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千四十六話 確かな一歩
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「お見事でした、ヌレールア様」
「そ、ソウスケ先生……俺、本当に」
「えぇ、ヌレールア様はお一人でオークを討伐出来ました。やや辛勝という形ではありますが、それでも……ヌレールア様が一人で勝利したという事実は変りません」
本当によく頑張りましたと伝え、ソウスケはヌレールアが討伐したオークの解体を始めた。
「ヌレールア様、辛ければ腰を下ろすの致し方ないかと」
そう言うと、ミレアナはアイテムバッグから椅子を取り出した。
「い、いや……っ、お言葉に甘えさせてもらいます」
時間にすれば、五分も……三分もない戦いであった。
それでも、ヌレールアからすれば接近戦で戦った初めての強敵。
ソウスケたちに助けを求めようかと、心が折れかけることはなく、常に闘志は燃え上がっていたが……それでも、振り下ろされる棍棒を大剣でガードする度に、確実に精神は擦り減っていた。
「ヌレールア様、ソウスケ殿の仰る通り、見事な勝利……見事な、一歩でした」
「あ、ありがとう…………そうか。僕は……一歩、踏み出せたんだね」
魔力操作の訓練を行い、武器の訓練も行った。
まだ二日間だけではあるが、真剣に努力を重ねた。
たった二日間だけ……三日も経っていないのに変わる訳がないだろ、と言う者もいるかもしれない。
それはそうかもしれないが、ヌレールアは……これまでの人生で、全く頑張っていなかった訳ではなかった。
ただ、一度理不尽な悪意によって向上心を折られた。
そこに……ソウスケというとある冒険者が、消えた蠟燭に炎を灯してくれた。
本気で、変わろうと決めた男は……日数など関係無い。
「一歩間違えれば、死にはせずとも大きな怪我に繋がっていた可能性がある。その可能性を知りつつも、リスクを取って踏み込み……成功させることが出来た。それは、紛れもない成長だろう」
「ざ、ザハークさん……っ」
まだ、何かを成し遂げた訳ではない。
本当に変われたと……理想の自分になれたと思っていない。
そんな事は解っているのに、目頭が急に熱くなる。
「ザハークの言う通り、接近戦という戦況において、リスクのある選択を取れたというのは、間違いなく一歩前に進めた……成長と言える結果でしょう」
「ありがとう、ございます……もっと、もっと頑張ります!!!!」
声を張り上げ、ミレアナが用意してくれた椅子から立ち上がろうとするが、直ぐに両肩に手を置かれて戻される。
「ヌレールア様。その現状に満足せず、前を向き続ける精神は大事だと思います。ただ、今あなたは自分が思っている以上に色々と消費している」
ヌレールアはソウスケやザハークがモンスターを相手に遊ぶ時の様に、魔力を纏わず、強化系スキルを使わずに戦っていた訳ではない。
大剣だけではなく全身に魔力を纏い、まだまだ練度が低い身体強化のスキルも使用していた。
メンタルだけではなく、戦えば当然消耗する魔力や体力もかなり消費していた。
「さぁ、魔力回復のポーションを飲みましょう」
イスタンダル辺境伯が用意したポーションを苦い顔をしながらも飲み干し……ミレアナに言われた通り、体力の回復に集中。
訓練だけではなく、実戦に関しても疲れてからが本番。
そういった考えは存在し、ソウスケやミレアナもその考えを否定するつもりはなく、寧ろ割と賛同している。
しかし、まだヌレールアの鍛錬、自己改変は始まったばかり。
いつかは成長の為に、消耗した体力や残りの魔力量に愚痴を零す暇もなく、戦わなければならない時がやってくる。
だが、少なくともそれは今ではない。
まだ……接近戦という、これまで殆ど体験したことがなかった経験に慣れる。
それが一番の課題であった。
「終わった終わった。ヌレールア様、もう少し休憩しますか?」
あっという間にオークの解体を終わらせたソウスケ。
解体が終わったならばと立ち上がろうとしたヌレールアだが……冷静に自分の疲れを把握し、申し訳なさそうな顔をしながら、素直にもう少しだけ休ませてほしいと伝えた。
「そ、ソウスケ先生……俺、本当に」
「えぇ、ヌレールア様はお一人でオークを討伐出来ました。やや辛勝という形ではありますが、それでも……ヌレールア様が一人で勝利したという事実は変りません」
本当によく頑張りましたと伝え、ソウスケはヌレールアが討伐したオークの解体を始めた。
「ヌレールア様、辛ければ腰を下ろすの致し方ないかと」
そう言うと、ミレアナはアイテムバッグから椅子を取り出した。
「い、いや……っ、お言葉に甘えさせてもらいます」
時間にすれば、五分も……三分もない戦いであった。
それでも、ヌレールアからすれば接近戦で戦った初めての強敵。
ソウスケたちに助けを求めようかと、心が折れかけることはなく、常に闘志は燃え上がっていたが……それでも、振り下ろされる棍棒を大剣でガードする度に、確実に精神は擦り減っていた。
「ヌレールア様、ソウスケ殿の仰る通り、見事な勝利……見事な、一歩でした」
「あ、ありがとう…………そうか。僕は……一歩、踏み出せたんだね」
魔力操作の訓練を行い、武器の訓練も行った。
まだ二日間だけではあるが、真剣に努力を重ねた。
たった二日間だけ……三日も経っていないのに変わる訳がないだろ、と言う者もいるかもしれない。
それはそうかもしれないが、ヌレールアは……これまでの人生で、全く頑張っていなかった訳ではなかった。
ただ、一度理不尽な悪意によって向上心を折られた。
そこに……ソウスケというとある冒険者が、消えた蠟燭に炎を灯してくれた。
本気で、変わろうと決めた男は……日数など関係無い。
「一歩間違えれば、死にはせずとも大きな怪我に繋がっていた可能性がある。その可能性を知りつつも、リスクを取って踏み込み……成功させることが出来た。それは、紛れもない成長だろう」
「ざ、ザハークさん……っ」
まだ、何かを成し遂げた訳ではない。
本当に変われたと……理想の自分になれたと思っていない。
そんな事は解っているのに、目頭が急に熱くなる。
「ザハークの言う通り、接近戦という戦況において、リスクのある選択を取れたというのは、間違いなく一歩前に進めた……成長と言える結果でしょう」
「ありがとう、ございます……もっと、もっと頑張ります!!!!」
声を張り上げ、ミレアナが用意してくれた椅子から立ち上がろうとするが、直ぐに両肩に手を置かれて戻される。
「ヌレールア様。その現状に満足せず、前を向き続ける精神は大事だと思います。ただ、今あなたは自分が思っている以上に色々と消費している」
ヌレールアはソウスケやザハークがモンスターを相手に遊ぶ時の様に、魔力を纏わず、強化系スキルを使わずに戦っていた訳ではない。
大剣だけではなく全身に魔力を纏い、まだまだ練度が低い身体強化のスキルも使用していた。
メンタルだけではなく、戦えば当然消耗する魔力や体力もかなり消費していた。
「さぁ、魔力回復のポーションを飲みましょう」
イスタンダル辺境伯が用意したポーションを苦い顔をしながらも飲み干し……ミレアナに言われた通り、体力の回復に集中。
訓練だけではなく、実戦に関しても疲れてからが本番。
そういった考えは存在し、ソウスケやミレアナもその考えを否定するつもりはなく、寧ろ割と賛同している。
しかし、まだヌレールアの鍛錬、自己改変は始まったばかり。
いつかは成長の為に、消耗した体力や残りの魔力量に愚痴を零す暇もなく、戦わなければならない時がやってくる。
だが、少なくともそれは今ではない。
まだ……接近戦という、これまで殆ど体験したことがなかった経験に慣れる。
それが一番の課題であった。
「終わった終わった。ヌレールア様、もう少し休憩しますか?」
あっという間にオークの解体を終わらせたソウスケ。
解体が終わったならばと立ち上がろうとしたヌレールアだが……冷静に自分の疲れを把握し、申し訳なさそうな顔をしながら、素直にもう少しだけ休ませてほしいと伝えた。
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