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心が壊れるか、死ぬか
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「斥候専門の奴らに売れば、結構な金になるだろうな」
「かもしれませんね……まっ、それでも売りませんけど」
「だろうな」
二人とも金には全く困っていないので、使えるかもしれないマジックアイテムは、ひとまず保管しておく。
普通はそれが難しいのだが、何年も前から使い続けているティールの空間収納の容量は並ではなく、新しくマジックアイテムをいくつも放り込んでも、全く問題無い。
「にしても、モンスターパーティーか……現役から引退しといて良かったと思うぜ」
店主は元Cランクの冒険者なので、まだ現役を続けていれば、強制的にモンスターパーティーの討伐に参加することになっていた。
「やっぱり恐ろしいですか?」
「いや、俺は体験したことねぇからあれだけど、どんなものなのかは知ってる。正直、想像しただけでもゾッとするぜ」
運だけで上り詰めたのではなく、確かな実力を証明し続け、Cランクという地位まで上り詰めた。
現役時代は、運良く最悪な状況になっている階層に挑むことはなかった。
だが、知り合いが森林暗危とは別のダンジョンのモンスターパーティーの討伐戦に参加し、帰らぬ人になったことがある。
普段の冒険でさえ、リスク管理を行っていても、死ぬ可能性はある。
実力者であっても死地と思ってしまう程、全方向から死が押し寄せる。
それがモンスターパーティー。
「でも、お前らはなんか……楽しみって感じか?」
「そうですね。ぶっちゃけ、ちょっと楽しみではあります」
「マスターと同じ考えだな。勿論、死ぬつもりは毛頭ない」
「……はっはっは!! やっぱりお前ら二人はぶっ飛んでんな。それだけぶっ飛んでるからこそ、他のルーキーたちとは違うのかもしれねぇが……他のルーキーもお前たちみたい頭おかしい生活を送ってたら、そこら辺のルーキーよりも、圧倒的に強くなれるか?」
店主からの問いに、ティールはほんの数秒だけ悩み、答えた。
「多分無理ですね。いや、無理って言葉はおかしいか……そこに到達するまでに、心がぶっ壊れると思います」
とても冷静に、自分の今までの人生を振り返った結果、常人では途中で壊れると判断。
「自分で言うのもあれですが、今の俺は冒険者になるまでの絶え間ない鍛錬と実戦があったからこそ、更にそこから依頼を受けたりして高められてるので」
「つまり、普通のルーキーがお前ら二人レベルまで追い付こうとしたら……少なくとも、数年は強くなることだけに時間を費やさなきゃダメってことか」
「とりあえずそういうことですね。まぁ、俺たちはその数年で更に強くなりますけど」
「そりゃちげぇねぇな」
ティールの言葉に笑って応える店主。
そして用事を終えた二人は店主と別れ、また普段は行かない場所へ向かっていた。
その場所とは……マッサージ屋。
いかがわしい大人なマッサージ屋ではなく、本当の意味で体に溜まった疲れを癒す為の店。
「二人分、お願いします」
モンスターパーティーという大戦に挑むことを考えれば、少しでも負ける要素を消しておいて損はない。
疲れが取れればそれで良い……あまり深く効果に期待していなかった二人だが、気付けば寝ていた。
あまりの心地良さに寝ていた。
「終わりました」
「っ……ありがとうございます」
台から降り、軽く体を動かす。
(これは…………凄いな)
初めて体験した、プロのマッサージ。
その効果にティールは驚きを隠せなかった。
それは隣の台でマッサージを受けていたラストも同じ。
(正直、そんな疲れとか殆ど溜まってないと思ってたけど、疲れというか体の悪い部分? そういうのが全て排出された感覚だ……だからこそ、当日になるまできっちり体を動かしとかないとな)
疲れが取れた体に、討伐当日前に負荷をかける?
そうではない。
少しでも体を動かしていなければ、あまりにも動き過ぎる体に、振り回されてしまう。
その可能性を理解している二人は、翌日の朝からギルドの訓練場で汗を流した。
「かもしれませんね……まっ、それでも売りませんけど」
「だろうな」
二人とも金には全く困っていないので、使えるかもしれないマジックアイテムは、ひとまず保管しておく。
普通はそれが難しいのだが、何年も前から使い続けているティールの空間収納の容量は並ではなく、新しくマジックアイテムをいくつも放り込んでも、全く問題無い。
「にしても、モンスターパーティーか……現役から引退しといて良かったと思うぜ」
店主は元Cランクの冒険者なので、まだ現役を続けていれば、強制的にモンスターパーティーの討伐に参加することになっていた。
「やっぱり恐ろしいですか?」
「いや、俺は体験したことねぇからあれだけど、どんなものなのかは知ってる。正直、想像しただけでもゾッとするぜ」
運だけで上り詰めたのではなく、確かな実力を証明し続け、Cランクという地位まで上り詰めた。
現役時代は、運良く最悪な状況になっている階層に挑むことはなかった。
だが、知り合いが森林暗危とは別のダンジョンのモンスターパーティーの討伐戦に参加し、帰らぬ人になったことがある。
普段の冒険でさえ、リスク管理を行っていても、死ぬ可能性はある。
実力者であっても死地と思ってしまう程、全方向から死が押し寄せる。
それがモンスターパーティー。
「でも、お前らはなんか……楽しみって感じか?」
「そうですね。ぶっちゃけ、ちょっと楽しみではあります」
「マスターと同じ考えだな。勿論、死ぬつもりは毛頭ない」
「……はっはっは!! やっぱりお前ら二人はぶっ飛んでんな。それだけぶっ飛んでるからこそ、他のルーキーたちとは違うのかもしれねぇが……他のルーキーもお前たちみたい頭おかしい生活を送ってたら、そこら辺のルーキーよりも、圧倒的に強くなれるか?」
店主からの問いに、ティールはほんの数秒だけ悩み、答えた。
「多分無理ですね。いや、無理って言葉はおかしいか……そこに到達するまでに、心がぶっ壊れると思います」
とても冷静に、自分の今までの人生を振り返った結果、常人では途中で壊れると判断。
「自分で言うのもあれですが、今の俺は冒険者になるまでの絶え間ない鍛錬と実戦があったからこそ、更にそこから依頼を受けたりして高められてるので」
「つまり、普通のルーキーがお前ら二人レベルまで追い付こうとしたら……少なくとも、数年は強くなることだけに時間を費やさなきゃダメってことか」
「とりあえずそういうことですね。まぁ、俺たちはその数年で更に強くなりますけど」
「そりゃちげぇねぇな」
ティールの言葉に笑って応える店主。
そして用事を終えた二人は店主と別れ、また普段は行かない場所へ向かっていた。
その場所とは……マッサージ屋。
いかがわしい大人なマッサージ屋ではなく、本当の意味で体に溜まった疲れを癒す為の店。
「二人分、お願いします」
モンスターパーティーという大戦に挑むことを考えれば、少しでも負ける要素を消しておいて損はない。
疲れが取れればそれで良い……あまり深く効果に期待していなかった二人だが、気付けば寝ていた。
あまりの心地良さに寝ていた。
「終わりました」
「っ……ありがとうございます」
台から降り、軽く体を動かす。
(これは…………凄いな)
初めて体験した、プロのマッサージ。
その効果にティールは驚きを隠せなかった。
それは隣の台でマッサージを受けていたラストも同じ。
(正直、そんな疲れとか殆ど溜まってないと思ってたけど、疲れというか体の悪い部分? そういうのが全て排出された感覚だ……だからこそ、当日になるまできっちり体を動かしとかないとな)
疲れが取れた体に、討伐当日前に負荷をかける?
そうではない。
少しでも体を動かしていなければ、あまりにも動き過ぎる体に、振り回されてしまう。
その可能性を理解している二人は、翌日の朝からギルドの訓練場で汗を流した。
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