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道視点:レクリエーション
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自室に戻ってから数日。
俺たちは体育館に集められていた。
「急にどうしたんだろうね?」
律葉は嬉しそうに頬を緩め、壇上を見上げながらそう言った。
律葉が会長と付き合い始めたと聞いたのは、寮の修繕工事が終わって自室に戻ったその日だった。律葉は生徒会長のことを高校に上がってからずっと好きだったらしい。俺は律葉の好きな相手がまさか生徒会長だとは思いもしていなかったけど、律葉が好きな人とうまくいったのなら本当に嬉しいと思った。
「あと数日で夏休みだし、それの注意事項とか?」
「あー確かに。それはあるかも」
「というか、律葉はあっち側じゃないの? ほら、生徒会の人たちの方」
「うん。そうなんだけど、僕たち1年生は今日はこっちで聞けってさ」
「へー」
やや不満げな表情を見せた律葉に、相槌を打ったタイミングで、プツというマイクに電源が入った音がした。
『皆さん、集まってくれてありがとうございます。今回、皆さんに集まってもらったのは、全校生徒の親睦会のようなイベントの開催をお知らせするためです』
途端、周りからはザワザワと困惑したような言葉が聞こえてくる。
生徒会長はそのザワザワを胡散臭い微笑みでいなしている。
自室に戻ったこの数日の間に、律葉と生徒会長と先輩と俺の4人で、何の会なのか分からないような顔合わせをしたけど、その時の生徒会長といったら、俺の、いや、全校生徒のイメージする彼とはかけ離れていたので、別人かと思ったくらいだ。俺たちの前だというのに普通に律葉を膝の上からおろそうとしないし。
それなので、壇上で話している爽やかな生徒会長は、かなり胡散臭く見えるのだ。
『参加は自由ですが、行うレクリエーションで良い成績になった生徒には、景品も準備していますよ……。こちらは景品の一例です』
会長の後ろのスクリーンに映し出された景品の一例に、生徒たちからは歓声が上がった。
生徒会の好きなメンバーと1日デート券だったり、おかしの詰め合わせだったり、はたまた、1ヶ月自習室最優先予約券なんてものも書かれている。表の1番上には、1DKの寮などというものまであった。ちなみに、俺が狙うとしてもその1DKの寮だろう。今の部屋は1ルームなので、少し手狭に感じているし。
『皆さんがやる気になってくれたようでよかった。では、ルールを説明しますね』
にっこり笑った会長に説明されたレクリエーションの内容としては宝探し鬼ごっこという感じだった。
1年生は上級生から隠れつつ隠された掌サイズのボールを集めて回って、時間内まで逃げ切れば勝ち。そしてボールの数で順位が決まる。上級生は1年生がつけている名前入りのハチマキを集めて回って時間内により多くのハチマキを取れたら勝ちといった感じだ。
上級生が多いと1年生の方が圧倒的に不利なので、上級生の方は時間制で少人数に区切ってくれるそうだ。
「僕、負けられないよ」
「律葉? どうしたの?」
「だって、僕が勝たないと龍一郎……会長が、誰かとデートしちゃうかも」
確かに、生徒会の好きなメンバーと1日デート券の相手として、会長が選ばれる可能性は大きい。なにせ、スパダリだと言われて、かなり人気のある先輩だからだ。
「じゃあ、俺も協力するよ。集めたボールは全部律葉に渡す」
「ううん。気持ちは嬉しいけど、僕、自分で頑張ってみるよ」
「でも」
「僕も自分の力でやってみたいから」
「そっか。わかった。じゃあ、お互いに頑張ろう!」
「うん!」
律葉は、生徒会に入ってからあんまり頼み事をしてくれなくなった。
それが俺は少し寂しく感じているけど、きっと、そう思うのは良くないことなんだろう。
何はともあれ、律葉は生徒会メンバーと1日デート券。俺は1DKの寮を目指して頑張ることになった。
俺たちは体育館に集められていた。
「急にどうしたんだろうね?」
律葉は嬉しそうに頬を緩め、壇上を見上げながらそう言った。
律葉が会長と付き合い始めたと聞いたのは、寮の修繕工事が終わって自室に戻ったその日だった。律葉は生徒会長のことを高校に上がってからずっと好きだったらしい。俺は律葉の好きな相手がまさか生徒会長だとは思いもしていなかったけど、律葉が好きな人とうまくいったのなら本当に嬉しいと思った。
「あと数日で夏休みだし、それの注意事項とか?」
「あー確かに。それはあるかも」
「というか、律葉はあっち側じゃないの? ほら、生徒会の人たちの方」
「うん。そうなんだけど、僕たち1年生は今日はこっちで聞けってさ」
「へー」
やや不満げな表情を見せた律葉に、相槌を打ったタイミングで、プツというマイクに電源が入った音がした。
『皆さん、集まってくれてありがとうございます。今回、皆さんに集まってもらったのは、全校生徒の親睦会のようなイベントの開催をお知らせするためです』
途端、周りからはザワザワと困惑したような言葉が聞こえてくる。
生徒会長はそのザワザワを胡散臭い微笑みでいなしている。
自室に戻ったこの数日の間に、律葉と生徒会長と先輩と俺の4人で、何の会なのか分からないような顔合わせをしたけど、その時の生徒会長といったら、俺の、いや、全校生徒のイメージする彼とはかけ離れていたので、別人かと思ったくらいだ。俺たちの前だというのに普通に律葉を膝の上からおろそうとしないし。
それなので、壇上で話している爽やかな生徒会長は、かなり胡散臭く見えるのだ。
『参加は自由ですが、行うレクリエーションで良い成績になった生徒には、景品も準備していますよ……。こちらは景品の一例です』
会長の後ろのスクリーンに映し出された景品の一例に、生徒たちからは歓声が上がった。
生徒会の好きなメンバーと1日デート券だったり、おかしの詰め合わせだったり、はたまた、1ヶ月自習室最優先予約券なんてものも書かれている。表の1番上には、1DKの寮などというものまであった。ちなみに、俺が狙うとしてもその1DKの寮だろう。今の部屋は1ルームなので、少し手狭に感じているし。
『皆さんがやる気になってくれたようでよかった。では、ルールを説明しますね』
にっこり笑った会長に説明されたレクリエーションの内容としては宝探し鬼ごっこという感じだった。
1年生は上級生から隠れつつ隠された掌サイズのボールを集めて回って、時間内まで逃げ切れば勝ち。そしてボールの数で順位が決まる。上級生は1年生がつけている名前入りのハチマキを集めて回って時間内により多くのハチマキを取れたら勝ちといった感じだ。
上級生が多いと1年生の方が圧倒的に不利なので、上級生の方は時間制で少人数に区切ってくれるそうだ。
「僕、負けられないよ」
「律葉? どうしたの?」
「だって、僕が勝たないと龍一郎……会長が、誰かとデートしちゃうかも」
確かに、生徒会の好きなメンバーと1日デート券の相手として、会長が選ばれる可能性は大きい。なにせ、スパダリだと言われて、かなり人気のある先輩だからだ。
「じゃあ、俺も協力するよ。集めたボールは全部律葉に渡す」
「ううん。気持ちは嬉しいけど、僕、自分で頑張ってみるよ」
「でも」
「僕も自分の力でやってみたいから」
「そっか。わかった。じゃあ、お互いに頑張ろう!」
「うん!」
律葉は、生徒会に入ってからあんまり頼み事をしてくれなくなった。
それが俺は少し寂しく感じているけど、きっと、そう思うのは良くないことなんだろう。
何はともあれ、律葉は生徒会メンバーと1日デート券。俺は1DKの寮を目指して頑張ることになった。
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