影は落ちました

agapē【アガペー】

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79、育っているのは駄犬?

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「こんなに流行るとは思いませんでしたわ」

オーロラとノアールは、公爵邸に訪問しているレオン、マルティナとお茶をしている。


「二人は四六時中一緒にいるのに、不安に思う事もあるのだな?しかし、話を聞いていると、言葉や態度だけではない、形の表現も愛を感じるものだな。マルティナと試してみたが、何とも暖かい気持ちになった」

「レオン様もそういう事をやるようになったのですね」


安定期に入りお腹が目立ち始めたオーロラは、レオンとマルティナを微笑ましく見つめる。


「そ、それはだな・・・マルティナが」

「あら、レオン様がやってみたいと申したではないですか」

「え・・・いや・・・そうだったか?」

「はい、間違いありませんわ」

「レオン殿下、いつまでも格好つけていても仕方ありませんわ。不安なら不安だとマルティナに伝えればよろしいのです。マルティナはそういうレオン殿下を含めて好いているのですから。幼い頃から格好いい殿下だけを見てきたのではありませんもの」

「幼い頃?マルティナには幼い頃には会った記憶はないのだが?」

「あら、レオン殿下、知らないのは殿下だけですわ」

「何?」

「レオン様、私は幼い頃に王城に参った際、剣術の稽古をされているレオン様をお見かけした事があるのです。騎士達に稽古をつけて頂いていたレオン様は、勝てない悔しさに声をあげて泣いておられましたわ。男らしくないと思ったものです。しかし、泣いていたレオン様は、何度も立ち上がり立ち向かっていかれまして、その姿に心打たれて惚れましたの。こっちとて伊達に12年も片想いしていませんのよ?今更、情けない姿など見せられてもなんとも思いません。むしろ可愛いぐらいですわ」

「・・・マルティナ・・・俺は12年も前から・・・マルティナの心に住み着いていたのか・・・う・・・」

「レオン様?」

「嬉しすぎる!!」

「きゃぁっ!」


レオンはマルティナの胸に勢いよく飛び込むと、顔を埋め甘えるように頬を擦り付けた。


「あらあら・・・」


オーロラが微笑ましく二人を見つめる横で、ノアールはニコニコしながらオーロラのお腹をさすっている。


「レ、レオン様・・・二人が見てますわ・・・後でにしましょう?」

「いやだっ!幸せを噛み締めているのだ!」

「ん・・・これは忠犬より、駄犬の匂いがしますわね、ふふっ」

「ちょ、ちょっと、オーロラどうにかして!」

「無理よ、ノアール以外は宥める術を持ちませんもの」


ノアールはそれを聞いて、オーロラの頬にキスをすると、レオンを見やる。


「殿下、しつこい男は嫌われるそうですよ?加減は考えないと後悔することになりますので、気をつけたがいいかと」


ノアールがわざとレオンを煽る。


「嫌われるのは困るが、このままマルティナを離さない!他の男に取られたら困るのだ!マルティナは私だけのものだ!」

「レオン様、わかりましたから!!後でにしましょう?」

「嫌だっ!!離れたくない!!」


こんな男が将来国王になるのかと不安になりそうなものだが、第三王子であるノエルがしっかりと支えていく・・・のだろうと思いたい。






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次回

だから、お願いだ。その熱のこもった瞳は僕だけに向けてくれ


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