上 下
13 / 83

体育祭午後

しおりを挟む
午後からの時間は会長の無様な様を見て盛大にウザく応援してやろうと思っていたのに、会長は思いの外活躍しやがって俺の気分は全然晴れなかった。

借り物競争の時間になり選手が走り出して落ちているカードを拾っていくのを見ていると、その中に会長がいるのを見つけた。

会長の野郎、こんな競技にも参加してるのか。

だがしかし、会長が誰かに物を借りにいくのは面白いかもしれない。

そう思っていると会長は全力でこちらの方に向かって走ってきた。
俺を見ているような気がしないでもないが、そんなはずはない。

少し端に避けようとした瞬間ガチっと腕を掴まれた。

「ゴミ虫……来い」
「え、ちょ、会長っさま」

そのまま俺は会長に腕を引っ張られ一緒にゴールした。

これはどこの少女漫画だよ。
相手が会長と俺じゃなきゃ恋に落ちてたね。

考えたくもないが。

「会長さま~。一体どんなお題だったんですか~?」

どうせ嫌いな奴、とかだろ。
体育祭運営の人間め。そんなお題なんか混ぜたら喧嘩とかいじめになるだろうが。

「…………なんでもねぇ」

会長はそう答えたがもしかして会長なりに嫌いな奴だと面と向かっていうのを躊躇っているのだろうか。
普段俺のことをゴミ虫と呼ぶ人間が?
いやいや、ねぇな。

「まぁ、僕は会長さまの借り物になれて嬉しかったです。手も繋げちゃったし~」
「っ……うぜぇ」

こいつまじで語彙力ゴミカスか?
こいつの口からうぜぇしか聞いてないんですけど。

まぁいいや。
次俺も競技だし。

「それじゃあ僕は次競技なので行きますねっ。頑張ってきますので応援してくれると嬉しいです!」

俺がそう言ってもしばらく無言でいた会長がやっと声を発したと思ったら小さすぎて聞き取れなかった。

「……れよ」
「え? なんて言ったんですか?」
「……何でもねぇ。じゃあな」

何と言ったのかは気になったが次の競技まで時間がなかったので俺は急いで更衣室に向かった。

そう。次の俺の競技は応援団だ。
応援団と言っても学ランを着てやる奴じゃなくて、女装させられてダンスをさせられる。
どちらかといえば応援団ではなく、チアリーディングという感じだ。

なので他の応援団のメンバーは男子校といえども可愛いどころの集まりで、俺だけ目の毒なのだが、俺は結構ノリノリだ。
なぜなら、せっかく可愛い応援団に俺が混ざることによって場の空気を凍らせることができるのだから、俺が嫌われることは確実だからだ。

でも誰にも文句は言わせないぞ。
俺の競技を決めたのは俺のクラスの連中と担任なんだからな。

「リン! めちゃくちゃ可愛いよ。背も高いのにここまで着こなせるなんてすごいっ」
「そう~? ありがとう書記さまぁ」

俺の着替えを手伝ってくれた琢磨はお世辞を言ってくれたが流石にそれを真に受けるほど俺もバカじゃねぇんだ。
入場ゲートに向かう途中も他の生徒にめちゃくちゃ睨まれてたしな。
だが俺を睨んだ生徒全員俺の特別ウインクをお見舞いしてやった。ザマァみろ。

踊り始めてから生徒会スペースを見たら会長も会計も琢磨も俺を凝視してたんで特別ウィンクをお見舞いしてやった。

琢磨はわーいって感じで喜んでいたが、会長も会計も顔を引きつらせて固まっていた。

俺はその後も可愛さ全開! という感じで頑張って踊りきり、達成感を味わいすっきりできた。ヤンキー時代とは違うやり方ではあるが、人を倒すということではこのやり方も悪くないかもしれない。
なぜなら、俺の気持ち悪さを見た生徒が何人か気絶したからだ。

運ばれていく生徒を見届けながら、あとでこの服装のまま生徒会エリア参りをしようと思った。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

六日の菖蒲

あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。 落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。 ▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。 ▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず) ▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。 ▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。 ▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。 ▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

病んでる僕は、

蒼紫
BL
『特に理由もなく、 この世界が嫌になった。 愛されたい でも、縛られたくない 寂しいのも めんどくさいのも 全部嫌なんだ。』 特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。 そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。 彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 最初のみ三人称 その後は基本一人称です。 お知らせをお読みください。 エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。 (エブリスタには改訂前のものしか載せてません)

処理中です...