(完結)好きな人には好きな人がいる

いちみやりょう

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彼の好きな人

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中学に入ってから、俺は先輩をずっと見ていた。
同じ委員会に入ったり、先輩が飲んでいた、食堂横の自販機の飲み物と同じものを買って飲んでみたり、ストーカーじみたことをよくやっていた。

けれどそんな行いは、悪いことばかりではなかった。
同じ委員会になった野田律葉りつはと仲良くなり、今では親友と言っても過言ではないほどになったのだ。律葉はその名前の綺麗さに負けないくらい綺麗な見た目だけど、気取ってなく俺相手にも分け隔てなく接してくれる本当に良い奴だ。人に甘えるのも上手で、律葉に頼まれれば誰でも「しょうがないなぁ」と請け負ってしまう特技を持ってる。俺も律葉の頼み事はすぐに引き受けてしまうけど、律葉は線引きが上手いのか、絶対に嫌だというような頼み事はしてこないし、「この間のお礼」なんて言って手作りのお菓子をくれたりする。

だから、高校に上がり、先輩のセフレになろうと頑張っている間も、セフレになってからも律葉との友情は続いている。

「律葉ってさ、辰巳先輩のことどう思う?」
「へ? 辰巳先輩? かっこいいよね。なんでもできるし、この前もなんか絵のコンクールで優勝したとか」

先輩を褒める言葉に、俺は嬉しくなって何度もうなずいた。

「うんうん。辰巳先輩はほんっとーにかっこいい。やっぱもしも辰巳先輩に告白されたら、付き合う?」

俺の言葉に律葉はニコニコと嬉しそうに笑った。

「なぁに? 道。恋話したくなったのー? ふふん、僕恋話大好きだよ。でも、辰巳先輩とは、ないかなぁ~」
「えっ!? な、なんで!? あんなにかっこいいのに?」
「かっこいいし、優しいけど、僕の好みはもっとこう、世話を焼きたくなっちゃう感じの人なんだよ。辰巳先輩は世話を焼いてくれるタイプっぽいし? そもそも、辰巳先輩って誰とも付き合わないんでしょう?」

誰にでも「しょうがないなぁ」と言わせる特技を持ってる律葉からは想像もつかないような好みのタイプに驚いた。

「そ、そうなんだ……」

がっかりしたような、嬉しいような。
俺がそんな気持ちになるのは、辰巳先輩の好きな相手が律葉だからだ。
それを知ってて先輩のセフレになった負い目があったけど、律葉が先輩を好きにならないなら良かったとホッとして、それから、自分はどこまで自己中心的なんだと自己嫌悪に陥る。

「かっこいいのになぁ」
「かっこいいのは分かってるけどね」

笑ってそう言う律葉は、本当に先輩のことは眼中にないようだ。

「んじゃあ、律葉は好きな人いないの?」
「いるよ」
「えっ!? そうなの?!」

軽い答えにびっくりすると、律葉は肩を竦めた。

「うん。でも、その人からは嫌われてるんだけどね」
「え、律葉を嫌う人なんているの?」
「それが、いるんだよ。僕ってこんなに可愛いのにね」
「あはは」

律葉の軽口に笑って、それから軽い恋話に花を咲かせた。
俺も律葉も相手の名前は言わなかったけど、それでもお互い、相手がこの学園の生徒であることはなんとなく察している。
中学からエスカレーター式の男子校だけど、女性を見る機会が少ないからか、ベータ男子同士の恋愛も珍しくない。俺はオメガであることを隠してベータとして通っているけど、それでも男子生徒に恋をしていることがバレても異質な目では見られることの少ない校風なのだ。

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