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俺の部屋
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「藤井の部屋でする? あ、俺が入るのは嫌か。じゃあ、俺の部屋でいい?」
最近は先輩としていないし、ローションやコンドームは割と残っていたはずだ、と考えながら藤井を見た。
「……お前、なんでそんな平気そうなんだよ」
俺に手を引かれながら、藤井は困惑した声を上げた。
「別に平気ではないよ。でも俺、初めてって訳でもないし、恋人がいる訳でもないし。それなら、今、恋人が居る律葉よりも俺の方が適任だろ?」
「適任って……」
藤井は、一般的な思考からかなり外れていると思ったけれど、そんな相手にドン引きの目を向けられているのが面白くて、ふっと息が漏れた。
「とにかく、俺のことは気にせずに使ってくれて構わないから」
「使う……」
とりあえず今日は行けなくなったと連絡をしなければと、いったん藤井の手を離し、カバンからモバイルバッテリーを取り出して、真っ黒になってしまっているスマホを接続する。しばらく充電しないと電源を入れられないので、それまで律葉を無駄に待たせてしまうが、律葉のストーカーは俺と一緒にいるから大丈夫だろう。
寮について、部屋の鍵を開けて藤井を中に入れた。
「……なんもないんだな」
「え?」
「ベッドと机以外、なんもない」
その言葉で、藤井の言っていることが俺の部屋への感想なのだと気がついた。
「あー。不必要なものは置かないようにしてるだけだよ。クローゼットには絵の道具とか服とか入ってるし」
俺は自分のネクタイに指をかけ、それをスルリと外した。
次にシャツのボタンを外していくけど、手が震えてなかなかうまくいかなかった。
怖いとも、気持ち悪いとも、思う。
過去、俺の双子の兄である十希が吐きながら何度も何度も気持ち悪い、汚いと言っていたのが、今になってやっと本当の意味で分かった気がした。
好意を抱いていない相手とのセックスを目前に控えて思うのは、ただ「気持ちが悪い」という気持ちだけだったからだ。
先輩はどうだったんだろう。気持ち悪かったんだろうか。
その時、ベッド脇に置いたカバンの中からフォンという音と共に、スマホが立ち上がった音が聞こえた。
「ごめん。ちょっと連絡する」
「あぁ、うん」
藤井は雰囲気に飲み込まれたようにただ呆然としていた。
俺は手早く律葉に『やっぱり今日は行けない。ごめん』とLINNを送った。
チラリと見ただけでも緑のアプリのマークの右上には赤丸の中に、すごい数の数字が表示されていた。律葉から来ていたメッセージは全て既読になっただろうが、今は読むことはできない。後はすぐにマナーモードにして、また服を脱ぐのを再開した。
やっとこさ自分のシャツを脱ぎ切って、今度は藤井のシャツに手をかける。
手の震えは抑えられはしなかったけど、なんでもないことのように、淡々と、淡々と進めて行った。
「手、震えてるぞ」
静かな声で指摘された。
「分かってるよ。でも、別に手が震えてたって、セックスくらいできる」
「……そうだな」
ようやくズボンを脱がせにかかって、藤井のがポロンと出てきた。だが、やっぱり俺じゃ簡単にはその気にはならないのだろう。柔らかく、なんの兆しもなかった。
「……藤井は」
「え?」
「藤井は、律葉のどこが好きなの?」
「どこって。可愛いだろ。あんまり話したことないけどさ」
「ふ、はは。話したこと、ないんだ」
「あんまり、な。少しくらいある」
「そっか。でも、失恋しちゃったもんね」
「……」
俺の言葉に、藤井は恨みがましい目で俺を見てきた。それが面白くて、俺はふふっと笑った。
「俺も、失恋したんだ。藤井と一緒だ。辛いよね。俺はね。応援できると思ってたんだ。なんならお膳立てしたのも俺。藤井が失恋したのは、俺にも責任があるってことだよ。藤井の言う通りだ。俺も、応援なんてできない」
「市原、お前……」
「だから、ほら。律葉にぶつけようと思ってたものは、全部俺にぶつけていいよ」
藤井の手を自分の胸にあてがって、そっと微笑めば藤井はゴクリと唾を飲みこみ、俺をそっとベッドに押し倒した。
最近は先輩としていないし、ローションやコンドームは割と残っていたはずだ、と考えながら藤井を見た。
「……お前、なんでそんな平気そうなんだよ」
俺に手を引かれながら、藤井は困惑した声を上げた。
「別に平気ではないよ。でも俺、初めてって訳でもないし、恋人がいる訳でもないし。それなら、今、恋人が居る律葉よりも俺の方が適任だろ?」
「適任って……」
藤井は、一般的な思考からかなり外れていると思ったけれど、そんな相手にドン引きの目を向けられているのが面白くて、ふっと息が漏れた。
「とにかく、俺のことは気にせずに使ってくれて構わないから」
「使う……」
とりあえず今日は行けなくなったと連絡をしなければと、いったん藤井の手を離し、カバンからモバイルバッテリーを取り出して、真っ黒になってしまっているスマホを接続する。しばらく充電しないと電源を入れられないので、それまで律葉を無駄に待たせてしまうが、律葉のストーカーは俺と一緒にいるから大丈夫だろう。
寮について、部屋の鍵を開けて藤井を中に入れた。
「……なんもないんだな」
「え?」
「ベッドと机以外、なんもない」
その言葉で、藤井の言っていることが俺の部屋への感想なのだと気がついた。
「あー。不必要なものは置かないようにしてるだけだよ。クローゼットには絵の道具とか服とか入ってるし」
俺は自分のネクタイに指をかけ、それをスルリと外した。
次にシャツのボタンを外していくけど、手が震えてなかなかうまくいかなかった。
怖いとも、気持ち悪いとも、思う。
過去、俺の双子の兄である十希が吐きながら何度も何度も気持ち悪い、汚いと言っていたのが、今になってやっと本当の意味で分かった気がした。
好意を抱いていない相手とのセックスを目前に控えて思うのは、ただ「気持ちが悪い」という気持ちだけだったからだ。
先輩はどうだったんだろう。気持ち悪かったんだろうか。
その時、ベッド脇に置いたカバンの中からフォンという音と共に、スマホが立ち上がった音が聞こえた。
「ごめん。ちょっと連絡する」
「あぁ、うん」
藤井は雰囲気に飲み込まれたようにただ呆然としていた。
俺は手早く律葉に『やっぱり今日は行けない。ごめん』とLINNを送った。
チラリと見ただけでも緑のアプリのマークの右上には赤丸の中に、すごい数の数字が表示されていた。律葉から来ていたメッセージは全て既読になっただろうが、今は読むことはできない。後はすぐにマナーモードにして、また服を脱ぐのを再開した。
やっとこさ自分のシャツを脱ぎ切って、今度は藤井のシャツに手をかける。
手の震えは抑えられはしなかったけど、なんでもないことのように、淡々と、淡々と進めて行った。
「手、震えてるぞ」
静かな声で指摘された。
「分かってるよ。でも、別に手が震えてたって、セックスくらいできる」
「……そうだな」
ようやくズボンを脱がせにかかって、藤井のがポロンと出てきた。だが、やっぱり俺じゃ簡単にはその気にはならないのだろう。柔らかく、なんの兆しもなかった。
「……藤井は」
「え?」
「藤井は、律葉のどこが好きなの?」
「どこって。可愛いだろ。あんまり話したことないけどさ」
「ふ、はは。話したこと、ないんだ」
「あんまり、な。少しくらいある」
「そっか。でも、失恋しちゃったもんね」
「……」
俺の言葉に、藤井は恨みがましい目で俺を見てきた。それが面白くて、俺はふふっと笑った。
「俺も、失恋したんだ。藤井と一緒だ。辛いよね。俺はね。応援できると思ってたんだ。なんならお膳立てしたのも俺。藤井が失恋したのは、俺にも責任があるってことだよ。藤井の言う通りだ。俺も、応援なんてできない」
「市原、お前……」
「だから、ほら。律葉にぶつけようと思ってたものは、全部俺にぶつけていいよ」
藤井の手を自分の胸にあてがって、そっと微笑めば藤井はゴクリと唾を飲みこみ、俺をそっとベッドに押し倒した。
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