、俺達はそんなつもりで彼女を勧誘した訳じゃない!!」
心外だと、初めて思いっきり感情を露わにした赤髪マッシュ。
そんな彼を……アラッドは若干冷めた顔で見ていた。
(ただラディア嬢と組みたいと思ったから勧誘したって言いたげな顔だな。どう見てもそれ以外の感情がありそうだけど……仮にあったとして、他の三人がラディア嬢のことをどう思ってるのか、そこまできっちり把握してるのか?)
色々とツッコミたい部分はあるが、ひとまず赤髪マッシュを落ち着かせる。
「他の客に迷惑だから、あまり大きな声は出すな」
「っ、すまない」
「解ってくれてなによりだ。それで、傍から見れば逆ハーレムって言うのは、外から見た人の感想だ。お前たちがどういった対応を取ろうとも、外野が勝手に判断する。身に覚えのない言い掛かりを付けられたり、そういう経験に覚えはないか?」
「「「「…………」」」」
アラッドの予想通り、経験がそれなりにあるため、再び黙ってしまう四人。
「嫌がらせっていうのは、何処で起こるか分からない。お前らが守れているつもりでも、実は守れていなかった、なんて事になってもおかしくない。まだ何か言いたげな顔をしてるが、仮にパーティーを組んだとしても、ラディア嬢が息苦しくなるのは解っただろ」
物事に絶対はない。
それはアラッドも解っている。
赤髪マッシュたちがそれでもと言いたくなる気持ちは解らなくもない。
これまで親交があった訳ではなく、アラッドと赤髪マッシュは完全に初対面。
何故侯爵家の令息とはいえ、お前にそんな事を言われなきゃならないんだ!! と言いたくなるのも仕方ない。
「もし、俺の説明を聞いてもまだ何か言いたい事があるなら、とりあえず俺から見てお前は話が通じない奴なんだとなという認識になる」
話が通じない。
その言葉を聞いた瞬間、再び怒りが顔に出る……のではなく、四人の心にぐさりと何かが突き刺さった。
「っ……っ………………すぅーーー、はぁーーーー…………そう、だな。すまない、食事中に迷惑を掛けた」
結局赤髪マッシュたちはテーブルに座るだけで何も注文しなかった為、彼らはテーブルの上に金貨を合計で二枚起き、アラッドたちに……ラディアに軽く頭を下げ、店から出て行った。
「冒険者にしては礼儀正しい部類とは思ったけど、本当に何も起こらず引いたわね」
「おそらく、自分たちが下手な絡まれ方をしてきた相手に対して、こいつは本当に話が通じない奴だと、彼ら自身が思ったことがあるのでしょう」
嫌悪した感覚を、今度は自分たちが他人に与えようとしていた。
それに気付いた四人は……若干血の気の引いた顔をしながら、己の非を認めて店から出て行った。
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