カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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二章 失った者達と生人の秘密

17話 蠢く疑念(風斗視点)

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「話ですか? もう遅いんで手短ならいいですけど」
「了解。じゃあとりあえず部屋入ろうか」

 俺達は俺の部屋に入り、適当な所に座る。

「じゃあ早速本題に入るんだけど、生人ちゃんに何があったの? 報告書にはエックスに胸を貫かれたってあったけど」
「俺にはそう見えたってだけです。今考えてみると、奴の作った幻だったりとかいくらでも仮説は立てれますし」

 俺はそれっぽい理屈をこじつけてあの時見た光景を忘れようとしていた。
 何も得れず、不快感を残すだけならいっそのこと忘れてしまいたいとすら思っていた。

「もし本当だったとしたら?」
「はい? そんなことありえないですよ。実際生人は生きているんですし。まぁ今は検査受けてますけど」

 俺には彼が何を言いたいのか全く分からなかった。
 彼は報告書をただ読んだだけだ。普通ならあの内容は俺の狂言だと思うはすだろう。なのに彼は誰よりも、当事者の俺よりもその狂言を信じていた。

「ありえないから、あるはずがないから。そんなつまらない先入観に囚われている限りは自分らはいつまでも真実に辿り着けない」

 田所先輩はいつになく真剣な様子で、いつものおちゃらけた雰囲気を全て消して話し出す。

「それじゃだめなんだよ。真実に辿り着かなきゃ、そうしなきゃいなくなった人達に顔向けできないだろ?」
「いなくなった人……」

 俺はいなくなった人と言われて、真っ先に妹の顔が思い浮かんだ。
 俺の目の前で、俺が置き去りにして逃げ出したせいで死んでしまった愛花のことを。
 あの時の俺は恐怖心に支配されていた。異形の化物を目の前にして、当時高校生だった俺は冷静さを失い正常な判断ができなくなっていた。
 その時の後悔が今も俺の中に残り、こんな性格になってしまっているのだ。

「だから逆説的に考えてみよう。生人は死んでないから、胸を貫かれてはいない。あの時の光景は現実ではなかった。
 そうではなく、あの時の光景は現実だった。だからこそ生人は胸を貫かれている。だが死んでいないってな」
「それは前提が矛盾していませんか? 人間は胸を貫かれたら、心臓を潰されたら死にますよ?」
「それすらも逆に考えるんだ。人間だから死んでしまう。ではなく、人間じゃないから死ななかった……てな」

 彼の話す突拍子もない内容に、しかしどこか説得力があるその言葉に俺は深く考えさせられてしまう。
 
 結局俺は見たくない現実から目を逸らして、あの時から全然成長してない……ガキのままだな。
 
 自分に嫌気が差し、それでも、だからこそ俺は変わろうとする。

「仮に生人が人間じゃないとしたら、あいつはサタンだってことですか? 例えば……人間に化けたまま、自分のことを人間だと思い込んでしまっていたり……とか?」

 俺はもう先入観や見たくないという感情をかなぐり捨て、躊躇わずに自分の率直な考えを述べる。

「その可能性もあるが、やはり現状では判断しきれないな。証拠や根拠が少なすぎる。
 うーん、困ったなー。これは悩みすぎて明日仕事できないかも」

 田所先輩の声色がいつもの調子に戻り、今までのかっこよさや頼れる男感が一瞬にして消え失せる。

「証拠って、そんなものあるんですか?」
「ないな。だからこそ……」
「だからこそ、今から集めようってことですよね?」

 俺はあえて彼の言葉を遮るようにして、不敵な笑みを浮かべながら言う。

「良い顔になったじゃないの。まっ、その様子ならもう大丈夫そうだな」
「心配させてすいません」

 俺は軽く頭を下げ、周りをよく見ずに悩み、心配させてしまったことを謝る。

「気にすんなって、実際生人ちゃんの件は自分も色々気になってたし」
「あいつのことで何か気になることが……?」

 妙に含みのあるその言い方が引っ掛かり、俺はその違和感めいたものの正体を尋ねる。

「それについてもまだ確証がないからまた今度で。でも今自分達は確実に真実に近づいてるって感覚はある。
 このままいけば……」

 田所先輩が先程よりもさらに真剣に、それでもってどこか悲しげな表情をする。

「どうしたんですか?」
「ちょっと考え事。まぁ生人ちゃんの件は自分に任せてちょうだいな。今度それとなく探りとか入れてみるから。風斗ちゃんはいつも通りいてくれればそれでいいから」

 彼はそれだけ言うと立ち上がって部屋から出てい行った。
 
 それにしても、生人が人間じゃない……か。そんなことが……
 
 そんな事実信じたくなかったが、そう仮説を立てれば確かに物事の辻褄は合う。
 これからの不安を抱きつつも、田所先輩のような人もいるのだと。きっとどうにかなるんだと俺は自分に言い聞かせるのだった。
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