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千四十五話 後は気持ち
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「では、お気を付けて」
「勝ってきます!!」
ヌレールアは気合を入れ直し、胸を張って棍棒持ちのオークの元へと向かった。
「ッ……ぶっぶっぶ。ブボォォォアアアッ!!!!」
同じモンスターではなく、人間であり……武器を持っており、自分に戦意を向けてきている。
それだけで自分の敵だと認識するには十分。
オークは直ぐに意気揚々と棍棒を振り上げ、攻撃を仕掛けてきた。
「……ソウスケ殿。ヌレールア様は、一対一でオークに勝てるでしょうか」
「無理ではないと思います。ただ、楽な戦いではないでしょう」
少なくとも、先程のゴブリン戦の様に終わってみれば、無傷の勝利とはいかない。
「纏える魔力量を考えれば、身体能力で後れを取ることはないでしょう。仮に差が生まれるとしたら……接近戦で戦って来た経験の数でしょう」
「やはり、そこが障害となりますか」
手練れの騎士は、脳筋思考で強くなってきた訳ではない。
最近では後輩の騎士にも指導をすることがあるため、多少なりとも戦闘教育に関する知識を有していた。
「ミレアナはどう思う?」
「ソウスケさんと同じで、決して勝てない戦いではないかと。問題は経験の差もあると思いますが…………個人的にはメンタルが関わってくるかと」
接近戦と遠距離戦では、敵対する相手からの発せられるプレッシャーに差がある。
どちらでも戦れるミレアナはその差を身に染みて理解していた。
「体格もヌレールア様より大きいです。ザハークとの模擬戦で多少は慣れているとは思いますが、実戦となれば話は変ります」
「…………ザハークも同じ感想かな」
「そうだな。まぁ……心配しなくても、あれぐらいの個体になら勝てると思うが」
武器の性能では、ただの棍棒よりも堅く良質な切れ味を有している良い意味で平凡な大剣を扱っているヌレールアが勝っている。
ただ、接近戦の経験数、実戦の数は圧倒的にオークが勝っている。
一応オークも体や得物に魔力を纏えるため、そう簡単に棍棒が折れることはない。
「あいつは、変わろうとしているのだろう。それに、本人も解っている。であれば……負けはしないだろう」
変わる切っ掛けとなる一戦。
ここで勇気を振り絞り、根性を燃やせなければ、本当の意味で変わることなど……出来ない。
やや防戦状態であるヌレールアだが、それは理解していた。
「ッ!! ああああああああっ!! ハッ!!!!!!」
「ブっ!!??」
これまで振るわれる棍棒を、全て大剣でガードしてきた。
まだ前衛としての体は出来上がっておらず、上手くガードする術も身に付いていない。
当然ながら、受け流す技術もない。
そこで、ヌレールアはソウスケから教えられた作戦を実行した。
戦闘が始まってから、迫る攻撃を全て大剣でガードし続け……呼吸が合ったタイミングで全力回避。
転がりながらでも構わない。
全力で回避した後に足を斬りつける。
お世辞にも作戦と言えるほどの内容ではないが、それでも相手はオーク。
特別知能が高いモンスターでもないため、これが上手くハマった。
「せやっ!!! でぇやッ!!!!!」
「っ!! ブ、ブボォ!?」
がっつり足を切断するには至らなかったが、それでも容易に血が止まらないぐらいには斬ることに成功。
先程までの動きと比べ、明らかに鈍くなっており、完全に形勢が逆転していた。
それから数十回ほどぶつかり合った後、ついにオークの棍棒に限界が訪れ、棍棒と共に肩から腹をバッサリと切断。
その際に心臓も斬れ、ドパッと血が溢れ出し……ヌレールアとオークの戦いは終わった。
「はぁ……はぁ、はぁ…………か、勝った。勝て、た?」
これまで一度もモンスターとの戦いを行ったことがないわけではなく、血の匂いにもある程度慣れている。
自分に血が掛かった程度で狼狽えることもない……その筈だったが、先程の何十倍もの疲れが襲い掛かり、大剣を杖代わりにしていなければ立っていられなかった。
「勝ってきます!!」
ヌレールアは気合を入れ直し、胸を張って棍棒持ちのオークの元へと向かった。
「ッ……ぶっぶっぶ。ブボォォォアアアッ!!!!」
同じモンスターではなく、人間であり……武器を持っており、自分に戦意を向けてきている。
それだけで自分の敵だと認識するには十分。
オークは直ぐに意気揚々と棍棒を振り上げ、攻撃を仕掛けてきた。
「……ソウスケ殿。ヌレールア様は、一対一でオークに勝てるでしょうか」
「無理ではないと思います。ただ、楽な戦いではないでしょう」
少なくとも、先程のゴブリン戦の様に終わってみれば、無傷の勝利とはいかない。
「纏える魔力量を考えれば、身体能力で後れを取ることはないでしょう。仮に差が生まれるとしたら……接近戦で戦って来た経験の数でしょう」
「やはり、そこが障害となりますか」
手練れの騎士は、脳筋思考で強くなってきた訳ではない。
最近では後輩の騎士にも指導をすることがあるため、多少なりとも戦闘教育に関する知識を有していた。
「ミレアナはどう思う?」
「ソウスケさんと同じで、決して勝てない戦いではないかと。問題は経験の差もあると思いますが…………個人的にはメンタルが関わってくるかと」
接近戦と遠距離戦では、敵対する相手からの発せられるプレッシャーに差がある。
どちらでも戦れるミレアナはその差を身に染みて理解していた。
「体格もヌレールア様より大きいです。ザハークとの模擬戦で多少は慣れているとは思いますが、実戦となれば話は変ります」
「…………ザハークも同じ感想かな」
「そうだな。まぁ……心配しなくても、あれぐらいの個体になら勝てると思うが」
武器の性能では、ただの棍棒よりも堅く良質な切れ味を有している良い意味で平凡な大剣を扱っているヌレールアが勝っている。
ただ、接近戦の経験数、実戦の数は圧倒的にオークが勝っている。
一応オークも体や得物に魔力を纏えるため、そう簡単に棍棒が折れることはない。
「あいつは、変わろうとしているのだろう。それに、本人も解っている。であれば……負けはしないだろう」
変わる切っ掛けとなる一戦。
ここで勇気を振り絞り、根性を燃やせなければ、本当の意味で変わることなど……出来ない。
やや防戦状態であるヌレールアだが、それは理解していた。
「ッ!! ああああああああっ!! ハッ!!!!!!」
「ブっ!!??」
これまで振るわれる棍棒を、全て大剣でガードしてきた。
まだ前衛としての体は出来上がっておらず、上手くガードする術も身に付いていない。
当然ながら、受け流す技術もない。
そこで、ヌレールアはソウスケから教えられた作戦を実行した。
戦闘が始まってから、迫る攻撃を全て大剣でガードし続け……呼吸が合ったタイミングで全力回避。
転がりながらでも構わない。
全力で回避した後に足を斬りつける。
お世辞にも作戦と言えるほどの内容ではないが、それでも相手はオーク。
特別知能が高いモンスターでもないため、これが上手くハマった。
「せやっ!!! でぇやッ!!!!!」
「っ!! ブ、ブボォ!?」
がっつり足を切断するには至らなかったが、それでも容易に血が止まらないぐらいには斬ることに成功。
先程までの動きと比べ、明らかに鈍くなっており、完全に形勢が逆転していた。
それから数十回ほどぶつかり合った後、ついにオークの棍棒に限界が訪れ、棍棒と共に肩から腹をバッサリと切断。
その際に心臓も斬れ、ドパッと血が溢れ出し……ヌレールアとオークの戦いは終わった。
「はぁ……はぁ、はぁ…………か、勝った。勝て、た?」
これまで一度もモンスターとの戦いを行ったことがないわけではなく、血の匂いにもある程度慣れている。
自分に血が掛かった程度で狼狽えることもない……その筈だったが、先程の何十倍もの疲れが襲い掛かり、大剣を杖代わりにしていなければ立っていられなかった。
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