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二章 失った者達と生人の秘密
16話 胡蝶の夢(風斗視点)
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後悔が募る。トラウマという釘が何本も胸に容赦なく突き刺さる。
辛く、暗く、もう何も考えたくない思いだったが、それでも構わず転送機能は働き、俺はダンジョンの門の前へと転送される。
「生人さん!?」
俺はダンジョンの門の方を向いていて、後ろの方は、みんなの方は見えていなかった。そのことは幸いだった。何故なら今の俺に、生人を死なせてしまった俺に彼らに合わせる顔がないからだ。
寧々が声を上げながらこちらに近づいてくる。きっと転送された俺の背後にある生人の死体を見てしまい驚愕しているのだろう。
俺は振り返れなかった。現実を再認識するのがたまらなく辛かった。
しかしそんな思いはある一人の声で掻き消されることとなる。
「あれ……地上に戻ってる? って、峰山さんどうしたの? そんなに慌てて?」
生人の声がしたのだ。間の抜けた何ともなさそうな声。ありえない。そんなはずはないのに。
胸を、心臓を貫かれた人間が話せるわけがないというのに。
「生人!?」
俺はもしかしたら生人が生きているかもしれないという希望と、もし今の声が俺の罪悪感から作られた幻覚だとしたらという不安の両方を抱きつつ、声のする背後を振り返る。
そこには一切怪我や疲労を感じさせない、ケロッとした生人が立っていた。しかし服の胸の部分に大きな穴が開いており、服には大量の血が付着していた。
「どうしたのかって……あなた変身が解けてますよ!? それに服に穴が開いてますし、その血はどうしたんですか!? もしかして怪我を……」
寧々が生人に駆け寄り、彼の上着を脱がし体をくまなく調べる。
「峰山さん!? どうしたの急にこんな人前で恥ずかし……あれ!? 服が破けてる!?」
生人はたった今自分の体の……いや服の異変に気づいたようで、訳が分からないといった様子で困惑する。
「どういう……ことだ? だってさっき……」
俺は先程の光景を、思い出したくもないが思い返す。首を掴まれ躱せないようにされて、確かに胸を貫かれていた。
その一撃は位置的に確実に心臓を捉えており、見間違えだということもないはずだ。今でもあの時の光景だけでなく、匂いや吐き気もしっかり覚えているのだから。
だが現実は、目の前の今見えているものは、生人が何事もなく生きているという紛れもない真実を俺に突きつけていた。
「生人……? お前大丈夫なのか?」
「あ、風斗さん! 実はあのダンジョンのボスを倒して制御装置を置いてからの記憶がなくて。気づいたらもう地上にいるし、服はこんなんだし血がついてるし。一体何があったの?」
彼は本当に自分の身に何が起こったのか覚えていないようだった。
俺は戸惑いを隠せなかったが、先程まで失っていた冷静さを取り戻し的確な判断をしようとする。
「俺にもよく分からない。だがお前は念を持って一度医療施設で診てもらうべきだ。行くぞ」
「え? いやでも別にどこも悪くな……」
「いいから行くぞ。たとえ本人に分からなくても体に異常があるケースはいくらでもある。ここは先輩である俺の判断に従え」
現場は寧々と田所先輩。そして他の自衛隊の人々に任せて、俺はDO本部があるビルまで生人を強引に連れて行く。
「真太郎君!! 生人君が怪我をしたかもしれないというのは本当なのかい!?」
ビルの前には道中で連絡して呼んでおいた美咲さんがおり、俺達を見るなり血相を変える。
「おや? 意外に大丈夫そうじゃ……と思ったが、その服の破れと血の跡は……」
彼女は生人の元気そうな様子を見て安心するも、すぐに服などのおかしな点に気づき目を細める。
「事情は後で説明します。とりあえずこいつの体を一回くまなく調べてください。もしかしたら重大な怪我や何かを負っているかもしれません」
俺は美咲さんにここの最先端の医療施設を使い、彼の体を検査することを提案する。
「いやでも僕は別に何ともないですよ? 確かにダンジョンを制圧してからの記憶は曖昧ですけど……」
「いや、真太郎君の言う通りかもしれない。たとえ本人が自覚していなくても、怪我をしていたり、病気を患っていたケースはいくらでもある。
それにダンジョンでは何が起こるか分からない。君は記憶がないだけで何か特殊な、未知な事をされた可能性だってある。ここはしっかり一度検査しておくべきだ」
「そこまで言うなら……分かりました」
俺のしつこい説得と、美咲さんの専門家としての説得力のある言葉に生人は折れて彼女に医務室へと連れてかれる。
「それにしても……一体あの時何が起こったんだ?」
状況が一旦落ち着いたので、俺は思考を巡らし先程の事を思い出し整理しながら、DOの本部へ報告書を書きに向かう。
「風斗!? 一体何があったんだ!? 突然配信がエラーになったということはエックスが現れたのか!?」
部屋に入るなり指揮官が飛びつくようにしてこちらに向かって来た。
「はい。捕えることはできませんでしたが、何とか無事にダンジョンの制圧は完了しました」
「ほっ……二人が無事で良かったよ」
彼の無事で良かったという言葉に、俺は再び考え込んでしまいそうになるが、あの事は現状考えているだけでは答えが出そうにないので、俺は無駄な考えは頭から追い出して報告書の作成に取り掛かる。
寧々や田所先輩も帰ってきて、報告書が完成した頃には十時を過ぎてすっかり暗くなってしまっており、俺はそれを指揮官に提出してから自分の部屋に戻ろうとする。
「風斗ちゃん。ちょっーとお話いい?」
部屋に戻ろうとしたところで田所先輩に呼び止められる。
辛く、暗く、もう何も考えたくない思いだったが、それでも構わず転送機能は働き、俺はダンジョンの門の前へと転送される。
「生人さん!?」
俺はダンジョンの門の方を向いていて、後ろの方は、みんなの方は見えていなかった。そのことは幸いだった。何故なら今の俺に、生人を死なせてしまった俺に彼らに合わせる顔がないからだ。
寧々が声を上げながらこちらに近づいてくる。きっと転送された俺の背後にある生人の死体を見てしまい驚愕しているのだろう。
俺は振り返れなかった。現実を再認識するのがたまらなく辛かった。
しかしそんな思いはある一人の声で掻き消されることとなる。
「あれ……地上に戻ってる? って、峰山さんどうしたの? そんなに慌てて?」
生人の声がしたのだ。間の抜けた何ともなさそうな声。ありえない。そんなはずはないのに。
胸を、心臓を貫かれた人間が話せるわけがないというのに。
「生人!?」
俺はもしかしたら生人が生きているかもしれないという希望と、もし今の声が俺の罪悪感から作られた幻覚だとしたらという不安の両方を抱きつつ、声のする背後を振り返る。
そこには一切怪我や疲労を感じさせない、ケロッとした生人が立っていた。しかし服の胸の部分に大きな穴が開いており、服には大量の血が付着していた。
「どうしたのかって……あなた変身が解けてますよ!? それに服に穴が開いてますし、その血はどうしたんですか!? もしかして怪我を……」
寧々が生人に駆け寄り、彼の上着を脱がし体をくまなく調べる。
「峰山さん!? どうしたの急にこんな人前で恥ずかし……あれ!? 服が破けてる!?」
生人はたった今自分の体の……いや服の異変に気づいたようで、訳が分からないといった様子で困惑する。
「どういう……ことだ? だってさっき……」
俺は先程の光景を、思い出したくもないが思い返す。首を掴まれ躱せないようにされて、確かに胸を貫かれていた。
その一撃は位置的に確実に心臓を捉えており、見間違えだということもないはずだ。今でもあの時の光景だけでなく、匂いや吐き気もしっかり覚えているのだから。
だが現実は、目の前の今見えているものは、生人が何事もなく生きているという紛れもない真実を俺に突きつけていた。
「生人……? お前大丈夫なのか?」
「あ、風斗さん! 実はあのダンジョンのボスを倒して制御装置を置いてからの記憶がなくて。気づいたらもう地上にいるし、服はこんなんだし血がついてるし。一体何があったの?」
彼は本当に自分の身に何が起こったのか覚えていないようだった。
俺は戸惑いを隠せなかったが、先程まで失っていた冷静さを取り戻し的確な判断をしようとする。
「俺にもよく分からない。だがお前は念を持って一度医療施設で診てもらうべきだ。行くぞ」
「え? いやでも別にどこも悪くな……」
「いいから行くぞ。たとえ本人に分からなくても体に異常があるケースはいくらでもある。ここは先輩である俺の判断に従え」
現場は寧々と田所先輩。そして他の自衛隊の人々に任せて、俺はDO本部があるビルまで生人を強引に連れて行く。
「真太郎君!! 生人君が怪我をしたかもしれないというのは本当なのかい!?」
ビルの前には道中で連絡して呼んでおいた美咲さんがおり、俺達を見るなり血相を変える。
「おや? 意外に大丈夫そうじゃ……と思ったが、その服の破れと血の跡は……」
彼女は生人の元気そうな様子を見て安心するも、すぐに服などのおかしな点に気づき目を細める。
「事情は後で説明します。とりあえずこいつの体を一回くまなく調べてください。もしかしたら重大な怪我や何かを負っているかもしれません」
俺は美咲さんにここの最先端の医療施設を使い、彼の体を検査することを提案する。
「いやでも僕は別に何ともないですよ? 確かにダンジョンを制圧してからの記憶は曖昧ですけど……」
「いや、真太郎君の言う通りかもしれない。たとえ本人が自覚していなくても、怪我をしていたり、病気を患っていたケースはいくらでもある。
それにダンジョンでは何が起こるか分からない。君は記憶がないだけで何か特殊な、未知な事をされた可能性だってある。ここはしっかり一度検査しておくべきだ」
「そこまで言うなら……分かりました」
俺のしつこい説得と、美咲さんの専門家としての説得力のある言葉に生人は折れて彼女に医務室へと連れてかれる。
「それにしても……一体あの時何が起こったんだ?」
状況が一旦落ち着いたので、俺は思考を巡らし先程の事を思い出し整理しながら、DOの本部へ報告書を書きに向かう。
「風斗!? 一体何があったんだ!? 突然配信がエラーになったということはエックスが現れたのか!?」
部屋に入るなり指揮官が飛びつくようにしてこちらに向かって来た。
「はい。捕えることはできませんでしたが、何とか無事にダンジョンの制圧は完了しました」
「ほっ……二人が無事で良かったよ」
彼の無事で良かったという言葉に、俺は再び考え込んでしまいそうになるが、あの事は現状考えているだけでは答えが出そうにないので、俺は無駄な考えは頭から追い出して報告書の作成に取り掛かる。
寧々や田所先輩も帰ってきて、報告書が完成した頃には十時を過ぎてすっかり暗くなってしまっており、俺はそれを指揮官に提出してから自分の部屋に戻ろうとする。
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