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余裕

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体育祭当日。
選手入場を終えて自分のクラスのテントに入ってすぐ、俺は短距離走の入場ゲートに向かった。

か弱いフリをしていたのはもう終わりだ。
ここで会長も、他の生徒も全員ぶち負かして悔しい思いをさせるとともに、下だと思ってた俺から負かされた屈辱で俺をもっと嫌いになってもらう。

パンッ!

というスターターピストルの音を合図に全力で走りだしたが、俺の周りに全く人がいない。

あれ? これ、間違えて走り出しちゃったやつ?
それだったらめっちゃはずいけど。

そう思って後ろを確認すると大分離れた位置で団子状になって他の生徒が走っていた。
そのまま走り続けてゴールを切り俺は1位を取ることができた。

その後に続いた障害物競争もリレーも大体そんな感じで簡単に1位を取れて拍子抜けしてしまった。

「お疲れっ、リン!」

琢磨が汗を拭くタオルを渡してくれてそれを受け取って汗を拭いた。

「書記さま、ありがとう~」
「リンすごいね。やっぱり運動神経めっちゃいいんだ。かっこいいなぁ」
「会長さまに僕のかっこいいとこを見てもらおうと思って頑張ったんだよぉ」
「ああ~。会長めっちゃびっくりした顔でリンの走ってるところ凝視してたよっ」
「本当!? 嬉しい~」

へっ。思い知ったか。クソ会長。

「お昼だよっ。一緒に食べよ」

そう言って先を歩く琢磨に俺は慌てて声をかけた。

「あ、ちょっと待って。購買行ってから行くから先行ってて」
「リン。今日購買空いてないよ。ご飯買うならあっちの方に屋台が出てたけど……僕、今日多めにお弁当作ってきたんだっ。良かったら食べない?」

琢磨は俺に近づいて小声でそう言ってきた。

「えっ。いいのか?」

俺も小声で返すと琢磨は嬉しそうに笑ってうなずいた。
そういうことで俺たちはいつもの一服エリアに向かった。

「うまぁ。琢磨、お前天才か?」
「そう? 口にあったなら嬉しい」

琢磨の作った弁当は海老の天ぷらとかハンバーグとか見るからに作るのに手間が入りそうなメニューばかりで、しかもそのどれもがめちゃくちゃ美味しかった。

午後になり運動場の方に戻ると転入生が絡んできた。

「あっ! 親衛隊長!! お前どこにいたんだよっ! せっかく俺が一緒に弁当食ってやろうと思ったのに! もしかして琢磨も一緒にいたのかっ!? 仲間外れは良くないんだぞ!」

「僕たちは、たまたまそこで一緒になっただけだよ~」
「そうなのか!? 嘘だったら許さないからなっ!?」
「嘘じゃないよ。ところで椿くんは結局誰と食べたの?」
「俺のことはマヒロって呼べよ琢磨! 俺は困ってたら生徒会の人たちが一緒にどうかって言ってくれて一緒に食べてたんだ!」

俺に向かってやたらドヤ顔でそう言ってくる転入生にイラついていると、さらにイラつく奴が出てきた。

「マヒロ~。こんなゴミ虫に構ってないで、もう行こうよ。午後からは生徒会のスペースで観戦しよう」
「会計さまぁ、お疲れ様ですぅ」
「なぁに? ゴミ虫の分際で話しかけないでよねぇ。ちょっと運動神経いいからってさぁ、あんま調子に乗っちゃダメだよ?」

はは。効いてる効いてる。
会計めっちゃ落ち込んでんじゃん。
俺がここまで活躍できるなんて夢にも思ってなかったって顔だな。

午前中に1年生の競技が詰まってたことによって、午後からは少しだけ自由な時間が取れるし、2年の会長と会計の競技が見ものだな。
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